道武子2 拓跋紹2

拓跋珪たくばつけい殺害の夜が明けると、その宮殿の門は昼近くになっても閉ざされたままだった。


拓跋紹たくばつしょうは詔勅と偽り、大臣官僚らを宮殿の西端門前に、北向きで待機させた。やがて門が開くと、拓跋紹が姿をあらわし、居並ぶ者たちの前に立つ。


「卿らよ。おれには父が、兄がいるわけだが、さて、卿らは誰に従うべきであろうかな?」


拓跋珪は昨晩に死んだ。兄の拓跋嗣たくばつしは外に出ており、この変事を目の当たりとできていない。この状態で、誰に従うのが得策かを迫ってきたわけである。

その場には王や公爵もいたが、誰もが事態を察して青ざめ、まともに返答もできずにいた。


ややあって、長孫嵩ちょうそんすうが進み出る。

「王に従いましょう」


変事が拓跋珪殺害であったことを皆が知ると、誰もがこのまま拓跋紹に従うべきか、あるいは隠遁すべきかを判断しきれなくなっていた。その中にあって拓跋烈たくばつれつは拓跋紹の正面で号泣し、堂々と立ち去った。


平城へいじょう内外にはたちまち不穏な空気が立ち込めはじめ、多くのものが離反さえ考え始める。例えば賀蘭がらん部出身の賀護がご安陽あんよう城の北で狼煙を上げ、もと賀蘭部の部人らを糾合し始める。


拓跋紹は情勢が不安定になりつつあることを察すると、蔵より布帛を引き出し、王公以下にバラまいた。とはいえ、多くても數百匹、少なければ十匹ほどの量でしかなかった。




明日,宮門至日中不開,紹稱詔召百僚於西宮端門前北面而立,紹從門扇間謂羣臣曰:「我有父,亦有兄,公卿欲從誰也?」王公已下皆驚愕失色,莫有對者。良久,南平公長孫嵩曰:「從王。」羣臣乃知宮車晏駕,而不審登遐之狀,唯陰平公元烈哭泣而去。於是朝野兇兇,人懷異志。肥如侯賀護舉烽於安陽城北,故賀蘭部人皆往赴之,其餘舊部亦率子弟招集族人,往往相聚。紹聞人情不安,乃出布帛班賜王公以下,上者數百匹,下者十匹。


(魏書16-2)




拓跋烈は、ここでは号泣して去ってるけど、拓跋烈の伝ではむしろ参画したふりして拓跋嗣の軍を引き入れてるんですよね。これはどういう流れなのかな。百度では泣いて退出したあと普通に拓跋紹に参画しますって言い出した扱いにしてますけど。この辺の違和感、間になんか隠れてるんだろうなぁ。素直に信じる気になれん。

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