昭成裔3  拓跋儀2

拓跋珪たくばつけい慕容垂ぼようすいをどのように攻略すべきか検討するにあたり、拓跋儀たくばつぎ後燕こうえんに赴かせ、その隙を探ろうと考えた。後燕にやってきた拓跋儀、さっそく慕容垂と面会する。


「なぜ拓跋珪自らが来んのだ?」


「先人以來我らは北土に拠点を置き、ともに子孫の代に至るまでその旧交を損ねたことはございません。我らが祖はしんが天下の皇統となるに際しだい王として封爵され、東方の燕と代々兄弟としての交流を重ねております。この儀めが命を奉じ陛下に見えるのに、理屈として落ち度はございますまい」


慕容垂はこの返答を堂々としたものだと感心したのだが、敢えてからかってやろうと思い、言う。

「吾が威武は四海に轟くところ。卿の主が自ら吾に見えぬのことの、どこに落ち度がないと言えるのだ?」


「燕は文德をまともに修めず、ただその兵威のみにて自らを強者と主張しておられる。これは燕朝の兵力の話であり、国同士の礼に言及すべき、この儀にはあずかり知らぬことでございます」


拓跋儀は帰還すると、拓跋珪に報告する。

「慕容垂の死後に動くべきでしょう。いまはまだ時ではありません」


拓跋珪は怒り、さらなる理由を拓跋儀に問う。


「慕容垂は既に晩年、子の慕容寶ぼようほうは弱く武威もありません。おおよそまともな決断も下せますまい。慕容德ぼようとくは自ら才氣を自負しております、弱主の臣には収まりますまい。王の望まれる隙は自ずと内側より現れます。そのときこそが燕国を討つ期です」


拓跋珪はもっともであると思い、拓跋儀を平原公に改封した。





及太祖將圖慕容垂,遣儀觀釁。垂問儀太祖不自來之意,儀曰:「先人以來,世據北土,子孫相承,不失其舊。乃祖受晉正朔,爵稱代王,東與燕世為兄弟。儀之奉命,理謂非失。」垂壯其對,因戲曰:「吾威加四海,卿主不自見吾,云何非失?」儀曰:「燕若不修文德,欲以兵威自強,此乃本朝將帥之事,非儀所知也。」及還,報曰:「垂死乃可圖,今則未可。」太祖作色問之。儀曰:「垂年已暮,其子寶弱而無威,謀不能決。慕容德自負才氣,非弱主之臣。釁將內起,是可計之。」太祖以為然。後改封平原公。


(魏書15-3)




先日資治通鑑しじつがんに載ってたこのカッコいいやり取り、やっぱり魏書由来だったんですね。これ。


https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860605786408/episodes/16816927862508016664


資治通鑑って慕容まわりは謎の慕容史料に当たってたりするんで恐かったんですが、あれって本当に慕容まわりだけだったっぽいですね。どうせなら拓跋まわりでもいっぱい記録が残っててくれたら嬉しかったのに。なかなかそういうわけにはいきませんねー。


内容は再録になってしまうので敢えて何かを言う感じでもありませんが、とりあえず拓跋儀カッコいいの思いを新たとするのでした。

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