宗族2  拓跋力微の子孫

建德けんとく公、拓跋嬰文たくばつえいぶん。拓跋珪の六世祖である拓跋力微たくばつりきびの子孫だ。幼い頃より聡明で、度胸もあったため、拓跋嗣たくばつしより将来を見込まれていた。詔勅及び下命の起草を担当し、常に国家の枢要に関わっていた。拓跋燾たくばつとうが即位すると護東夷校尉となり建德公に進爵、遼西りょうせいを守った。間もなく死亡した。


真定しんてい侯、拓跋陸たくばつりく。やはり拓跋力微の子孫である。拓跋燾の時代に武勲をあげ厚遇を受けるようになった。散騎常侍に任ぜられ、真定侯に封じられ、死亡した。


武陵ぶりょう侯、拓跋因たくばついん章帝しょうてい拓跋悉鹿たくばつこつろくの子孫だ。すなわち北魏皇室とは、やはり拓跋力微で先祖を同じくする。拓跋珪たくばつけいの後燕討伐に従軍し、その功から曲逆きょくぎゃく侯に封じられた。拓跋燾の時代に武陵侯に改封された。


望都ぼうと公、拓跋頽たくばつたい昭帝しょうてい拓跋禄官たくばつろくかんの子孫で、こちらもやはり拓跋力微まで同祖が遡る。やはり後燕討伐で功績をあげ、望都侯に封じられた。拓跋燾は、拓跋頹が見目麗しく折り目正しい事に目をつけ、柔然じゅうぜんまで拓跋燾の左昭儀、要は高位の側妾であるりょ氏を迎えに行かせ、その功績から公爵に進められた。その後死亡した。




建德公嬰文,神元皇帝之後也。少明辯,有決斷,太宗器之。典出納詔命,常執機要。世祖踐阼,拜護東夷校尉,進爵建德公,鎮遼西。卒。

真定侯陸,神元皇帝之後也。世祖時,以武功頗蒙恩遇,拜散騎常侍,賜爵真定侯。卒。

武陵侯因,章帝之後也。從太祖平中原,以功封曲逆侯。世祖時,改爵武陵。

望都公頹,昭帝之後也。隨太祖平中原,賜爵望都侯。世祖以頹美儀容,進止可觀,使迎左昭儀於蠕蠕,進爵為公。卒。


(魏書14-2)




拓跋珪の先祖をたどると、拓跋詰汾たくばつきっぷんが拓跋の事業を始めたとされ、以降その子が力微、砂漠汗、ふつ鬱律うつりつ什翼犍じゅうよくけんしょく、珪と続きます。で、砂漠汗の弟が上に名の載る拓跋悉鹿、拓跋禄官。遊牧民は死のリスクがめっちゃ高いから年若くしてバンバン子供生むし、あとバンバン死ぬからバンバン兄弟に家督が移ります。拓跋先祖の経緯を見てるとよく生き残ったな砂漠汗の血統ってビビるくらい。まぁかんの時代に匈奴きょうどに仕えた漢人宦官の中行説ちゅうぎょうえつが「高貴な血統はキープされる」とも語っていたので、そんなもんなのかもしれません。遊牧民たちのロジックは雨後の筍のように死ぬ、みたいな前提から見ていくと整理しやすいんでしょうねー。

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