拓跋珪28 官制制定

11 月、 拓跋珪たくばつけい鄧淵とうえんに官制・爵品・律呂・音樂を制定させた。董謐とうひつに郊廟・社稷・朝覲・饗宴の儀礼を編纂させた。王徳おうとくには律令・刑法を制定させた。晁崇ちょうすうには天球儀を作らせ、星見の体制を整えさせた。これら諸制定を崔宏さいこうに総監督させた。


閏月、拓跋儀たくばつぎが諸王公・卿士を率い、上書する。


「臣らは聞き及んでおります。天頂に軸あらばこそ星々が皆その動きを等しくしているのだ、と。そして帝王が天に従えば、続く者たちは皆帝王よりの教化を受けるのだ、と。

 伏して考察いたしますに、陛下の徳は天地と調和され、開かれた道は三皇五帝をもしのぎ、お示しになった仁は天下を覆い、大いに人々を教化なされ、その恩沢はわずかな蟲たちにすら及び、みちばたの葦をもうるおされております。

 陛下のもとに属すること、周辺各国もまた謳歌しており、お示しになる武威は風が草を揺らすが如く、あまねく駆け巡ります。付き従う誰しもが陛下のおん元にて子々孫々の繁栄を願っております。

 これだけの大業を成し遂げられました陛下が、しかしながら、常に御自らのことを後回しとされ、天にその功績をお告げにもならず、しかるべき衣服を身に着けておられぬこと、果たして偉大なる天の意に沿いましょうや、臣下らの陛下を盛り立てたいと願う衷心に沿いましょうや。

 どうか御自らのご威徳をお認めになり、天下に規範をもたらしていただきたいのです。我らの僭越、死罪にも相応しきことと承知の上で申し上げます」


拓跋珪はこの請願を三度退けたが、四度目にいたり、受諾した。




十有一月辛亥,詔尚書吏部郎中鄧淵典官制,立爵品,定律呂,協音樂;儀曹郎中董謐撰郊廟、社稷、朝覲、饗宴之儀;三公郎中王德定律令,申科禁;太史令晁崇造渾儀,考天象;吏部尚書崔玄伯總而裁之。閏月,左丞相、驃騎大將軍、衞王儀及諸王公卿士,詣闕上書曰:「臣等聞宸極居中,則列宿齊其晷;帝王順天,則羣后仰其度。伏惟陛下德協二儀,道隆三五,仁風被於四海,盛化塞于大區,澤及昆蟲,恩霑行葦,謳歌所屬,八表歸心,軍威所及,如風靡草,萬姓顒顒,咸思係命。而躬履謙虛,退身後己,宸儀未彰,袞服未御,非所以上允皇天之意,下副樂推之心。宜光崇聖烈,示軌憲於萬世。臣等謹昧死以聞。」帝三讓乃許之。


(魏書2-28)




このあたりの話、拓跋珪もこの辺の茶番をやらないと中原人を統御しきれない、と思ったんでしょうかね。まぁ慕容ぼよう慕容廆ぼようかい以降培ってきたノウハウと、漢人が前後趙を通じて培ってきたノウハウとの集成、みたいな感じなんでしょうけど。拓跋がぽっと出ていきなりこの茶番をぶち決めるの、無理があるもんなあ。


こういこういうのを見ると、胡漢が融合するためにも、五胡十六国の争乱は回避しきれなかったのだろうなあ、と思います。しかもなんとか融合したと思っても、そこから更に百年以上どっしんばったんしなきゃいけなかったんですよね。価値観の衝突ってマジ地獄。せめて日本人同士の衝突を、少しでも軽減できるといいんですけど。

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