拓跋珪19 違約

3月。盧奴ろどに駐屯した拓跋珪たくばつけいの元に、慕容宝ぼようほうから和親の使者がもたらされた。前話に示した通り、内容は拓跋觚たくばつこの返還、常山じょうざん以西の割譲である。拓跋珪はこれを受け入れた。


が、慕容宝、すぐに和親を破る。そのため拓跋珪は再び中山ちゅうざんを包囲した。


この夜、慕容麟ぼようりんは妻子を連れて西山せいざんに逃れた。それを知った慕容宝もまた妻子及び兄弟宗族、延べ数千騎を率いて北へ脱出した。中山に残された李沈りしん王次多おうじた張超ちょうちょう賈帰かきらは拓跋珪に投降した。長孫肥ちょうそんひに慕容宝軍を追わせたが、范陽はんようまで逃げられたため撤収してきた。一方中山には慕容麟ぼようりんが復帰。主として推戴された。




三月己酉,車駕次于盧奴。寶遣使求和,請送元觚,割常山以西奉國,乞守中山以東,帝許之。已而寶背約。辛亥,車駕次中山,命諸將圍之。是夜,寶弟賀麟將妻子出走西山。寶見賀麟走,恐先據和龍,壬子夜,遂將其妻子及兄弟宗族數千騎北遁。寶將李沈、王次多、張超、賈歸等來降。遣將軍長孫肥追之,至范陽,不及而還。城內共立慕容普隣為主。



※資治通鑑掲載分

中山再包囲に際し、慕容隆ぼようりゅうが打って出て蹴散らしたいと申し出た。慕容宝は許可するも、慕容麟が却下。慕容隆は大いに涙した。

その夜慕容麟が慕容精ぼようせいに慕容宝暗殺をそそのかしたところ拒まれた。慕容麟、怒りにかられて慕容精を殺害の上西山に逃れる。中山城内は騒然とし、状況を見失った慕容宝は慕容隆に龍城への脱出を諮る。慕容隆も同意した。一方で慕容隆には、占い師が「陛下はたどり着けましょうが、あなた様はたどり着けますまい」と予言。それでも構わぬと出立の準備をなした。こうして慕容宝らは脱出。一方で慕容恵ぼようけい韓範かんはん段宏だんこう劉起りゅうきらは技師らを伴い、ぎょうに逃れた。

中山城はその後慕容詳ぼようしょうによって守られ、拓跋珪が攻め寄せたが、落ちない。無駄な抵抗をするのかを煽ったところ「参合陂さんごうはであれだけの屈辱を受けて今更降れるか」と煽り返された。拓跋珪は参合陂で虐殺を働いた主犯である王建おうけんの顔につばを吐き捨てた。

慕容宝はしょうで軍資を根こそぎ拾い上げたうえ、龍城りゅうじょうに脱出した。途中北魏の追手に追いつかれたが、慕容宝の息子である慕容会ぼようかい率いる軍主導で撃退。慕容隆が追撃をかけた。この戦果に慕容会がつけあがるのだが、それを慕容隆に叱責される。恨みに思い、また自身が慕容宝のあとを継げる見込みもないと悟り、ついには謀反を決意した。

一方で幽州ゆうしゅう平州へいしゅうの民は慕容会を慕い、ぜひとも慕容宝の後継に、と願い出てくる。慕容宝を始めとした面々はみな慕容会を疎んじていたため、この嘆願はむしろ慕容会誅殺すべし、の方向に意向を固めさせた。慕容宝は慕容農ぼようのう、慕容隆に対し速やかに排除すべく命じるのだが、二人はむしろ反対した。その話を耳にし、慕容会はいよいよ恐れるのだった。



(魏書2-19)




完全に慕容首脳部がポンコツ……この流れだと慕容会を取り込めなかったらどアウトもアウトじゃないですか。もっとも、これもあくまで亡国側のコメントでしかないですからねえ。この辺をどう評価したものか。

この辺、北魏側の動きももうちょいポンコツなんでしょうねえ。なかなか戦いの経緯が雑に見えてしがたないです。

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