勃勃4  髑髏台

劉勃勃りゅうぼつぼつが皇帝を自称すると、南涼なんりょう禿髮傉檀とくはつじょくだんに通婚を求めた。後秦こうしんに対して北と西からプレッシャーを掛けられるようになる形だ。しかし禿髪傉檀は却下した。劉勃勃はこれに怒り、騎兵二万を率いて侵攻。楊非ようひから支陽しように至るまでの三百里あまりに及ぶ地域で数万人を殺し、二万七千の人間、牛や馬や羊数十万頭を略奪し、帰還した。禿髪傉檀は兵を率いて追撃をかけようとするが、ここで将軍の一人、焦朗しょうろうが言う。


「劉勃勃はその傲慢にして尊大な振る舞いにて軍を厳しく統率しておりました、とても軽んじて良い相手ではございませぬ。今、一通りの劫略を済ませ、故郷を懐かしむ士卒を率いておるのですから、下手にちょっかいをかければ猛然と襲いかかってまいりましょう。迂闊に戦端を開くべきではございません。溫圍おんいから黄河こうがを北に渡り、萬斛堆ばんこくすいをせき止めた上で陣を敷き、奴らの喉を十分に乾かした上で襲えば、間違いなく勝てましょう」


禿髪傉檀の將、賀連がれんが怒って言う。


「劉勃勃は死にかけではないか! それで烏合の衆を率い、全く道理に合わん攻撃にて我らに災いをもたらし、たまたま成功させたのみよ! 今、奴らはひしめく牛羊に足を取られ、山程の財宝を抱え、い草に疲れ切った身を引きずりつつも、誰もが少しでも財宝のおこぼれにあずかりたいと目論んでおろう! 斯様な軍を制御し切れるはずもなく、また我らに抵抗しうる道理もないわ! 我らが大軍でもって押し寄せれば土砂崩れのごとく、群れた魚の群れのごとく崩壊しよう! 今ここで奴らとの正面衝突を避ければ、それは奴らに弱みを見せるようなもの! いま士気は盛ん、ならば速やかに追撃を掛けるべきなのだ!」


禿髪傉檀も賀連に賛同し、言う。


「追撃をかけるぞ! これ以上諌めようというのなら、斬る!」


南涼軍の追撃開始を聞き、劉勃勃は歓喜した。陽武ようぶ付近にある丘を削り、車を埋めて道を塞ぐ。そうこうしている内に南涼軍が迫ってくる。


禿髪傉檀、配下の弓の名手に劉勃勃を狙わせる。その矢は劉勃勃の左腕に命中した。これに激怒したか、劉勃勃、凄まじい勢いで軍を操り、逆襲。南涼軍を大いに破り、さらには八十里あまりに渡って追撃、殺傷数は一万を超え、指揮官十人あまりを殺害。その生首を積み上げモニュメントを作った。いわゆる「京觀けいかん」である。そこにはわざわざ「髑髏台どくろだい」と名をつけた上で、撤収した。




勃勃初僭號,求婚於禿髮傉檀,傉檀弗許。勃勃怒,率騎二萬伐之,自楊非至於支陽三百餘里,殺傷萬餘人,驅掠二萬七千口、牛馬羊數十萬而還。傉檀率眾追之,其將焦朗謂傉檀曰:「勃勃天姿雄驁,禦軍齊肅,未可輕也。今因抄掠之資,率思歸之士,人自為戰,難與爭鋒。不如從溫圍北渡,趣萬斛堆,阻水結營,制其咽喉,百戰百勝之術也。」傉檀將賀連怒曰:「勃勃以死亡之餘,率烏合之眾,犯順結禍,幸有大功。今牛羊塞路,財寶若山,窘弊之餘,人懷貪競,不能督厲士眾以抗我也。我以大軍臨之,必土崩魚潰。今引軍避之,示敵以弱。我眾氣銳,宜在速追。」傉檀曰:「吾追計決矣,敢諫者斬!」勃勃聞而大喜,乃于陽武下陝鑿淩埋車以塞路。傉檀遣善射者射之,中勃勃左臂。勃勃乃勒眾逆擊,大敗之,追奔八十餘里,殺傷萬計,斬其大將十餘人,以為京觀,號「髑髏台」,還於嶺北。


(晋書130-4_肆虐)




モズかな? いやモズなら食べるか。しかしこれ禿髪傉檀に取っちゃとばっちりにもほどがありますね。通婚しなかったの正解なんじゃね?


……とか言いたい、ん、でぃーす、がっ!


とりあえず赫連がやべーのに異論はないにしても、「どんだけやべーのか」に対してはマユツバせねばなりません。初っ端で「後秦が不倶戴天の敵と勝手に同盟組んだ」話をすっぽ抜かす赫連勃勃載記、いやでもネガティブバイアスの付与を仕掛けてきてます。キチガイと語る部分  はぜんぶ疑うくらいでもいい勢い。


ただ、もちろんそれはここにのる爽やかなまでのキチガイっぷりをすべて棄却しろ、というわけでもなく。それはそれで楽しいし、我々の愛するぼつぼっつぁんの姿なのです。それはそれとして、俺らとぼつぼっつぁんの間には「赫連の不倶戴天の敵」拓跋たくばつが挟まるんだぞ、みたいなところも拾えたら楽しいと思うのですよね。

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