勃勃2 姚邕の見識
「アレに仁の心は望めません。決してなつくことはございますまい。陛下の行き過ぎたご寵遇に、いささか戸惑いを隠しきれません」
姚興が尋ねる。
「勃勃の武才は抜群、私はやつを用いることで、その大業を果さん、と考えているのだ。どこに良くないところがあるというのだ」
そう言ってさらに劉勃勃を昇進させ安遠將軍、陽川侯に任じて沒奕于の高平鎮守の補佐とし、三城、朔方に住まう諸胡族や、もと
「勃勃は陛下に対しても傲慢、その統率は無惨。貪欲にして粗暴な上、親密なものもなく、進退すら気軽に決める男です。やつをいち武将の分を越えて愛寵なされば、ついには辺土における災いとなりましょう!」
これを聞き姚興、いちど人事を差し止めた。ただし間もなく持節、安北將軍、
それから間もなくして、姚興が
この頃、
勃勃身長八尺五寸,腰帶十圍,性辯慧,美風儀。興見而奇之,深加禮敬,拜驍騎將軍,加奉車都尉,常參軍國大議,寵遇逾於勳舊。興弟邕言于興曰:「勃勃天性不仁,難以親近。陛下寵遇太甚,臣竊惑之。」興曰:「勃勃有濟世之才,吾方收其藝用,與之共平天下,有何不可!」乃以勃勃為安遠將軍,封陽川侯,使助沒奕于鎮高平,以三城、朔方雜夷及衛辰部眾三萬配之,使為伐魏偵候。姚邕固諫以為不可。興曰:「卿何以知其性氣?」邕曰:「勃勃奉上慢,禦眾殘,貪暴無親,輕為去就,寵之逾分,終為邊害。」興乃止。頃之,以勃勃為持節、安北將軍、五原公,配以三交五部鮮卑及雜虜二萬餘落,鎮朔方。時河西鮮卑杜崘獻馬八千匹于姚興,濟河,至大城,勃勃留之,召其眾三萬餘人偽獵高平川,襲殺沒奕於而並其眾,眾至數萬。
(晋書130-2_識鑒)
赫連勃勃載記だけ読むと、見事に「ただのキチガイ」にしか見えないあたりがすごいですね。これ、夏の歴史書編んだ人って北魏時代に編纂したんだろうな。でないと「絶対に殺したいと思っていた拓跋珪が、よりによって姚興と手を組んだ」みたいな「あー、まぁそれならこのキチガイ怒るやろね」と納得できる理由を飛ばしてキチガイの意味不明キチガイ度を一段階上げるなんて暴挙には出ますまい。
この辺も、晋書がなんだかんだで参照元の史書を尊重していたっぽいことが伺われます。正直「なら典拠一覧も残しとけや」とも思うのですが、まぁ。
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