第38話 聖帝

「――というわけで、この俺ムジョーは聖帝を号することとなり、ギオン皇国の栄光は約束されたものとなった。ともあれサナーラは滅ぶべきである」


 バタニアに対し戦勝を重ねることで俺の影響力は大きいものとなった。

 ここで国としての政策方針を定めることにした。国としての在り方や法律を議会で決めるのだ。今のところ『元老院』くらいしか定めていないからな。

 議会に提案するには影響力がいるし、反対する諸侯がいれば案を議決させるのにやはり影響力が必要なので、ある程度影響力を持てるまで待っていたのだ。


 まず制定したのが『聖帝』だ。俺の皇帝としての地位を半神的なものとして権威を高めさせるものだ。これで日々俺の影響力が高まるというものだ。

 他にも『王族の特権』『土地税』『国家独占』といった支配者に権力を集めるものを採用した。


『土地税』や『国家独占』は直轄領以外からも税を徴収するもので、国が拡大するほどウチの歳入が増えることになる。

 支配者となっても金は大事である。これらは絶対制定しておきたい。

 制定後、おかげで赤字がほぼ解消された。そのうち黒字が大きくなっていくはず。


 そして領地の治安や忠誠を高める『放牧の権利』『判事』『負債の免除』『民衆の擁護者』『陪審裁判』といった政策方針も採用した。


 日本の徳政令は一揆の回避や民衆の人気取りなどに使われたが、この『負債の免除』も目的は同じようなものである。

 小作人が貸し付けで縛られて農奴にされてしまっているのを禁止することで、自由や権利を制限されていた元農奴から大きな支持を得るというものだ。

 ただ、支配者側としては農奴を酷使して生産していた分が減るというデメリットもある。

 それでも民からの忠誠が高まる効果のほうが重要なので、反対する諸侯がいても通しておきたい政策だ。

 ギオンに鞍替えしたばかりの諸侯たちは、まだ影響力を持っていないので希望の政策を問題なく通せた。


 政策方針を採用したことで、依頼の解決や食糧供給、名士との関係構築など、こまごまとした対応を行わなくても都市が安定する機能するようになる。たとえ異文化の都市でも反乱はまず起きないはずだ。



 防備の整っていないエピクロテアをバタニア軍から攻められた。俺が駆けつけて問題なく防衛したが、ドラゴンバナーのことを忘れていたことに気付いた。こんなもの無くても問題なさそうだが、せっかくだから利用するか。


 エピクロテアでイスティアナと話をする。


「ムジョー……久しぶりだな」


 そういえば軍旗を完成させてから6年ほど経ったか。


「自分の勢力を創設する件についてだが……」


「つづけてくれ」


「私はドラゴンの旗を持っている。よって私がカルラディア帝国の正当なる支配者だ」


「すばらしい。迷信の域を出ない戯言だが、人々は君を信じるだろう。よろしい、カルラディオスの後継者よ。行くのだ!」


 これで帝国を復興を目指す立場となった。帝国を破壊したかったアルザゴスとは敵対することになるな。


 帝国を復興したとするには帝国領とされる土地を我が国が2/3以上支配下に収める必要がある。

 今後は帝国勢力と戦って領地を切り取りたいところ。



 またバタニアが和平提案を申し出てきたが蹴った。

 バタニアに対しさらなる攻勢をかけ、カラドグの本拠である都市マルナスを始め、都市ペン・カノックや複数の支城を攻め取った。バタニアへの逆侵攻は大成功と言っていいだろう。バタニアは勢力を大きく落とすこととなった。


 ペン・カノックの包囲中にアセライから宣戦布告された。面倒なことだ。やはりサナーラは滅ぶべきだな。


 配下の諸侯にせっつかれたこともあって、ペン・カノック攻略後、バタニアとは多額の献上金を受け取る取り決めをして和平した。結構な金額なのでカラドグにとってはかなり厳しいことになるだろう。すぐに反故にされるかもしれない。

 ま、とりあえず、しばらくは対アセライ戦だな。



 アセライと戦いに行く前に領地を失ったバタニアの諸侯を勧誘しておく。


 ペン・カノックの元領主だったエーロンを勧誘できたのでペン・カノックに再封する。その他にもバタニアから2クラン引き抜いた。

 さらに一度断られた北帝国のマリツィオスも再度の勧誘に成功し引き抜くことができた。ルスティカ、親兄弟が味方になってよかったな。


 ギオン皇国に加わった貴族クランの数も7つとなった。こうなってくるともはや戦力的に不安はない。政策方針も重要なものは通したし、財政も健全だ。俺が生きているうちは戦争で負けることもないだろう。

 ギオン皇国の将来は本当に約束されたも同然だ。すでに皇帝や王たちの中でも実績や領土においててっぺんまで来たし、ドラゴンバナーも所持している。俺はまさしく聖帝といっても過言ではないのではないか。

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