第34話 切り取り次第

 北帝国一カ国との戦争ならば後れを取ることはない。北帝国は攻勢に出ることもできず、バタニアが北帝国領を侵攻する。北帝国の都市ダイアトマ、サネオパと攻略していく。

 議決で領地を獲得しようと根回しに動いたが両都市ともカラドグのものとなった。


「またか、カラドグめ……!」


 俺の中でカラドグへの好感度はマイナスである。



 北帝国との戦争中、やはりアセライが宣戦してきた。献上金の反故と領地奪還が目的だろう。

 カルラディア北部で戦っているのにペラシック海の向こうまで行くのは大変だ。俺としては北帝国を攻めたいので、兵力確保のため軍団召集しておく。対アセライは適当にやってくれ。


 南帝国領だったカノプシス城が北帝国のものになっていたので攻め落とした。

 すると特に働きかけなかったがカノプシス城はタイラーの所領となった。ダイアトマ、サネオパ都市が欲しかったんだがな。


 その後北帝国とは和平となった。



 ニアセンが再婚した。相手は南帝国のホンジェロス家のルスティカという。ルスティカは23歳で、慈悲深いとの評判の女性貴族とのこと。シガとは子供はできなかったが、若いルスティカならばそのうち子供も生まれるくることだろう。

 ところで、ルスティカの親兄弟は北帝国のヴァタツェス家なのに、なぜかルスティカだけホンジェロスの一員であった。複雑な家庭の事情があるのだろうか。



 アセライへ向かい戦争する。既にサナーラは奪還されていた。前線はクヤーズ付近となっていた。

 そうしてアセライと戦っていると今度は南帝国から宣戦された。嫁さんたちは南帝国出身なんだが……まあ関係ないな。

 こうなるとアセライはどうでもいい。南帝国との戦いの前線へ向かう。帝国領を切り取りたい。



 南帝国と戦っていると、北帝国とも再び戦うこととなった。

 俺の手が回るところでは早々負けはしない。南にも北にも攻勢をかけ侵攻し、どんどん領地を切り取っていく。


 逆に遠い対アセライ戦では負けているらしい。自領のスラクトラ城がアセライに攻められて危ういとの報告が入った。

 距離的に救援に行くのは無理だ。近くにいるバタニアの諸侯が何とかしてくれることを期待するくらいしかないが、落城は不可避だろうと思った。



 帝国領の最北東の都市アンプレラを攻めている最中に、やはりスラクトラ城が落とされた。その代わりと言ってはなんだがアンプレラはきっちり落とした。


 北帝国と南帝国の領地を次々に攻略していった結果、都市リカロン、フィカオン、ミゼア、アンプレラと、ヴァラゴス城、ガオス城、メリオン城、ジョグリス城をタイラー家の所領とすることができた。


 新しい領主の選定の候補者は、クランの兵力、既に所有している領地の数や規模、自領と新領地との近さによって選出される。

 帝国中央部のカノプシス城を手に入れ、そこからバタニア本領から遠い東方向へ侵攻することで、征服する領地が他家の領地からどんどん遠くなっていった。それで連鎖的に俺が常に候補に選ばれ続け、タイラー家の切り取り次第といった具合になったわけだ。


 これでタイラー家は先に述べた領地に加え、サーゴットやカノプシス城もあるから、計5つの都市と5つの城を領有する大大名へと飛躍を遂げた。その辺の王のクランでも領地は2つ3つ程度である。タイラー家1クランで1国並みの領地を持つこととなった。

 我がタイラー家に領地の規模で対抗できるクランは、散々俺に領地を渡さずに自分のものにした、カラドグが率いるフェン・グルフェンドクくらいだ。



「兄さん……久しぶりです。数々の帝国の領地を手に入れたそうですね。素晴らしいです」


「ファロク、来てくれたか」


「兄さんの隊に加わることができて光栄です」


 転生から7年目の春、成人した弟のファロクが合流した。ファロクは医学に特化させて教育させてある。学者のダシュワルに代わって軍医にする。

 最初は上手くやれないだろうが、すぐに経験を積んでダシュワル以上の医者になれるだろう。ダシュワルは統治者をやってもらおう。医学スキルも統治で活きる。


 斥候は俺、補給官はナイアセン、技術者はアイリーン、軍医はファロク、と部隊の四役職を兄弟で担うことになった。やはり頼りになるのは身内だな。



 転生から7年が経った夏、拡大を続けるバタニアはアセライ、スタルジア、北帝国の3カ国との戦争状態になっていた。

 領地の数は増えてもバタニアの将の数が増えたわけではない。幅広い戦域で戦っていくのはかなり困難だ。

 さて、俺はどうするべきか……。

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