第33話 貫通!
サナーラ攻略後、その防衛に来ていたアセライ軍も打ち破り、大量のアセライの諸侯の捕虜を抱えて久しぶりに自領サーゴットに戻った。軍事遠征するとなかなか帰ってこれないんだよなあ。
アセライには丸1年ほど遠征していた。転生し貴族を名乗り始めてからは5年が過ぎていた。
捕虜の諸侯37人をサーゴットのダンジョンに収容する。これだけ将となる者を捕らえておけばアセライは十分に軍を編成できないだろう。戦況はバタニアの優位に進むはずである。
ほどなく西帝国から宣戦された。
俺としてはアセライよりも近くで戦える西帝国との戦争のほうがありがたい。サーゴットから東へ領地を広げられるかもしれないしな。
西との戦いが始まるとアセライと和平が議決された。アセライからバタニアに膨大な献上金が支払われる取り決めとなった。
まあおそらくアセライはすぐに反故にしてしまうのだろうな。
西帝国の軍団がガロントール城を包囲した。この動きを察知した俺は防衛の軍団を編成し、包囲中の敵軍団を攻撃した。
「敵軍壊滅! 我が軍の勝利です!」
配下の兵士が報告する。快勝で我が軍の兵の損耗は少なそうだった。
「戦闘の結果を報告しろ。戦死者数は?」
「戦死者数68名――シガ殿が戦死!」
「……そうか」
ニアセンの妻であるシガは歩兵に交じり前線で戦っていたそうだ。享年46歳だった。
西帝国はラゲタも狙っていたようで、ガリオス率いる軍団がラゲタを包囲した。
俺はガロントール城を防衛した軍団でそのままラゲタに向かったが、ガリオス軍のほうが兵数が多かったため、追加で部隊を召集し、もうしばらくこちらの軍団に兵が集まるのを待つ。
ガリオス軍が城攻めを開始した。今回俺は野戦での防衛ではなく別の方法をとった。
「ラゲタの城内に突入するぞ!」
自軍全員で敵の包囲を突っ切って城門へ向かう。それを阻止しようと敵軍が攻撃してくるが無視して城内への突入を優先させる。多少の犠牲は覚悟の上だ。
こちらの突入に呼応して守備兵が城門を開き迎え入れてくれた。
一割程度の落伍者が出たが軍団の大部分の兵がラゲタの中に入ることができた。攻城戦は守備側は有利だ。攻撃側は相当な戦力差をもってしないと成功できない。もともとのラゲタの駐留兵と俺が連れてきた兵が合わさると、こちらがガリオス軍を上回ったかもしれない。
ガリオス軍は城攻めを続行する。
ガリオス軍の歩兵が城壁に立てかけられた梯子を上ってくる。梯子では一人ずつしか送り込めない。そうして登ってきた敵兵を城壁の上の守備兵が複数人で叩き潰していく。圧倒的に守備側が有利なのだ。これをミンチマシーン――ひき肉製造機と言うとか言わないとか……。
ガリオス軍は城壁を突破できず、士気が崩壊し、兵が散り散りに逃げて壊滅した。
敵の城攻めに対する防衛戦に参加できる機会はなかなかない。特に有利な防衛戦というのは、このように敵が城攻めを開始した後に横合いから強行突入したときくらいしか発生しない。強行突入よりも普通に野戦を行ったほうが良い場合もあるしな。
それでも有利な防衛戦を行える機会があれば積極的にやりたいものだ。
ラゲタ防衛のあと北帝国からも宣戦された。バタニアが戦勝を重ね拡大しつつあることに危惧を抱いているのだろう。出る杭は打たれるというやつだ。そのうちバタニア包囲網が形成されるかもしれないな。
バタニア軍が西帝国のスラクトラ城を包囲した。スラクトラ城はサーゴットとオルティシアの間にある城だ。攻略できれば、うちの領地になるかもしれない。包囲に加勢することにした。
最近俺のジャベリン投擲がだいぶ極まってきた気がする。常に戦場でジャベリンを投げまくっていたからな。このスラクトラ城攻めでも城壁に接近し、城壁の上の敵にジャベリンを投げつけていた。
城の防備や守備兵は貧弱で、然したる反撃もなく城壁に梯子を立てかけることができた。そこに盾を構えた敵歩兵集団が現れ、梯子の上端で待ち構える。
その盾歩兵に向かって俺はジャベリンを投擲した。すると俺の放ったジャベリンが盾を貫通し、敵歩兵を一撃で仕留めることができた。
そう、ついに目標だった盾貫通をできるようになったのだ! これでジャベリンを当てさえすれば敵を確殺できるということである。
亀のようにシールドウォールしている敵歩兵もジャベリンの数だけ減らせるわけだ。盾と重装甲と身を固めた貴族の敵将もジャベリンで一撃でスナイプできる。
戦闘が大規模になれば個人の戦闘能力など、ほとんど影響がなくなるものだが、盾貫通ジャベリンをもってすれば簡単に敵歩兵20人くらいと敵将を倒せてしまうので、俺一人でも戦局をかなり優勢にすることができるのだ。
ジャベリンで先制攻撃できれば個人戦闘では無敵だ。もはやカラドグにも負けることはないな。
なにより、盾貫通攻撃は気持ちいいぞ。
梯子で城壁を突破を図る味方歩兵をジャベリンで敵盾歩兵を倒して援護する。
俺の援護のおかげか、味方歩兵が城壁の上に飛び込むことができ、後続も乗り込める時間とスペースを作り出した。これはもう城壁突破成功である。こうなると数の少ない敵はこちらの進攻を抑えられなくなり、流れは一気にこちら側に傾く。
俺も梯子を登ったが、登り終えた時には追撃戦状態になっていた。
城攻めの結果は快勝。
予想通りスラクトラ城は決議でタイラー家の所領となった。
その後、西帝国とは和平が成り、以後、北帝国と戦う日々が続く。
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