第28話 エピクロテア攻城戦

 バタニアは北帝国と戦争中だ。バタニアが押している場合、エピクロテアが前線となる。カラドグはちょうどエピクロテアを包囲するため軍団を編成し行軍しているところだった。


 俺はカラドグの尖兵となってエピクロテア周辺の敵部隊を攻撃していく。もちろん戦うのはこちらの戦力が上回っているときに限る。勝てない相手とは戦わない。

 カラドグがエピクロテアを包囲すると、それを阻止しようとする北帝国の部隊が集まってくる。俺はそれらを各個撃破していく。


 そうして頑張ってみたものの、北帝国の軍勢はどんどん集まり、カラドグの包囲軍と戦い始めた。その後も続々と北帝国の増援が現れ、戦力比が大きく北に傾き、カラドグ軍は壊滅した。


 仕方がないので、俺は敵地の侵入し、単独行動している敵部隊をゲリラ的に狩っていく。



 息子のペリソールが2歳となった。俺に似て狡猾で、バリシアに似て制御力に秀でているらしい。そして活力と知性の才能の片鱗を見せているそうだ。将来が楽しみだな。

 今後息子は貴族として教育していることになる。しっかり育って、俺やニアセンのような、なんちゃって貴族ではなく、英才教育を受けた本物の優秀な貴族となることだろう。

 秋には娘ヴィリアが産まれた。この子は嫁に出さんぞ。



 俺が北帝国の部隊を各個撃破し、北の諸侯を捕まえ続けていったところ、北帝国の防衛に回す戦力が低下してきた。

 前回失敗したが、再びバタニア軍がエピクロテアを包囲した。今度の軍団の元帥はエルゲオンである。包囲に対する北の防衛も十分ではなく、いよいよエルゲオン軍は攻城戦を開始した。

 俺もメリディールの部隊などを呼び集め軍団を編成し城攻めに加勢する。諸侯との関係が良好だと軍団へ召集しやすい。これまで関係構築が活きる。



 いよいよ攻城戦だ。

 兵数もエルゲオン軍だけでも十分だったが、俺の軍団も加わり万全と言っていいだろう。攻城兵器も潤沢に用意されていた。


 城攻めをするときは、城壁を乗り越えるか、城門を突破する必要がある。

 城壁を攻めるときは攻城塔を用意するか梯子を使う。エルゲオン軍は右に攻城塔を用意し、左は梯子で攻める構えだ。

 城門を破壊するための破城槌も用意されている。


 さらにトレビュシェットも3機あり、城壁を砲撃していた。トレビュシェットは投石機の一種で、重りの位置エネルギーを使って石弾を飛ばす大型の攻城兵器である。


 このエピクロテアを落とせば、タイラー家の領地として俺がもらえる可能性がある。張り切っていこう。


 歩兵は梯子、城門、攻城塔と3つに分かれ城壁に取り付いて攻撃する。

 弓兵は散らばって城壁の上の敵兵と撃ち合うことになる。


 皆が城攻めにかかるなか、俺は馬に乗って城壁の足元まで接近する。特に射られることもなく城壁まで行けた。

 俺はジャベリン使いなので、このくらい近づかないと攻撃が届かないのである。


 敵も防衛にマンゴネルやオナガーと呼ばれるカタパルトを城壁の上に設置しており、砲撃してくる。城壁を目指して進撃する歩兵集団に石弾が直撃し、損害が出ているようだ。集団でいると安心感はあるだろうが全然安全ではないな。トレビュシェットでさっさとカタパルトを潰してほしい。


 やはり単騎のほうが狙われにくいのではないかと思う。

 城壁の足元というのは意外と安全だ。城壁の突き出た部分に狭間があって足元をカバーする城もあるが、それでも死角は存在するので、死角を見つけて入れば問題ない。


 城壁の足元に陣取った俺は、身を乗り出して射撃しようとする敵弓兵など、城壁からうかつに体をさらした敵をジャベリン投擲で仕留めていく。

 敵弓兵は高所からこちらの兵を狙撃してくる。味方の弓兵も城壁の上の敵を狙って攻撃するが、敵は城壁に身を隠すこともできるし、やはり高所のほうが有利なため、攻める側の損害が大きくなる。

 多少ではあるが、俺が頑張るぶん味方の損害も減るというものだ。


 そうこうしているうちに破城槌が城門に取り付いた。城門にたどり着く前に破城槌が防衛側のカタパルトで破壊される可能性もあったから、まずは一安心だ。


 破城槌の衝角が城門の扉をリズミカルにぶっ叩く。破城槌を操作する兵たちが寺の鐘を突いているかのようだ。俺は歩兵集団の後ろに回りそれを見守る。



 大きな破砕音が鳴り響いた。破城槌によって城門の扉が破られたのだ。


 歩兵と共に城門内になだれ込む。城門の中には、さらに内門の扉が閉じられている。ここを破ると城内へ突入することができる。破城槌は城門の中に入り込めないので内門は人力で破らなければいけない。

 歩兵たちが各々の武器を内門の扉に叩きつける。

 このような工作物を破壊するときは、剣よりも斧やメイスがより有効だ。


 城門内の天井には殺人孔という穴がある。守備兵がそこから城門を抜けようとする敵を一方的に攻撃するための穴だ。そこから岩を落とされたりすると何人もまとめて倒されてしまう。

 歩兵集団が内門を破ろうとしている間、俺はその殺人孔からの攻撃を警戒した。敵が姿を見せたらジャベリンを投げつけてやろうと構えていた。

 しかし手が回らなかったのか、殺人孔には敵が現れなかった。兵力差が大きすぎて、すでに守備兵が減り過ぎているのかもしれない。


 歩兵が内門を破ると、敵歩兵集団が城門の出口をふさぎ、こちらの歩兵を半包囲する。

 包囲側と被包囲側では包囲側が有利である。だが敵の数は少なく包囲が薄い。こちらは後続がどんどん殺到してきて敵を押しまくる。

 ほどなく風船を膨らまし続けて破裂するかのように敵の包囲が崩れた。するとあっという間に敵歩兵部隊は壊滅した。少数の生き残りは天守へ逃げ出した。


 城門突破が成功すれば勝利は決定的だ。

 あとは残存兵の掃討戦に移行する。天守に多く逃げ込まれると、そこでさらに抵抗されてしまうので俺はできるだけ敵を追撃して倒した。


 城塞の端のほうの側防塔に残っている敵兵を掃討するのに多少の時間をとったがそれも終了し、バタニア軍の兵たちが勝鬨を上げ始めた。


 こうしてエピクロテア攻城戦はバタニア軍が完勝し、エピクロテアはバタニアの支配下となった。

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