第24話 結婚しよう
貴族相手の初戦の勝利を皮切りに、北帝国と西帝国の貴族の部隊を次々に撃破していく。
村を襲撃してくる敵が多かった。そうすると敵は部隊移動が遅くなるため、うちの部隊の兵数が上の場合でも敵部隊を捕捉するのも容易だ。だから村を襲撃させておいて敵を叩く。
村人からすると俺たちは襲撃から救ってくれた存在だ。大変感謝される。普通に敵と戦うより名声も高まりやすい。
行軍中、近くにラガエアの部隊がいるのを発見したので接触する。
ラガエアは南帝国の女帝――俺の雇用主だな。
「やっと会えたな。会いたかったぞ」
西帝国とは停戦となったが、先日まで南帝国は北と西の二方面を相手に戦争していて苦しい状況だった。今も北とは激しくやり合っている。俺たちのような傭兵でも自分のために戦ってくれる者はありがたいのだろう。
リカロンはラガエアの領地だが、俺は特にリカロンの周辺の村々を襲撃しにくる敵と戦っていた。そのためかラガエアはかなり友好的な姿勢だ。
ラガエアにペンドレイクの戦いについて話を聞いてみる。
「戦いをこの目で見たわけではないが、夫のアレニコスはよくその話をしてくれた」
アレニコスは帝国軍の指揮官の一人だった。ネレッツェスの敗北は避けられなかったが、敗戦の惨劇の中、彼はなんとか「ある物」を持ち出すことに成功した。スタルジア人が防壁を乗り越えてきた頃には、ネレッツェスの衛兵たちと共に撤退していた。
アレニコスの小隊は団結を維持し、やがて敗残兵や脱走者もそこに加わった。彼らは帝国軍の中で唯一、統制を失う事もなく生還することができた。
だが、噂から状況を把握した人々により、街の治安は崩壊した。アレニコスは混迷に陥るのを防ぐべく奮闘した。それから元老院が次期皇帝を選定する時が来たが、他に相応しい人物はいるはずもなく、アレニコスが皇帝となった。
「その日から彼への愛は別のものに変わった気がした。あの人は今でも、カルラディアの至宝よ!」
ラガエアは舞台女優が演じているかのように亡きアレニコスについて語った。どうやらこの話、かなり話慣れしているようだ。
おそらくだいぶ話を盛っているのだろうな。個人的な印象としてだが、俺はそもそもラガエアをうさんくさく感じている。
「ある物」というのは何だろうか? ラダゴスの隠れ家で手に入れたネレッツェスの「お宝」と関係があるのだろうか?
それはさておき、ラガエアにひとつ提案をしてみる。
「ラガエア様、結婚を通じて我々の一族で同盟を結ぶのはどうでしょう」
「ほう、そちらは誰が?」
「私です」
「ふむ。確かにバシリアに相応しい結婚相手を探しているところだ」
「すばらしいです」
アイラではなかったか。
バシリアはラガエアの直接の血縁者ではないがペスロス家に連なる者だ。19歳らしい。いいね!
しかもこちらが結納金を納める形ではなく、ペスロス家が持参金36,000デナルを持たせるとのこと。だいぶ俺を評価してくれているようだ。
俺はこの婚姻を受け入れることにした。
「ぜひそれでお願いします」
「よし。では、タイラー家のムジョー、ペスロス家のバシリア――両者の婚姻がここに相成ったものとする!」
ラガエアが高らかに宣言した。
こうして俺とバシリアという貴族女性との結婚が決まった。
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