第23話 傭兵として

 ダングラニスからリン・ティワルを南側から回ってに東へ向かう。


 バタニアを巡っている最中、南帝国が北帝国から宣戦布告を受けたという知らせが入った。そこでバタニアを東に抜け、北帝国領に行くことにしたのだ。

 北帝国と南帝国は東のほうで接していて、そこが主戦場となるはずだ。俺たちはその反対側、北帝国の西側からちょっかいを出そうと思う。

 バタニアを巡り、部隊の人数が110人を超えてきた。そろそろ本格的に傭兵として稼ぐため、敵部隊を倒していこうと思う。


 ダングラニスの南のカラドグ王の本領の都市マルナス、リン・ティワル東岸にある都市セオノンと通っていく。


 セオノンは馬や交易品が安く、マルナスは高いので、その二都市間で交易すれば、それだけでかなり儲けられそうだ。

 同じところで集中的に交易しているとそのうち価格差がなくなってしまうので、いつまでも、というわけにはいかないものではあるが。


 バタニアの高地を東へ下っていき、さらにそこから東へいくとスタルジアと北帝国の国境部となる。

 北帝国の都市エピクロテアを横目に通り過ぎ、峡谷の多い北帝国領を抜けていく。しかし敵の姿はない。南帝国に宣戦する前、北帝国は東側でフーザイトと戦っていたはず。だから西側には全然兵がいないのだろう。


 結局、エレフセロイという各帝国勢力と敵対している小規模クランの部隊を見つけて撃破するにとどまった。



 そのまま北帝国を抜け、南帝国領まで戻ってきた。

 するとテヴェア村で略奪が行われているところだった。テヴェア村はチュートリアルで最初に行った村だ。そこを北帝国のフォーファリオスという貴族の部隊が襲撃していた。


「旦那、敵は100人ほどだ」


「こちらは113名だな。よし、テヴェア村を助けるぞ!」


 傭兵として対貴族デビュー戦だ。



 必勝陣形と呼ばれる陣形がある。正面に歩兵、その後背に弓兵、右翼と左翼にそれぞれ騎兵という布陣だ。基本の型と言ってもいいだろう。

 今回もそのように布陣して待ち構える。


 敵のほうからこちらに接近してくる。相手は弓兵を前面に押し出してきた。まずは弓兵同士での射撃戦を行う構えだ。


 俺は単騎で敵の背後に回り込み、敵指揮官フォーファリオスをジャベリンで狙う。敵が俺に対応する前に、回り込みながら2発投げることができたが、その2発目がフォーファリオスに命中し、指揮官を開幕で倒すことができた。これは幸先がいい。


 指揮官が倒れても部隊は戦闘を続けるが、指揮官からの細かな采配がなくなるので動きが鈍くなったり、士気が落ちやすくなったりすることになる。ゲーム的に言うと、バフが切れたような状態になるということだ。


 部隊同士が接近し本格的な射撃戦となる。こちらは盾歩兵で防御しながら、その後ろから弓兵が射撃するので被害は少ない。バタニアで雇った上流階級の弓兵たちの強弓がうなりを上げ、敵を倒していく。射撃戦はこちらが優位に進んだ。


 敵部隊が10mもないほどに近づいてきたところで敵の歩兵と騎兵が突撃してきた。


「総員迎え撃て!」


 こちらも全員で突撃する。敵も味方も皆、雄叫びを上げながら相手に突っ込んでいく。

 射撃戦の結果、人数差も大きくなったのでこちらが押し切れるはず。


 俺は主に騎兵を相手にし、ジャベリンを投げまくる。なんか味方にも当たった気もするがフレンドリーファイアはたまに起こる。乱戦ならしょうがない。

 幸い死にはしなかったようだ。だから気にしない。もちろん誤射はないに越したことはないが。


 程なく大勢が決し、敵部隊が壊滅した。こちらの兵士たちが勝鬨を上げ始める。その後の追撃掃討戦も終わり戦闘が終了する。

 結果、敵部隊は全滅、こちらの損害は戦死者17名となった。まあ快勝と言っていいだろう。


 できればもっと部隊を鍛えて損害を少なくして勝ちたい。目指すのは損害ゼロでの勝利だが、これが難しい。難しいがゆえに転生前はそれを目指してゲームにハマっていたのだった。


 フォーファリオスは生存しており、一旦捕らえたがすぐに放免することにした。こうするとフォーファリオスから感謝され、関係が良くなる。貴族と仲良くなっておくと、いずれ一国の主となったときに、クランごとの引き抜きもできるかもしれない。


 逆に有力な敵貴族の捕虜を味方の貴族に渡すことで、その味方の貴族との関係を良くすることもできる。貴族は身代金が高く、金になるからな。


 このような貴族の部隊の戦利品は、その辺の盗賊のそれとは桁違いに儲かる。部隊が100人を超えてくると、こうして貴族の部隊ともやり合えるようになるので、ここからは勝てる戦いをどんどんやっていって稼いでいきたい。

 勝ち続けることで武名も高まり、タイラー家のクランとしての格も上がっていく。


 そう、俺の成り上がり伝説はこれからだ!



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ここで打ち切りエンド、というわけではないです

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