第18話 隊商との戦い

 その辺の盗賊とは違い、隊商護衛はそれなりに組織化された部隊だ。こちらも兵数が増えたこともあり、しっかり陣形を組む必要がある。


 部隊を兵種でグループ分けし、それぞれに隊長をつけ小隊とする。隊長はそれぞれ得意とするのが、徒歩戦闘か騎乗戦闘か、近接か弓か、という点で判断して振り分ける。

 歩兵隊は学者のダシュワルを隊長に、弓兵隊は丘野ネリック、騎兵隊は俺、弓騎兵はニアセンとした。まあ弓騎兵は今のところニアセン以外いないので単騎で行動してもらうことになる。


「歩兵隊! シールドウォール!!」


 小隊ごとに陣形をとる。歩兵には前衛で盾を構えてもらう。シールドウォール陣形だ。敵の弓矢を防いでもらわなければならない。隊商の護衛には弓兵が多いのだ。弓騎兵もいるはず。歩兵隊の中には盾を持っていない歩兵も多いが、盾持ちの後ろに隠れてもらう。


 歩兵の後ろに弓兵を置く。丘の傾斜を利用して歩兵の頭越しに攻撃する構えだ。さらにその後ろに騎兵とニアセンを配置する。回り込んでくるであろう敵騎兵に対抗してもらう。


 陣形を整えたあと俺は単騎、敵陣へ向かう。敵は騎兵を先行させてきたようだ。

 俺が乗っているのはアセライの馬だ。その辺のやつにスピードで負けることはない。いつでも逃げられるので敵騎兵がこちらの陣に衝突する前にかき乱してやろうと思う。


 敵騎兵の内訳は、弓騎兵3騎、騎兵11騎だった。弓騎兵と騎兵に分かれおり、弓騎兵のほうが先に向かってくる。

 弓騎兵は馬上での弓の取り回しの都合上、騎馬の進行方向に対して左側にしか射撃できない。だから敵弓騎兵はこちらの陣の左側から回り込んで周囲を反時計回りに回りながら弓矢を撃ちこんでくる。

 それをされると盾でガードできない裏側から射撃を受けてしまったり、敵弓騎兵を倒そうとする兵が出てきて陣形が崩れたりしてしまう。


 そうならないよう俺はまず弓騎兵を処理することにした。

 弓騎兵がこちらに弓矢を放ってくるが、適当にジグザク馬を走らせればそうそう当たるものではない。ランダム回避運動というやつだな。

 撃ち終えて次の矢をつがえるまでの間は隙となる。そのタイミングに弓騎兵に正面から接近し、すれ違いざまに俺はジャベリンを投げつけ1騎撃墜した。


 すぐさま転回すると、残りの2騎の弓騎兵はばらけており、その片方の背後をとれた。弓騎兵は慌てて弓をつがえようとするが、俺がジャベリンを投げるほうが早い。そいつも仕留めることができた。


 もう1騎は少し離れたところから俺を狙って射撃してくるが、動き回っている俺には当たらない。狙いを定めようとして速度を落とした敵に接近し、やはりジャベリンで撃破した。


「三発三中! 我ながら完璧だな」


 次に敵騎兵隊の方へ向かう。まだこちらの陣に隊列を保って向かっている最中だ。そこに俺が横合いからジャベリンを三連投すると2騎を撃破、1騎は馬に命中し落馬させることができた。

 敵騎兵は俺の攻撃によって隊列を解き、俺に向かってくる者とこちらの陣に向かう者とに分かれる。俺も自陣に向けて馬首をめぐらせたところ、


「いてっ」


 後ろから剣で一撃をもらってしまった。直撃はせず、軽いダメージで済んだ。


 俺を攻撃しようとする騎兵から離れ、こちらの陣に向かういる騎兵を後ろからジャベリンで2騎倒す。

 直後、残りの敵騎兵たちが次々にこちらの陣に正面から突っ込んだ。歩兵たちはシールドウォールで耐えきって損害無し。陣を抜けきれず足を止めてしまった敵騎兵を味方が2騎倒したようだ。


「全小隊、自由戦闘へ移行!」


 各小隊ごとの判断で戦ってもらう。


 アセライの隊商護衛の騎兵は両手持ちの大きい斧を装備していて攻撃力が高い。残った敵騎兵との小競り合いで3人ほどやられたようだ。

 だがこちらも俺が敵騎兵の馬を仕留めるなどし味方と協力して3騎ほど倒した。


 ほぼ弓兵で構成された隊商の歩兵部隊も中距離からこちらに攻撃を仕掛ける。弓矢でやられてしまう兵が出てくる。

 だが敵騎兵はほぼ壊滅したので、こちらも全員で敵歩兵部隊に向かっていき攻撃する。弓兵は接近戦では弱い。近づかれた敵歩兵は逃げようとする者も出てくるが全員打ち倒された。

 2騎の騎兵がまだ走り回っていたが、それもほどなく倒しきり戦闘が終了した。


 結果、隊商の部隊は全滅。生存者7名を捕虜とした。

 うちの部隊は戦死者7名、負傷者2名だった。戦死したのは新兵が多かった。

 負傷者の中にはダシュワルもいた。歩兵の指揮にはもっと専門の戦闘能力の高い者が欲しいな。それと仲間たちの装備も充実させていきたい。


 生き残って経験を積んだ兵は、褒賞を与え賃金を上げてやると上位の兵種として活躍できるようになる。そういったアップグレードで部隊は強くなるが、部隊の財政には負担がかかることになる。その辺は折り合いを考えて行ったほうがいい。

 どんどん部隊を強化していきたいので今回は可能な限り兵を上位に引き上げることにした。金は隊商狩りで稼げばいいからな。



 オルティシアに戻って戦利品を売りさばく。小規模な隊商だったので戦利品での儲けはそこそこといった感じだった。

 捕虜も請け戻し仲介人に売却するとそこそこの金額になった。隊商に雇われる護衛や傭兵は、盗賊や正規兵よりもだいぶ身代金が高いらしい。商人の縁者は金回りがいいのだろうな。

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