第17話 隊商を狩ろう
オルティシアで隊商狩りの準備をした。交易品などを売り払ってしまい、部隊の荷をなるべく空けた。戦利品をなるべく多く積めるように。
部隊の兵数は70人になった。隊商の護衛部隊は最大でも50人だ。戦闘になればまずこちらが勝てるはずだ。
だが隊商は交易に特化している集団なので移動速度が速い。隊商を襲撃するには隊商よりも兵力が必要だが、そうすると速度で劣る。よって通常隊商は敵性部隊に捕捉されることはないのだ。
そういう足の速い相手を捕捉したい場合は、地形を利用して追い込むといい。
リシア海峡は、帝国側もアセライ側も半島となっているところで海峡となっている。アセライ側は半島の先端部で海峡となっているが、帝国側は海峡部から半島が南西の方に少し伸びていて、そこが袋小路となっているのだ。
その袋小路にアセライの隊商を追い込めば捕捉することができるはずだ。
「旦那、帝国のほうからアセライのキャラバンがやってくるぜ。戦えそうなやつは30人弱ってところだ。半数は騎兵だ」
オルティシアからリシア海峡に向かう最中にカモをやってきた。
50人規模の隊商だと損害も大きくなりそうだったが、30人規模ならちょうどいい。
隊商はアセライに戻るところのようで、海峡に向かう俺たちに追いつく形となったようだ。隊商はこちらを確認すると距離をとりつつ同じ方向へ向かう。
こちらが隊商を襲おうとした場合には逃げ切れる自信があるのだろう。
リシア海峡を渡ると見せかけて部隊を転進させる。隊商は慌てて逃げるが、そちらは半島の先端部、袋小路だ。うまくいった。
半島の袋小路に追い込まれても隊商は速さを活かし回り込んですり抜けようとしてくる。それをさせずに捕捉できるかが指揮官としての腕の見せ所である。
慎重に細かく部隊に指示を出し隊商を追い込んでいきついに捕捉した。
カルラディアでは戦闘前にお互い代表者で話をすることが慣習だ。それが襲撃であっても。金銭での戦闘回避の交渉や降伏の打診をするためだ。交渉が物別れに終わるとそれぞれ部隊に戻り戦闘開始となる。
隊商の隊長とその共と思われる者たち三人が出張ってきたので俺も向かう。
「我々はウンキッドの保護下で商売をしているサナーラのテュールの隊商です。あなた方は何だというのですか」
ウンキッドはアセライの支配者だ。サナーラは、そのウンキッドの本拠であり、アセライの首都ともいうべき大都市のことである。彼らは、そのサナーラで商売をしているテュールという商人が運営している隊商らしい。
自分たちに手を出せばウンキッドを敵に回すことになるぞ、と言っているわけだな。
だが俺たちは南帝国の傭兵なので、すでにウンキッドの敵なのである。
もし俺たちが無所属の状態でこの隊商に恐喝を行えば、それは単に犯罪行為とみなされ、その時点でタイラー家とアセライとで抗争状態になる。ウンキッドからはひどく嫌われるし、停戦できたとしてもアセライからは犯罪者扱いされることになる。
だが今回は戦争中の正当な行為とみなされ、特にお咎めはない。
どちらにせよ、隊商の主人である商人には完全に嫌われるが。
「俺たちは南帝国の傭兵だ。商品をこちらによこせ、さもなくば殺すぞ!」
「我々はこの隊商を守るために雇われている。略奪するつもりなら、まずは我々を倒すんだな!」
こちらは70人いるとはいえ、新兵が多く騎兵が少ないことを見てとったか。相手はやる気である。もしかすると契約やら、しがらみか何かで一戦もせずに降伏するわけにもいかないといった事情があるのかもしれない。よほど戦力的に上回らないと降伏はしないようだ。
お互い部隊に戻り戦闘開始だ。
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