第15話 トーナメント
各都市には闘技場という施設があるだのが、現在ゼオニカの闘技場では、トーナメントとか剣闘士試合とか呼ばれる競技会が行われている。ローマのコロッセオのような競技場で、腕に覚えのある戦士たちが1対1、チーム戦、バトルロイヤル形式などで戦い、観衆を楽しませるイベントだ。
参加者がトーナメントで優勝すると武具などの賞品を手に入れることができる。今開催されているトーナメントの賞品は、ドーンブレイカーというそこそこ上等な片手剣だ。
カルラディアでは冶金技術がまだまだ未発達なためか、金属を多く使った剣や鎧などの武具がかなり高額である。ドーンブレイカーも数千デナルの価値があるはず。
トーナメントには貴族も参加することがある。
そういえば皇女アイラも出場していたというし、昔の俺がカラドグを見たのもトーナメントで戦っている姿だった。機敏な動きをしていたカラドグはゴキブリみたいだったと憶えている。
貴族の参加者が多いと用意される賞品も良い品になるようだ。今回は3人貴族の参加者がいるようだ。
参加者は得物を選ぶことができず、大会側に用意される武器を使用するのだが、これには刃引きがしてある。したがってすべて打撃攻撃となるのでトーナメントで死者が出ることはない。
だからトーナメントが開催されているときは積極的に出場しようと思う。優勝すれば賞品も名声も得られるし、優勝できないとしても戦闘訓練になる。
というわけでゼオニカで開催されていたトーナメントに参加することにした。1回戦は帝国のカタフラクト兵と1対1、お互い剣と盾を持っての勝負だ。
カタフラクトはがちがちの重装備で固めた上級騎兵だ。非常に防御力が高い。騎乗状態では鎧兜の重量はあまり気にしないでいいが、今回の戦闘は徒歩だ。徒歩だと装備重量によって動きやすさが変わってくる。
俺はまだ防具を整えることができていないので、ただ布の服を着ているだけの紙装甲だ。そのぶん素早く動ける。
ただ、そもそも相手の運動能力が高いので、機動力の面では互角といったところだ。あとは己の腕の勝負となるだろう。
競技場の中央でぶつかるべくお互い走っていき、近づいたところで突きの体勢に入る。俺は相手の突きを右にかわしつつ突きを繰り出した。俺の突きは相手の胸にクリーンヒットした。相手はひるみつつも反撃しようと剣を振りかぶった。その攻撃が繰り出されるよりも先に、俺は右、左と連撃をヒットさせ、カタフラクト兵を倒すことに成功した。
2回戦も得物は剣と盾で、今回は4人でのバトルロヤイル形式。4人のうち2人が貴族だ。
戦争の多いカルラディアの貴族の男は皆、武芸を仕込まれて育っており、その辺の一般兵よりも格段に強い。もちろんピンキリではあるが。
ま、貴族と戦うときは気張っていこう。
このバトルロヤイルは先に倒れた二人が負けとなる。それまで生き残っていれば勝ち抜けとなるので防御に集中する。
盾を構えていればそうそう攻撃を食らうことはない。実戦でも生存性を優先するなら盾を装備しておいてほうがいい。
試合が始まると一般兵が俺に向かってきたので、そいつの攻撃を俺が防御していたところ、貴族の一人が一般兵を後ろから沈めた。
次に貴族同士でやり合い始めたので、俺が横から一人を打ち倒した。
この時点で勝ち抜け決定だが、試合は立っている者が一人になるまで続く。俺は残りの貴族の男とかなり打ち合って競り勝った。
3回戦は準決勝だ。2回戦で残ったさっきの貴族と改めて決勝進出をかけて戦うことになった。結果はさっきと同じく数多く打ち合ったすえ俺の勝利となった。
決勝の相手はレギオン兵だ。レギオンは帝国軍の歩兵として最上級の兵種である。重装甲で歩兵としての戦闘能力は貴族と遜色ないほど訓練を積んだ兵だ。
レギオンとの試合は、さっきの貴族よりも激しく打ち合うこととなり苦戦した。装甲の高さゆえなかなかしぶとく、こちらもいい攻撃をもらってしまったが、なんとか勝つことができた。
こうしてトーナメントを勝ち残り、ドーンブレイカーをゲットした。俺の名声も少し高まったと思う。
丘野ネリックが声をかけてきた。
「旦那、やるじゃねえか! ちっ、ムジョーの旦那に賭けておけばよかったぜ」
あ、こういうトーナメントでは賭けもできるのだった。自分に賭けておけば儲かったな。
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