第13話 脱走兵との戦い

 ポロスを出立し、さらに西へ向かう。途中ブドウ畑が連なっているオニカ村に寄った。オニカ村はポロスからほど近いが、ここから西は西帝国の支配地となっている。


 村で休憩していると、村長が依頼があると言ってきた。


「あんたの噂は聞いている。賊を退治したりしているそうじゃないか。

 戦い方を知っている者の手を借りたい。この近辺に脱走兵の集団が居座っていて、数週間に一度、食料や金を要求してくるのだ。逆らった村人が二人殺されてしまった。ガリオスに助けを求めたが彼の兵が間に合ったためしがない」


 ガリオスとは西帝国の指導者だ。彼も皇帝を名乗っている。

 現在西帝国は北西方面に位置するバタニアと戦っている。オニカは反対側の南東にあるので、軍が手薄になって手が回らず、賊やら脱走兵といった輩が増えてしまうのだろう。


「わしらは村で待ち伏せをし、奴らと戦うつもりだ。あんたも協力してくれれば負けることはないだろう。一両日中にも奴らが来るはずだ」


「いいだろう。加勢する」


「ありがとう。奴らを村の中に誘い込もう」


 領主は頼りにならず、盗賊と化した落ち武者から村を守る。気分は七人の侍だ。ま、こっちは50人いるが。

 脱走兵の規模は30人程度らしい。村の民兵と共闘するので楽勝だろう。



「誰だ、お前? 生き生きとしたツラだな、ええ?

 まあいい、銀とワインをかき集めて持ってこい」


 村の中にのこのこと入ってきた30人程の脱走兵集団。


「今度は戦って勝ち取るのだな」


 俺が合図を出すと隠れていたウチの兵50人と村の民兵20人が姿を現す。罠にハマり包囲されたことを知った脱走兵たちは包囲を逃れようとやぶれかぶれに突っ込んでくる。


 村の民兵と一緒に賊を迎え撃つわけだが、可能な限り自部隊の損害を抑えたいので、民兵のほうが少し先に敵とぶつかるように自部隊の位置をさりげなく調整する。最初の衝突は特に死傷しやすいからな。


 敵には騎兵が4騎いる。こちらも自部隊には自分を含めて騎兵は4騎いる。

 敵の騎兵が弓を持った民兵たちにそろって突っ込んできた。敵騎兵に向かって俺はジャベリンを投擲するも命中せず。その直後、騎兵の突撃を食らった民兵2人が倒された。

 脱走兵はもともと軍属の正規兵だっただけのことはあって、その辺の盗賊よりも戦闘能力が高い。村の民兵だけだったならば確実に負けていたな。


 敵騎兵のうち1騎は失速してしまい、群がる兵に囲まれ打ち倒された。残りの敵騎兵はそれぞれウチの騎兵が対応する。そうして騎兵同士でやり合っているところを俺が横からジャベリンで1騎仕留めた。1騎はうちの騎兵が競り勝ったようだ。敵の最後の1騎は逃げ回っている。


 そうこうしているうちに徒歩集団同士が激突した。その衝突で敵も味方も死傷者を出す。直後は一時的に拮抗するも、程なくこちらが敵歩兵を半包囲する形となり、敵を屠っていく。

 敵集団は瓦解し散り散りに逃げようとするも、それを許すことはない。こちらの兵たちは逃げ惑う敵を次々に討ち取っていく。この時に俺も3人倒した。追撃戦こそ騎兵が強い。


 最後まで逃げ回っていた敵騎兵は先に馬を仕留められて地面に投げ出されたところをうちの新兵にボコられた。

 こうして戦闘が終了した。

 

 戦闘の結果、村の民兵に9人、ウチの部隊に1人戦死者が出た。

 民兵に結構被害が出たな。俺が狙ったとはいえ、民兵たちもウチと歩調を合わせて突出しなければそんなに死者は出なかったと思う。

 所詮素人ゆえ、戦闘のプロ相手に力が足りていなかったというのもあるだろうが。


「約束の報酬だ」


「ありがとう、遠慮なくいただく」


 村長から報酬1000デナル受け取った。

 報酬を辞退することで、さらに村長の好感度を上げ、より名声を高めるということもできそうだが、傭兵団を立ち上げたばかりで物入りなので全額きっちりもらった。


 このように問題を抱えた人々が行く先々に存在する。盗賊退治や隊商護衛といった荒事から、家畜の配達、物資の調達、人探しなど依頼は様々だ。そういった依頼を達成することで金や信用、名声を得られる。

 都合のつかないものや割に合わないものもあり依頼は選ぶ必要はあるが、都合がいいものはどんどんやっていきたい。

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