第10話 タイラー家の家長

 南帝国の都市フィカオンにやってきた。

 兄弟たちの居場所はすぐにわかり、酒場で再会した。これまでのいきさつをお互い話し合う。


「ムジョー、お前、南帝国ラガエアの軍の傭兵になったのか。いや、悪いと言うわけではない。安全な街に移り住み、商売でもやろうかと思っていたが、今回の件で盗賊を狩る側になるのも悪くないと思ったのだ。

 ラダゴスやガルターの拠点への襲撃だが、お前の指揮は見事だった。兵を集め、デナルもしっかり稼いできたようだし、俺はお前に救われた身だ。だから今後はお前がタイラー家の家長となり我々を導いてくれ」


「本気か?」


「ああ、本気だ。なんというかお前は何事かを成し遂げて高みに上りそうな――昇り竜のようなオーラを感じるのだ。俺はそんなお前と共に戦うのを楽しみにしている」


 父の後継者として育った兄者はかなり有能である。それこそ貴族として押し出しても遜色ないくらい文武に優れている。その兄者からまだまだ未熟な俺がそこまで評価されるのは買いかぶりではないかとも思うのだが……。


「わかった。俺がタイラー家を盛り上げてみせよう! やるからにはてっぺんを目指すぞ」


「その意気だ。しかし数ある貴族のクランの中でてっぺんになるということは、お前は皇帝となるのやもしれんな、ハッハッハ!」


 冗談のように感じるだろうが、俺は皇帝となりカルラディアを統一する気満々だ。

 バナーロードはかなりやり込んだゲームなのだ。ゲームの中ではここまでがチュートリアルみたいなものだが、それをうまくやれたという感触がある。

 このカルラディアに転生した人生だ。せっかくだから皇帝を目指し、成り上がりを思いっきり楽しもうと思う。



 妹と弟はフィカオンに置いていくことになった。18歳となり成人したら合流することになる。それまで戦い方や部隊運営の知識などの教育を受けさせる。


 その辺りの手筈もニアセンが整えてくれた。彼は執務能力も高いのだ。


 ニアセンには、食料や装備の支給、賃金の支払いなど、部隊の様々な管理運営を行う補給官を担当してもらうことにした。

 ニアセンの手腕のおかげで、もっと兵を集めて部隊の規模をより大きくできそうだ。


 フィカオンやその周辺でも兵を募りつつ、西へ向かうことにする。

 フィカオンは南のペラシック海に流れ込む川の上流部の東岸にあるので、西へ向かうには下流にある橋を渡るか、北の川源流付近のカノプシス村から回り込む必要がある。

 カノプシス村から行くとリカロンに寄ることできるので北側から行くことにした。


 街に寄りながら移動することで、交易品の売買で稼いだり、仲間や兵員を雇っていくことができるし、都合のいい依頼もあるかもしれない。目的地までなるべく街々に寄ることにする。

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