第8話 傭兵になろう
丘野ネリックを雇った後、同じくミゼアの酒場で飲んだくれていた7人組の傭兵を雇うことができた。傭兵は金さえ出せばすぐに雇える。ちょっとお高めだが。こちらは丘野ネリックとは違い、一般兵として雇用となる。
ミゼアでは他に雇えそうな者がいなかったので、街を出て近隣の村々を回ることにした。
ミゼアの東には南北に長大なタナエシス湖がある。帝国領と対岸のフーザイトを隔てている湖だ。その西岸の村々で兵を徴募した。数人雇うことができたが芳しくない。
ミゼアの南東、タナエシス湖の湖岸にあるジョグリス城に立ち寄った。この城は南帝国所属だ。こちらがバタニアの貴族に連なる者であると告げると入城を許可された。
貴族然とした20代半ば程の男が現れ応対する。
「名前を聞こう」
「私はタイラー家のムジョーです。そちらは?」
「私はヴェテラニス家のパガリオスだ。傭兵をやっているそうだな? 火炎の残り火の部隊を撃破したと聞いたぞ。さらなる栄光を手にするチャンスが欲しければ、我々と共に戦うと良い」
「興味はあります。ふさわしい額を払ってくれるのなら」
「戦士が増えるのは大歓迎だ。敵の部隊を破ることで報酬を支払おう」
成果に応じて報酬が支払われるようだ。後払いで分割である。成果を挙げれば評価額が増え、その評価額の四分の一の報酬が支払われる。次の支払い時に評価額の残金から再び四分の一が支払われる。最小限度の支払額になるまで満額支払われることはない形だ。傭兵契約の持続を保つためだろう。
戦争相手の敵部隊だけではなく盗賊退治でも評価してくれるとのこと。
「わかりました。受け入れましょう」
「よし、簡単な契約書を作成する。カルラディア帝国を代表してお主を歓迎しよう。お主の剣を我々の敵に対して存分に振るってくれ」
「デナルの流れが止まらない限り、敵の血も流れ続けます」
「期待しているぞ」
こうして南帝国の傭兵となった。
成果報酬型でありノルマなどはない。何もしなければ報酬も発生しないだけだ。雇った兵たちに賃金を払わなければいけないから、少なからず傭兵稼業をしていく必要がある。
傭兵となると所属先の国の街や村での兵の徴募がしやすくなる。無所属の集団よりも自国の傭兵というほうが参加しやすいのだろう。
そのため、傭兵となった後はすんなり兵を集めることができた。
ジョグリス城を南下し、集めた兵で少人数の野盗を狩りながら南帝国の都市シロネアへやってきた。シロネアはタナエシス湖の西岸南部に位置している。絹産業の中心地で、かつて帝国の保護領であったタナエシス湖東岸地域からの貿易で繁栄していて、贅沢の象徴ともされていたらしい。
しかし保護領はフーザイトに征服され、対フーザイトにおける帝国の前線拠点となっている。
現在、南帝国はアセライと戦争中で、フーザイトを相手に戦っているのは北帝国だ。今のところシロネアは戦火から遠いが、状況が変わればどうなるかわからない。
シロネアで南帝国所属の傭兵団として兵を募ったところ、隊商護衛をしていた者を酒場で雇えた。これで部隊の人数が20人となり、傭兵クランとしての体裁を整えることができた。
そして酒場を出たところ、
「ムジョー! やっと見つけたぞ!」
お前は――ラダゴス!
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