第5話 タフルで稼ごう
事情が事情とはいえ、この野盗がはびこる世界に一人放り出されてしまうのもひどい話ではある。カルラディアのムジョーとしてはそう感じる。
ゲームを知る日本人の俺としては、金の稼ぎ方とかもだいたいわかっているので楽観的だ。
ただ、忘れてしまっていることもあるだろうだし、俺がバナーロードをプレイしてたのはゲームは正式発売前のアーリーアクセス版だったからな。俺が思ってたものと違うところもあるかもしれない。
だがまあ、かわいい妹弟を救い出すためだ。いっちょやってやるか!
やる以上、なる早でやっていこう。
まずは南帝国の都市リカロンへ向かうことにした。ラダゴスのアジトはグレートオルニアンロックと呼ばれる岩山にあり、そこから岩山の麓を北東に行くと程なくリカロンに着くことができた。リカロンは岩山を利用した天然の要塞となっているようだ。
かつてカルラディアにおける国といえば唯一帝国を指すものであった。その帝国は現在、北部・西部・南部の三つに分かれ勢力争いをしている。それぞれの指導者が先の皇帝アレニコスの後継者として皇帝を僭称している。
南帝国のリカロンはグレートオルニアンロックの東側に位置している。北東にはカノプシス城、西側にセスタダイム銀鉱があり、それらは軍事上の重要拠点として、アレニコスの妻だった女帝ラガエアが直轄支配している。
リカロンは過去、アレニコスが暗殺された場所でもある。暗殺をきっかけに暴動が起き、街はひどい状態になったらしいが、現在は豊かな賑わいを見せている。
帝国各地の酒場でタフルというゲームで賭け試合ができる。500デナルまで賭けられる。勝てば倍になって戻ってくる。
俺はリカロンの酒場に入り、タフル盤を出してあるテーブルを見つけ、そこに座っている髭面の男の向かいに座る。
「賭けられるか?」
「賭けるなら私は本気を出すがいいな? いくら賭ける」
本気を出すとか言っているが大した実力はない。ある程度勝ち方を知っていれば楽容易く勝てるはずだ。
「500デナルだ」
デナルの銀貨が入った袋を置く。
「いいだろう。襲撃者側か守護者側かどちらを選ぶんだ?」
この世界の人間が気付いているか知らないが、タフルは守護者側が圧倒的に有利である。
「俺は守護者側となろう」
「素晴らしい。では始めよう!」
おそらくこの髭の男はタフルが大好きで、損得抜きに楽しんでいるのだろう。
俺は14手であっさり勝利した。
増やした資金をもとにリカロンの市場で買い物をする。
ナハサ砂漠産の馬を1頭買う。今まで乗っていたのは荷役用の馬だ。砂漠馬のほうがスピードもあるし乗用馬としてしっかり調教されていて扱いやすい。
降りた荷役馬は本来の用途の駄馬として使うことにする。荷役馬やラバは、たくさんの荷物を運ばせることができる。
砂漠産の馬の中でも特段『アセライ』というブランド名つきの『アセライの馬』は軍馬として飼育調教されており、高額だが優秀だ。砂漠馬の上位互換の能力を持っている。だが、もう少し騎乗技術を身に着けないと軍馬に乗るのは難しい。いつかアセライの馬に乗り換えたい。
装備していた剣と槍と投げ斧を武器屋で売り払い、投擲用の槍、ジャベリンを買えるだけ大量に買う。ジャベリンを俺の主武装にするつもりだ。
ジャベリンは投げ斧よりも飛距離を出せる。弓やクロスボウよりも射程は短いが、命中した場合に矢やボルトよりも威力が大きいことは想像に難くないだろう。
この世界この時代、盾は基本的に木製だ。剣戟や弓矢を防ぐのはそれで問題はない。その盾をジャベリンは数発で使い物にならないようにすることもできる。
槍投げの熟練者は盾を貫き通して一撃で相手を倒すこともできるようだ。俺もそれを目指し、槍投げを極めたいと思う。
武器といえば、街では鍛冶場を使うことができる。素材を持ち込んで自分で武器を製作することが可能だ。
鍛治を始める場合は、木材から木炭を作るところから始めなければならない。そして鉄素材各種と木炭を材料にして武器を作ることができる。
強い武器を作るには、鍛冶スキルを成長させないといけないし、作り方を自分で閃いていかないといけない。
凄腕の鍛冶師になると、べらぼうに儲かるらしいが、面倒くさそうなので俺は鍛冶には手を出さないことにする。
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高火力なジャベリンですが、慣れないと命中させるのが難しいので、ゲーム初心者には射撃精度が高いクロスボウがオススメです。ライトクロスボウならスキルなしでも馬上で使えます。ボルトも忘れずに装備しましょう。
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