第2話 ムジョーの生い立ち
記憶をたどり、転生したゲームの主人公がどんな人物だったか思い返すことができた。
俺の名前はムジョー。バタニア人の男で22歳だ。この世界では平均的な体つきのようだ。
バタニアとはカルラディア北部の高地の森林地帯の地域のことだ。そこに住む者たちの勢力を指して言うことも多い。バタニアには、カラドグという王がいる。
だがバタニア人は蛮族だと揶揄される。とかく武勇を自慢したがる文化で、原始的な風習――敵の首を狩って家で飾るなど――も残っており、蛮族だと言われることを否定できない。
古来より帝国にもバタニアの地に大きく攻め込まれたことはないらしい。「帝国なんぞ恐るるに足らず」とそのような物言いをする連中が多かった。
国境付近の土地の取ったり取られたりは日常茶飯事だが、バタニア本領は山岳部に囲まれた土地なので守りが固い。バタニア人は土地柄、他国勢力の人間よりも山林での活動に秀でているということもある。攻め込まれにくいのは確かだろう。
家族構成は、両親がいて四人兄弟だ。俺は次男で、兄のニアセンは3歳上。下には8歳下の妹アイシーンと、11歳下の弟ファロクがいる。
うちはバタニアの中流階級の一族で父親は土地を持っており、人を使って畑を耕していた。父は、いざ戦争となると王の招集に応じて戦う一族の主力の戦士だった。投げ斧が得意だったらしい。
兄や俺も将来戦士となるべく、体を鍛えさせられた。
俺は幼い頃、同世代の子供よりも体が大きく、腕っぷしが強かったらしい。棒切れを剣に見立てて振り回したり、ジャベリンに見立てて投げつけていたようだ。
中流階級とはいえ、文明が未発達な田舎である。子供のころから働かされていた。牛や羊などの家畜の世話をやらされていた記憶がある。自分の足で走り回って家畜を追い立てたり、石を投げて害獣を追っ払ったりしていた。
この世界はしょっちゅう武力衝突があり、十代半ばにもなってきたら戦いに駆り出されるようになる。
俺は、同世代の中では腕力に自信はあったがまだまだ成長しきっておらず、実際の戦争の中で大人たちとやりあうのはかなり不安だった。
バタニア人は蛮勇を誇る。勇んで戦いに向かった同世代の子も多かったが、結構な割合で戦死した。だから俺は、兵士として戦いに加わるのを避け、父親や兄の従者として立ち回った。
野営地で一族の者や馬の世話をしたり陣幕の見張りをしたりするのだが、戦場で稼ごうとする商人や娼婦、賭博士、中にはコソ泥などもいて、こすっからい連中を相手にすることになった。それで俺もだいぶ狡賢くなった気がする。
そういえば数年前、村の近くの川が氾濫しそうになり、そのとき父親も兄も不在で俺が指揮をとらねばならないことがあった。村の人間をかき集め、急いで堤を築いたおかげでギリギリで何とかなった。若いながら人をまとめ上げたことや、とっさの判断力、賢さなどを褒め称えられ感謝された。
うちの集落は国境の係争地に近い場所で、近年頻繁に略奪を受けるようになってしまった。いつ来るかわからぬ賊のために防衛の兵を雇いながら、荒らされがちな農地で収益を上げるのは困難だったのだろう。辟易とした父は、土地を譲り渡し、家族で安全だと思われる街へ移住することにした。
だが俺たちは、その旅の途中の宿で野盗の襲撃を受ける。
両親は殺された。そして幼い妹と弟が賊に連れ去られた。
俺と兄は燃え盛る宿屋から飛び出し、馬小屋に残っていた馬で賊の包囲を突破して逃げ延びた。
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どんな生い立ちか決めることで初期能力を決めるキャラメイク回です
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