第4話 プレゼント
「お客さまは当店の1日の利用者1500番目に選ばれましたね?」
「はい」
「これまでの道案内は店長がしてくれたと思いますが…それらはすべて、私どもスタッフが考えましたミステリーツアーでございます。お楽しみ頂けましたか?」
狭山と名乗った従業員が聞く。
ーーミステリーツアー?
ーーえ?
ーーいやいやいや、心臓が止まりそうになる事ばっかで楽しめないでしょ?
「怖いだけでした」
率直に意見を述べる。
「さようですか。それは残念です!そして、これからが本番です!プレゼントを受け取る準備は出来てますか?」
「プレゼントって大したことないんでしょ?」
狭山と名乗った従業員は、明るい対応で言う。
「いえいえ。受け取らないと損ですよ!」
「そうなの?それじゃ…」
私は大きく深呼吸を三回してから、手を差し出した。
「おめでとうございます。こちらが本物のプレゼントになります」
手渡されたものは1枚の封筒だった。
「今すぐ開けてみてください」
ーードキドキドキドキ。
何か虫でも出て来るのではないか、と考え、私はドキドキしてくる。変な緊張感が漂う。
これまでを考えたら、虫なんかカワイイモノかも、知れない。
ーーよーし、思い切って。
私は封筒の開き口に手を添えた。
「ーー準備出来ましたか?」
狭山が言った。
「はい」
ようやく覚悟を決め、私は封筒から中身を取り出した。
「おめでとうございます。あなたへのプレゼントは現金一万円でした」
従業員の狭山、それに店長が拍手をして言う。
「驚かせてしまい、申し訳ありませんでした。また当店にいらして下さいね!」
そう言って店長が笑った。
ーーなんだ。全部、作り物だったのか。
ーーはぁぁぁ。死ぬかと思った。
「またお店に行きますね」
私はようやく恐怖を塗り替え、もらった現金一万円を抱えて、少しだけ幸せな気分で家路を辿る。
終わり。
おめでとう みゆたろ @miyutaro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます