ヴァルキュリア

嗚呼、そんなことがあったのね

もう、そんなことは起こらない


その行間の隙間には

何があったのかしら


問いただして(もう一度)

聞き取れば(語るべき)


アタシが世界を駆けている間に

アナタの時間を見失い

二人の場所は見つからない

探し物


落とし物

二人の関係は名前を変えて

どこかに行ったか分からない

そう言ったあなたは

此処にいて


捜している素振りはどこにも

ここには見つからないアタシが

アナタの知ってる私は何処かに行った

わたしが忘れてしまったあなたの

息遣い

唇のぬくもりをルージュの艶が遮った


面倒くさくて

煩わしくて

面倒見切れずに捨ててしまって

アナタを見限った


アナタは子犬じゃないの

アタシは母親にはなれないわ

アタシを呼ぶ声が聞こえる

ねえ、聞いてる?

アナタには聞こえないの?


教えてあげようか

この街の世界の外の果て

アタシは呼ばれている


求められているのは(アタシ)

問われているのは(あなたの方)

覚悟を決めたら今日のアタシ

引き返せない境界線

越えてしまったら非日常

超えてしまった限界線

分かってよ


わかってよ

震えをこらえて席を立つ

もう何も聞かない

その声は聴かない

バイバイするの


アタシの人生の句読点

そしてお終いにするの

帰らないから

還らない運命の綾をほどいたら


街の空気が変わった


ヴァルキュリア

背中越しにヒトはそう呼ぶ

アナタは連れてゆけないの


九人の姉たちが待つ

その世界


アナタは連れてゆけないの

戦塵の風が吹く

その世界


あなたが知る術もない荒野で

歌を口ずさむ私


戦いの詩

再び「滅びの物語」が始まるまで


姉たちが呼ぶ

死にゆく将軍たちへのはなむけ


嗚呼、明日が始まるわ

あしたが始まってしまう


滅びあしたの歌を唄え

アナタの聴くことのないその歌を


わたしは知っている

黄泉の王たちが待っている


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