冬木立の森に

真砂 郭

シルフィード

どうしてあんなに素晴らしい

どうしてこんなに素敵なの


あの日の記憶はそう綴る

もうそんなことがあったのか

誰にもわからない


わたしも知らない

あの日の私はもういない

日記の中にいるだけの


わたしという名の赤の他人

誰かが教えてくれる

アナタが教えてくれる

半透明の輪郭線


触れてわかる

触れたら分かる


アナタの綴る

わたしの指先の気配


カップのぬくもりだけが

わたしの記憶なら

アナタの思い出が何処にある


此処にあると心臓に

心は宿る

右心房に左心室


血は巡り

心は巡る


冬木立

寂しいなんて言わないわ


誰もいないのよ

誰も来ないのよ


木々の間に間に鳥は鳴く

アナタはその声を知らないの


からすは鳴いている

わたしは泣いている

木立ちの囁く並木道


風の歌

鳥の声


真昼の寒さを感じては

二人のぬくもり思い出す


灰色の淡いトーン

それは雲なのか空なのか

輪郭線のない世界の空へ


記憶の私は空気の精シルフィード

半透明の輪郭線

想い出すらも溶けてゆく


滲んで霞む日記の言葉

もう読めないなら私はいない


幸せという言葉が頁の中に

言葉が綴れば日記帳ダイアリー


其処にはないけど

忘れはしない


アナタの面影

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