第3話 自分にあった仕事って何?


 翌日

「楓~!」と、1階から母の声が聞こえた。

「なに~?」と言いながら下へ降りる。


「ほら。商品の品出し。こういうの良いんじゃない?人と関わる仕事は嫌なんでしょ?」

と母が新聞を見せて来た。


「それって力仕事じゃん。やだよ~」と私は答えて、ソファーに座る。


「じゃぁ、次、何考えてんの?」

「分かんない。とりあえずハローワークの求人検索でもしてみようかな。」と答えた。


「昨日のお父さんの言っている意味は理解できたの?」

「うん。出来た。要するに、周りにもっと認められる努力をしろって事でしょ?」

「そうそう!分かってるじゃない!」

「無理だよぉ~、私人間関係築いていくの苦手なのに、どうやって仕事する人たちとコミュニケーション取っていけばいいわけ?無理難題すぎる・・。」と言ってソファーに横たわった。


「私は黒のテントウムシにはなれない!転職を繰り返してもちゃんと働き続けるから、私の事はほっといて。」と言った。

再びおでこにデコピン。「いたっ!」


「全く。困った子ね。そしたらとことん転職しまくったら?」と言い、台所へ入って行った。


もぅ。私の人生なんだから、少しはほっといてよね!


心の中でブーブー言いながら、ダイニングに置いてあった朝食を食べた。

パンをかじりながら、あぁ、結婚でもして、専業主婦にでもなりたいわ。この際、金持ちなら誰でもいい。


なんてバカな事を考えながら、ご飯を食べ終え、パソコンで求人検索を始めた。


ハローワークでの求人や派遣での仕事、色々検索した。

「お?『未経験大歓迎。仕事の紹介をするお仕事』・・。」

人材派遣の仕事なんだろうか。


未経験大歓迎なら、私でもいけるだろう。と思い、ポチっと応募のボタンを押した。


後日、派遣会社から電話があり、名前や年齢、過去の職歴や資格の事など、色々聞かれた。

そして、応募した仕事について、ざっくりと、「派遣へ登録したお客様へ、仕事の紹介をするお仕事です。」と言われた。


ふーん。コールセンターみたいなもんなのか?


「始めは出社していただいて、3日間程研修を受けて頂きます。その後は在宅でお仕事をする事も可能となっております。」と言われた。


なぬ!!在宅!

私のようなコミュニケーション能力が桁違いに低い人間には、人に会わずに自宅で仕事がもくもくと出来る。なんと!私の為にあるような仕事ではないか!


「それじゃあ、こちらを応募されると言う事で宜しいですね。」と聞かれ、

「はい!!」と元気よく答えた。

2日後から研修が始まった。

そこそこ広い会議室に15名程の女性たちが座っていた。年齢は様々で、20代から50代ぐらいと幅広かった。


私は開いている席に座り、研修が始まるのを待った。


9時になり、いかにも仕事バリバリこなします!と言った感じのスーツを着た女性が現れた。どうやらこの人が研修をしてくれる先生らしい。


「こんにちは、みなさん。高見 麗奈タカミ レイナと申します。3日間と言う短い期間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。」とお辞儀した。


研修は朝9時から夕方5時までと、みっちりあった。

時々、先生は休憩を入れてくれたおかげで、なんとか3日間の研修を乗り越えた。


「良いですか。最後となりますが、こちらのお仕事は、仕事を探されている方の条件と一致する、もしくはより近い仕事を、いかに魅力的に案内するかがとても重要です。そして、その方の気持ちをよく理解し・・。」


時々休憩を入れてくれてたのは助かっていたが、この先生、最後の話しが毎回長かった。

終わるのはいつも夕方6時。1時間もオーバーしてるじゃないかぃ!!


「マジ勘弁・・。」と思わず口に出た。


いや!明日から在宅だし、人と関わる事はない!今度こそ頑張らねば。と思いながら家へ帰った。

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 転職繰り返して何が悪い 山城 潤 @kanaendow

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