第17話 蛇のあやかしと鶴亀城
1丁目仙人への疑いがはれて、5丁目あやかし逃げ出し事件を更に詳しく金ぴか仙人に聞くとこの街に深い関係があることが分かって来た。
「逃げ出したと思われるあやかしは、この丘に建っていた鶴亀城の城主と恋仲だった蛇のあやかしじゃ。」
この言葉を狐仙女さんが遮って、金ぴか仙人を潰しそうな勢いで向かって言った。
「ちょっちょっと待って、師匠~!!ミーちゃんが逃げ出したって言うの~?あの子は、傷心で自ら五丁目に行ったのよ。逃げ出すなんて考えられないし・・・もともと、あそこにいる必要のない子よ~。」
「九よ。これこれ・・・わ・・・わしを潰す気か~待たんか。」
「だって~。」
「とにかく、あれは、5丁目にいないんじゃ。5丁目に入るものは、すべて管理対象になるから、すぐに調べが入るのをしっておるじゃろ~お前だって。」
2人の会話を聞いて、一同声を揃えてその恋の話はなーに--?となった。
淡々と、狐仙女さんは、その当時の話を説明してくれた。
100年以上前に、この地域を治めていた鶴亀城城主の青柳康栄と竜神界に上がる最終修行に降りてきていた蛇のあやかしが恋に落ちた。
蛇あやかしの修業は、竜王神の使いをして、自然の理を乱した人に罰を下す為、竜王神の元へ案内する役目だった。情けを掛けずに罰を与えることが出来るようになることが最大の修行だった。人に変化して、下界になじみながら生活し、理を乱すものを
見つけ出すのは、簡単だが、人に情を持ってはいけないというのは、案外難しいものだった。なんとか、約束の100年を迎え、仙界に帰る前の日だった。竜王神の最後の使いの帰りに鷹狩りに来ていた康栄が往った矢が、たまたま体を掠めてしまったのである。何とか、人型をとどめて居たところで、康栄が助けて城へ連れ帰ったのだ。康栄は、あやかしに一目惚れして、献身的に看病し、妻になって欲しいと懇願した。仙界に戻らねばならないのに、あやかしも次第に心をゆだねてしまい・・・ついに結ばれてしまったのである。そして、いつまでたっても、竜神界に上がってこない、あやかしにしびれを切らした竜王は、下界に他の使いを下して、事実が発覚した。これに怒った竜王神は、もともと、弓を当てたのは康栄で、しかも城の奥に隠して、あやかしを利用しようとしていると思ったのだ。竜王神は、仙界に戻らない、あやかしを下界まで直接迎えに来て、雷を落として城に巻き大雨を降らせ城下に洪水にしてしまったのだ。
「うわ~。かわいそうじゃん!!二人とも。恋に落ちるのは、仕方ないんじゃないの~!!な、友香。そうだよな。」
「ま、ま~そうだけど、100年も頑張ったのが無駄?になってしまったんだし、それを育ててた竜王様の怒りも最もだし・・・難しいよね。」
「そうね~。河童さんはどう思う?だって、ママンのそばにいたいでしょ?」
「そ・・・そうだな。ママン。」
「いやいやいや・・・あのね。河童さん、お母さん、変でしょ!!河童さんもお母さんに釣られないでよね。」
変に照れながら、後ろを向く河童さんにじろりとにらみを入れつつ、話の続きを聞いた。
「それで、どうなったの?狐仙女さん。」
「うん。それは、もう、竜王様がお怒りでね~師匠も覚えてるでしょ~あの時のこと。」
「うむ。そうじゃな、竜王神の強さは、天界をしのぐからのう・・・。雷雨を呼んで、この地域一帯は、えらいことになってしもうてのう。それでも、誰も止められなんだ・・・。それに、あれは、竜神界の次の竜王の嫁になる予定もあったようじゃしな。余計だったのであろうな。」
「そうそう、次の竜王様になる方と婚約してたんだった。竜神界に上がったら、神女になれるってずっと頑張ってたんだもの。それなのに・・・。あんな奴と恋におちるなんて・・・。残念過ぎる。」
「えっ?あんなやつって?康栄さんて、いいやつじゃないの?狐仙女さん・・・。」
「それがね、もう、奥方も子供もたくさんいたのよ・・・。それなのに~ミーちゃんに手を出すなんて・・・。ひどくない?」
皆が目が点になる衝撃の事実だった。
『えー----!!!!マジで?』
こくこく頷いて狐仙女さんは、更に言った。
「そうよ。あいつ!!ミーちゃんを城の奥で、二人きりだとか言って、ずっと一緒だとか囁いて、怪我で弱っているミーちゃんを口説いて迫ってたんだから!!ミーちゃんもさ・・・もともと情が深いあやかしだったし、100年も下界にいたら、少しは人が良いなって思ってしまうこともあるでしょ・・・それに、付け込まれたの!!許せない!!」
それから、少し怒りを帯びつつ狐仙女さんは、更に話を続けてくれた。
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