第7話 見えないけど見える
「ただいま~。なんか、賑やかだけど誰か来てるの?」
兄の蓮がいつもなら、まっすぐ部屋に入ってすぐには出てこないのだが、リビングが騒がしいと感じたらしくひょっこりとリビングに顔を出した。
「あっお帰り。お兄ちゃん。仕事どうだった?」
「おー帰ったか。蓮。どうだ、一緒にビール飲むか?」
「蓮にい、お帰り。」
「あれ?誰もいないじゃん?さっき誰かとしゃべってなかった?おやじ。」
皆、顔を見合わせて、兄の蓮を見た。『見えない!!』
ここに子鬼、あそこのプールに河童さん・・・が見えてない。兄の反応は、教室のみんなと同じだ。本当に見えていないのだ。3人は、『どうする?この状況と』思っていた。
『面倒だな・・・一人だけ見えないなんて』父
『お兄ちゃんの頭は固いのかしら?』母
『まじか~蓮にいだけ見えないなんて・・・困ったな。』私
『どうする?』父・母・私がここで分かった
『頭で会話してるじゃん・・・』私
『あらっほんと』母
『いや~SFっぽいな、ハハハ。』父
蓮だけが、この会話に入れていない為、蓮自身は、なんで3人とも話さないんだろうと思っていた。
「おやじ、なんだよ。急に黙るなよ。」
「えっ、あ~すまんすまん。いや、なんだちょっとだな・・・考え事を・・・。」
父はぽりぽり頭をかいてごまかした。
「へんだな、今日のおやじ。それより、母さん、なんで、夏でもないし小さい子もいないのにプールとか広げてるわけ?」
「ちょっとね・・・。まあ、いろいろとね。」
母は目が泳ぎ始めている。
一人見えないだけでこれだけ厄介なのか?と思う私を尻目に兄は、プールに何か入っているのかと近づいて行こうとしたのを母が止めに入った。
「お兄ちゃん、何にもいないわよ~ちょっと出してみただけだから。」
「出すだけで、水まで入れる?何入れてたんだよ?かあさん。」
「えっだから、河童さん・・・あっ」
「は~?河童?もう、大丈夫?かっぱって・・・。」
その様子をまじまじと見つめる河童は、兄の袖をわざと引いて困らせようとした。
「うわっなんだ、急に水が撥ねた。」
「もう、河童さん悪戯しちゃダメよ・・・見えてないんだから。」
『見えてないのか?こいつ?そうなのか?ママン。』
「そうなのよ~変ね。みんな見えるのにお兄ちゃんだけ・・・。」
『お母さん!!声出てる!!』
『はっ!!』
「あのさ~仕事で疲れてるのにふざけるの止めてくれる?母さん」
「そ、そうね・・・。ほほほほ。」
「その変な笑いもやめて。」
コクコクと頷いてテーブルに戻る母は、話題を変えようとしたがテーブルには、子鬼がいるから、更に大変だった。なぜなら小鬼が兄の席を占領していたからだ。
見えないけどいる子鬼・・・その上に座ろうとする兄。そして、叫ぶ母。
「きゃーーー。子鬼ちゃんがつぶれちゃう!!何とかして!!ゆか、お父さん!!」
その叫び声に、父がさっと子鬼を抱き、私が兄を自分の席へと誘導しようとしたら流石に兄が切れた。
「ったく!!いい加減にしろよ!!家族全員で!!ふざけて!!」
「・・・ふざけているわけじゃ~ね~?」3人は、顔を見合わせ声を揃えて呟いた。
そして、兄を抜きでテレパシーが
『どうする?この状況?』父
『どうしましょう?お父さん、友香。』母
『え~もう、めんどくさいな~。』私
『あっ仙人さんなら何とかならないかしら?』母
『えっ仙人も来てたのか?』父
『あいつ、役に立たないよ~多分』
『そんなことも無いと思うがな~一応、仙人だからのう』仙人
『よく言うよ・・・消えたり出たりするだけで。』私
『ま、そうともいえるがの。』仙人
『あら?』母・・・いつのまにか仙人が会話に加わっているではないか。
「なんだ!お前誰だよ!!いつの間に来たんだ?」
兄が仙人さんを見て、叫んだ!!
「えっ蓮にい・・・このいいかげんな仙人さんは、見えてるの?」
「はーーーあ?せ・ん・に・ん!!?おまえ、可笑しくなったのか?だいたい、みんなで、俺をコケにでもしてるのか?なんか?やったのか?俺が?」
兄が更にヒートアップして、怒りだしそうになったのを察した仙人さんは、兄の前で、まるで電灯の様に出たり消えたりした。
「え?あ?うーーー???なんだ、こいつ???いや?俺の目がおかしいのか?」
「違うよ・・・蓮にい・・・。」
思わずぼやく私。そして、兄は、仙人の周りをぐるぐる回ってみる。そして、あることに気づいた。仙人が登場すると、更に他の者が見えるのだ。そして仙人が消えるとそれも同時に消える。・・・子鬼と河童だ。気づいた兄が叫んだ。
「うわーーー!!おい!なんか違うものも見えるぞ!!小さいのとか・・・か・・・か・・・。」
兄は、河童さんや子鬼を認めたくなかったのだろう。子鬼は、角さえなけりゃ、ちょっと赤い顔の幼児にしか見えない。だが、河童はやはり河童なのだ。
『ごめんよ~蓮にい・・・』ぼやくしかできない私を許してね。
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