第6話 お父さん

昼ごはんを食べた後、しばらく居座った三橋くんは、河童さんと随分仲良くなって、帰り際に、なんだか、約束までしていたが男同士の約束だとかなんだとか言って、何を話したのかは教えてくれなかった。


「じゃあな、河童くん。また、来るからな!!」

「おう!圭太!!また来てくれよ!!」


三橋くんは別れを惜しんで、それこそ、河童さんを引き取ってくれそうな勢いだったので、ちょっと頼んでみようとしたが、察知したのかテレパシー?のせいか、先に断られた。


「赤羽!!連れて帰るのは止めておく。子鬼が可哀そうだしな。それに、仙人もこの家に来てただろ?だから、連れて帰るのは無理だ。」


「ゔゔ・・・心を読んだな三橋くん!!」


「いや、読むまでもなく一人?一匹?くらい連れってってと・・・顔に書いてある。」


しょぼんと頭を垂れる私の肩をポンポンと叩いた三橋くんは、ニッコリ笑って『また、明日来るから』と言って帰っていった。


そうこうしていると、すっかり日も暮れて、母は、河童さんを夕飯の買い物に連れ出そうとしたので、まだ、慣れていない河童さんが『干からびるかもしれない』と脅して止めさせた。


問題は、これから、帰ってくる家族に見えるかどうかだ。母に見えたのだ・・・。父にも兄にも見える気がする・・・。ただ、どうとらえるかだ。驚いて追い出せと言われても困る。ま、母が味方なのでとりあえずは、宥めてくれる?などと安直に考えて父を待つしかなかった。


「ただいま~。さっき、駅の近くで圭太君にあったぞ!!大きくなってて驚いたよ~。」


そんな事を言いながら玄関からリビングへ来た父がまず目にしたのは、子鬼だった。


「お母さん・・・近所の子を預かったのかい?それにしても、服も着ないでパンツイッチョで寒くないのかい?この子は。」


「あら、お父さんお帰りなさい。その子は子鬼ちゃんよ。鬼なの。ふふふ。」


「おにだじょ・・・お、お、おとうじゃん。」


「そうか・・・鬼なのか・・・。じゃ、この角は取れないのかい?」


父は子鬼の角をピコピコと触って少し驚いていた。


「角って暖かいんだな~。」


『えっそこ!?』さっきから父がどう反応するのかを見ていた私は、思わず突っ込みそうになった。そして更に、父の反応は、私を驚かせた。


「おっ?あの・・・子供用プールにいるのは?なんだ?お母さん。」


「あー河童さんよ。子鬼ちゃんと一緒にやって来たのよ。お皿が渇くと大変だから用意してあげたの。寝るのも水の中だからベッドの代わりね。ふふふ。」


「そうか~うちは、賑やかだね。さ、ビールでも飲むか。」


『オーマイガー!なんだ?その安易な受け入れ方は?どうなっている?うちの親!!』

「お父さん!!!なんで、普通なの!!河童だよ?鬼なんだよ?」

「そうだな。河童で鬼だな。うん。まー良いじゃないか。我が家には、ペットもいなかったし、賑やかなのは良いよ。うん。な。友香」


父は、ニコニコして、あまりに普通にするのでこっちがゲンナリしてしまった。

『疲れるのは、私だけかよ!!なんでーーー!!』


元の世界へ帰す方法も考えなくちゃならないのに・・・とソファーでうつぶせになってクッションに顔を埋めて打ちひしがれていると、なんだか、聞き覚えのある声が増えた。


「まあ、まあ、どうぞどうぞ。」

「あ?良いんですか?頂いちゃって?」

「いやいや、今日は、賑やかでうれしいですよ。晩酌のお供までしてもらえる方がいて。ハハハハハ。」


ん?んン( ,,`・ω・´)ンンン?なんだなんだ?

テーブルで何かが起こっているが、もう、考えるのも怖くて振り返るのが嫌になっていた。でもこの声は・・・・・・?やっぱり、そうだよね。さっきいたよね。そして、勝手に消えたよね。


がばっとソファから起き上がり、振り返ると・・・やっぱりいた。仙人!!

出たり消えたり!!電灯みたいな仙人め!!


ドスドス歩いて、仙人さんまで近寄っていこうとすると子鬼が、トコトコと近寄って来てそれを止めに入った。


「ゆか?おこっているじょか?かおがおこっているじょ?どうしたのか?よしよしなのか?」


子鬼が心配そうな顔になっているので、ひょいと抱き上げて、首をふるふる振って笑ってからいった。


「子鬼~怒ってないよ。仙人さんに子鬼がおうちに帰る方法ないか聞くだけだ。」

「しょうなのか?でも、ここもたのしいじょ。ゆか。」

「小鬼は、帰りたくないのか?」

「わからないじょ。ははうえもたぬきちもいるじょ。だいじょうぶだいじょうぶじょ~。」

そうか・・・まだ、少ししかたってないから、遊びに来てるぐらいしか感じないよな~。子鬼にしたら、遠足ぐらいの気持ちだろうしな。河童さんとは違うよな。でも、この先ずっと、このままだと可哀そうだしなあ・・・。いったいどうなるんだろう?そんな考えばかりが頭でグルグル回る。でも、周りは、なる様になるとしか思わない雰囲気でいっぱいだったのは言うまでもない。


そして、兄が帰宅した。







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