第4話 仙人ふたたび
私の袖を引っ張って、行こう行こうと呼んでいた子鬼は、何かに気づいたようにトコトコ歩いて窓に戻って行った。子鬼は、下をのぞいて何かを言っていたが、私たちは、未だ現実逃避中だ。
「ゆか~せんにんきたじょ~。たぬきち~。たぬきち~。」
子鬼が下の方に向かって一生懸命声を掛けていた。窓の外は、次第に景色が変わり光はじめて、子鬼の声と共に窓の向こうに現れたのは、あのへんてこな葉っぱの冠をかぶったイケメンだった。
その様子に先に気づいた三橋くんが私を呼ぶ。
『おい!!赤羽、窓!!窓!!』
『もう~呼ばないでよーーー。たぬきちが~!!どうしたらいいの~。』
私が無視して、突っ伏したままなので三橋くんは叫んだ。
『いや、だから、窓にたぬきと変な奴が増えたぞ!!しかも、なんか外の様子も変だから見てみろ!!』
「へんなやつじゃないじょ~。」
『へ?変なやつって…?』
ゆっくりと顔を上げて・・・首をひねり窓に目をやると、あの時の無責任発言しかしなかった仙人が、たぬきちを抱っこして立っていた・・・否、浮かんでいたのである。
『おお~~~ナイス仙人!!たぬきち!!生きてるーーー。』
嬉しさのあまり、もう少しで窓の外に向かって飛びつきそうになったが・・・ここは、3階!!確実に・・・落ちる。そして、この仙人は、多分、いや・・・絶対に助けてくれない。そして、あの異世界での無責任な仙人の言動が私の中に蘇った。
(友香の頭の中でフラッシュバック中・・・・・・loading(滝つぼ))
私・・・『異世界なんだから何でもありでしょ?異世界小説には、そう書いてるし、河童と一緒に水の中でも生活できるかもしれないじゃん。』
仙人・・・『そうじゃな・・・迷い人。何でもありなのか?試してみたらどうじゃ?ふぉふぉふぉ。面白そうじゃ~。ほれ、水の中へ行ってみろ。』
『仙人め・・・焚きつけといて放置したから、河童さんと子鬼が来ちゃったんだよーーー!!』と・・・ちょっと、思い出して怒りが湧いて来た。
『ちょっとーーー。仙人さん迎えに来てあげたんでしょうね?河童さんたちを・・・。』
仙人は、ニコニコ笑って、口をパクパクさせるだけで、たぬきちを子鬼に渡すと手を振って消えていった。
『えっ何?なんで、何にもしゃべらず消えてくのーーーー!!仙人さーーーーん!!待ってーーー!!』
私の悲痛の叫びを聞いていた三橋くんが驚いて聞いて来た。
『おい!今度は仙人かよ?あれが?』
『そうだよ。河童さんが言ってた。仙界1丁目の仙人だって。』
『ん?な・・・なんて?仙界?それに、河童って言ったよな。』
『言ったよ。河童さんが家にいるんだから。』
『お前んち、河童までいるのか?ダメだ・・・ついていけね~。』
見えることに驚きながらも子鬼を受け入れていた三橋くんも仙人やら河童さんの話で、ちょっと、放心し始めていた。
そんな三橋くんを他所に私は、更に気づいたことを言う。
『ねえ・・・それよりさ、今気づいたんだけど・・・さっきから私たちって、声出さずに話してるよね?だって、こんだけ話続けてしかも叫んでたら、さっきみたいに担任も怒りにくるはずじゃん。』
三橋くんは、はっとして、口を手で押さえた。
『こ・・・・これって、テレパシーとかいうやつなのか?おい!赤羽!!そうなるのか?すっげ~なんか興奮してきたわ!!な?赤羽。』
この事実にかなり興奮状態の三橋くんだったが、私は今、落ち着いて気付いたもっとも大事なことを気付かせることにした。
『いや、あのさ、三橋くん・・・テレパシーは、置いといて・・・今気づいたことあるから言うね。まあまあ、驚くよ。』
『んだよ、テレパシーですっげ~驚いてるのに置いておけるわけないだろ~?まじで、テレパシーってあんだって分かったんだからさ・・・。赤羽、テスト問題読んでみろよ・・・答えとかも言えるんだぜ。この状況!!まじ。すげーじゃん。』
三橋くんは更にヒートアップして話続けようとするので、私は、そのテストの話をしてあげた。
『いや、だから、今、答え教えあおうと提案されている・・・そのテスト終わっちゃうかと思われる。』
その時だった担任がテストの残り時間の声掛けをした。
「はい。ラスト15分。終わった者は、教室から出ていいぞ。次の教科は選択だから、取ってないやつは、帰っても良いぞ。」
とにかく、埋めれるとこは、埋める!!テストの鉄則だが、15分・・・。答え教えあうとか言ってる場合か?・・・そんな余裕があるわけもない。そもそも、カンニングだし・・・。
『あ~せめて赤点だけは・・・。逃れてくれ…。』私
『巻き添えだけはならん!!再テには、ならーーーん。』三橋くん
そんな、私たちに無情にも鐘は鳴る。キーンコーンカーンコーン・・・・。
『つんだ・・・。』私
『いや、何とかなるだろう・・・。』三橋くん
そんなこんなで、テスト時間は終わりを告げて、結果は想像の通りで後日、二人で再テストを受けたのは言うまでもない。
「たぬきち~おちちゃだめだじょ~」
「子鬼、落としたのは、子鬼だぞ・・・。」
「そうなのか?」
「そうだよ。」
そう言いながら、今度は、自転車の籠に子鬼を乗っけて家路を急ぐ私だった。
そして、なぜか、三橋くんもついてきていた・・・。
『ついていくだろ~こんな状況知ってしまったら』
心でぼやく三橋くんだったが、その心の声はテレパシーのせいでだだ洩れだった。
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