第3話 その頃、河童さん
その頃、河童さんは、子鬼が私のカバンに入って付いて行ってしまったことで、部屋に取り残される羽目になった。
「くそーーー!!子鬼のやつ俺を置いていくなんて・・・!!くそーーー。」
「河童さん?河童さん?もしもーし・・・。」
河童が怒って、話を聞いてくれそうにないので、母は、河童の目の前まで顔を近づけた。
「うわっ!!」
ドシンッと尻もちをつく河童を母は、フワッと抱き上げた。
(ちなみに河童さんの身長が120センチほどに対して母は、高身長で170センチもある。)
「あら、意外と軽いわね。お皿の分だけ重いのかと思ったわ。フフフ。それに、そんな悪い言葉遣いは駄目よ~友香にもいつも言ってるんだけど・・・。お腹すいてない?朝ごはん、食べましょうね。河童さん。」
そう言うと母は、河童を席に着かせて、せっせと味噌汁などを運び始めた。
クンクン・・・『いい匂いだ。初めて、嗅ぐ匂いだけどこれには毒は、無さそうだ…』河童は、みそ汁の匂いでさっきの怒りを忘れて早く食べたくて仕方ない。
河童の目の前に、ご飯、みそ汁、卵焼き、と小さな魚が並んでいく。それをちらちら見ながら母の行動を盗み見て食べてしまおうと手を出したその時、『ペチッ』と手を叩かれた。
「駄目よ!!河童さん。いただきますって言わなくちゃ。それに、お箸か・・・使えないならフォークで食べるのよ。」
「な・・・なんだ?はし?ふぉ~く?それはなんだ。
「まぁ~。ひとって私の事かしら?仕方ないわね・・・ひとって言うのは、合ってるけど・・・そう呼ばれるのは、ちょっと嫌ね~。ママンで良いわ!!河童さん。私の事をママンと呼んでちょうだい。」
河童は、きょとんとして、母を見た後、コクリと頷いた。そんな事より、目の前の食べ物を早く食べてみたいと思うほうが先だったのだ。
「じゃ、いただきます。」
「お、おう。い、た、だき、ます。」
「めしあがれ。」
母は、そう言うと河童に箸ではなくフォークを渡し、ニコニコしながら食べ方を教えた。
「そうそう。突き刺していいから・・・。」
「こ、こうか?ママン?」
「そうそうよ。初めてにしては、上手じゃない。フフフ。」
河童は、フォークを使って次々と卵焼きを食べていく。もぎゅももぐもぐ・・・
「うまい!うまいな・・・。初めての味だぞ!ママン。」
河童は、目を潤ませながら嬉しそうに食べるので母は、ご満悦だった。
「うふふ。ありがと。ところで、河童さん。」
「な、なんだ?」
「お名前は、あるの?」
「そ、それは、なんだ?」
「ほら、さっき、ひとじゃなくてママンって呼んでって言ったでしょ。あんな感じで呼ぶときに使うようなものよ。いつも、河童さんなの?」
「そ、そうだ。河童だからな。」
母は、変に納得はしたものの河童に名前を付けたくなったらしく、美味しそうにご飯をほおばる河童を眺めて名前を付けようと『可愛い名前が良いかしら??それとも、かっこいいほうが・・・。』などと考えていた。
そんな母を他所に、河童は初めての味を堪能し『こんな美味いもんがあるなら、こっちの暮らしも悪くないかもな』なんて、思っていた。そして、一通り食べ終えたころだった。急に力を無くして、コテンとテーブルに頭を落とす。皿が渇いてしまったのだ。河童は、こちらに来てから、皿を濡らすのをすっかり忘れていたのである・・・。
「きゃ~!!河童さん!!どうしちゃったの?」
母が、河童をぶんぶん振るので河童は、余計に気分が悪くなった。
「み・・・みず・・・。さ、さ、さら。」
『はっ!!』っと気付いた母が河童の皿に水をかけた。シュワーっと湯気が出て、一気に更に水が吸い込まれる。まるでスポンジだ。
「ごめんなさいね。気づいてあげられなくて・・・。」
母は、オロオロしながら河童を抱っこした。
「い、生き返った~。」
「良かった。友香に怒られるとこだったわ。それに、考えなくちゃね~干からびちゃうわよね。この調子だと・・・。」
不意に母は、妙なことを思いついたらしく、河童を下ろすとどこかへ走っていった。河童は、河童で、うまい御馳走も捨てがたいが、やっぱり、直ぐに川に飛び込める方が良いなと思って元の世界へ帰りたくなった。
母が何かを手にパタパタと河童のもとに戻ってきた。
「河童さん!!いいものを作って来たわよ!!」
ニッコリと笑って、手の中のものを河童に見せた。
それは、小さなボトルで水が入っていて少しづつ出るようだ。
「これを頭に乗せとけば、乾きすぎて倒れたりしないわよ~。うんうん。」
母はそのボトルに紐を取り付け、河童の頭にのっけて、顎で紐を結んだ。
(このボトル・・・水の流れるある場所にあったものをリメイクしてきたらしい。そう、〇ルーレット置くだけだ。普通に見て・・・かなり滑稽である。)
河童は、案外このボトルが気に入ったようで、しきりに頭を撫でている。その様子を見ながら、母はご満悦で河童を連れて出かける事も考え始めたようだった。
「あとは、この水がどれくらい持つかよね?水筒も用意しておいた方が良さそうよね。後から、一緒に買い物も行きたいしーーーうーーーん。」
(母には、見えるとか見えないの観点はないらしい・・・。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます