第5話 運命
「で、ニヤの黒髪はどんな力使えるの?」
「オイラたちは2人とも雷属性だぜー!」
とミオとリオが聞いてきた。
「暗黒属性だよ。」
「暗黒属性!」
「かっこいー!」
思わず普通に答えたが、不思議と2人と話していると、暗黒属性なんて気にならなかった。
深い森を抜けると、そこは王国では見たことが無い一面の砂漠地帯だった。
「この先がエデンです。」
とリキが教えてくれた。
「この度のハクナ様の暗殺の件以降、宮殿には限られた者しかは入れなくなりました。」
「ハクナ様を毒殺するなんて!」
「そんな不届き者、オイラたちで見つけてやる!」
ビークはオアシスの中心にある、大きな宮殿に向かって飛んでいた。
それは半分は大きな古い木であると言ってもいいくらい、宮殿は木と組み合わさって建っていた。
樹齢は何千年になるだろう、とても立派な大楠の木だった。ビークは、その大楠の大ぶりな枝の一つにとまった。
一行はビークから降り、そのまま天井の高い廊下を通り大楠の木の中心部にある大きな部屋へと向かった。
その部屋は、そこだけ大楠に穴が開いているように、木の部分がえぐれていた。
部屋の扉を閉めると、
「さあ、もう安心ですぞ。」
とリキが言った。
ニヤは初めて見る大楠の内部のえぐれた穴を見ていると、フラフラしてきた。
旅の疲れか?足元がよく見えない。
それでいて、この大楠を見ていると身体の力を吸い取られるようだ。
「ニヤ?どしたの?ニヤ?」
「オイラの声が聞こえるかー?ニヤー?」
ニヤはそのまま意識を失った。
ニヤは高熱を出してうなされていた。
ある夢は、向こうにリズやサーヤ、父のアルモストや母のフローリヤが見えるのに、呼んでも聞こえず、近寄ろうとしても透明な壁があって触れられないというものだった。
またある夢は、真っ暗な空間で自分も髪の毛からじわじわ黒に侵食されていく。そして最後には何もなくなる。自分はここにいるのに。
暗黒魔法を放出して、加減が分からず暴走する夢もあった。乳母に暗黒魔法の魔球で傷を負わせた日のことも夢に出てきた。
王宮の貴族たちにヒソヒソ噂されている夢もあった。
ダイナス叔父に冷たく悪魔と呼ばれる夢もあった。
ニヤが意識を失って高熱を出して数日経ったある日、不思議な少女が夢に出てきた。
白銀色の長い髪の毛が波打ち、真っ白な肌に金色の目をした顔立ちの整った美しい少女で、背中には立派な白い翼が生えていた。
ああ、まるで天使のようだ、あの髪は何属性なのだろうとぼんやり考えていると、少女はその白い翼で浮き、
「お前がニヤか。ここに来なければこんな目にも遭わないで済んだものを。」
と独り言のように呟き、両手を合わせてその中に力を込めた。
ぱあぁぁぁー
少女の手の中にエナジーボールのようなものができた。そして少女がそれをそっとニヤの胸の辺りに当てると、エナジーボールはどんどん膨らみ温かくなっていった。
ニヤがエナジーボールにすっぽりと包まれ、その明るさで世界が包み込まれた時、突然、ニヤの背中が熱くなった。
背中がかぁぁっとして熱い!
熱くて熱くて耐えられない!!
何かに身体を乗っ取られるような、自分が自分で無くなるような感覚に陥った。
これは昔に味わったことのある何か・・・
・・・そう、暗黒魔球を乳母に向かって放った夜に味わった何かに似ていた。
暗黒属性魔法に身体を乗っ取られるのは嫌だ!
ニヤは封印の儀式を済ませて来れなかったことを悔やんだ。
ここでまた身体を乗っ取られたら、今度はどうなってしまうか分からない。
と、ニヤの様子をじっと見ていた少女が
「お前はなぜエデンにやってきたのだ?」
と問いかけてきた。
王宮にいられなくなったから、背中に羽毛が生えてきたからだ。
でも、なぜエデンへ来ようと決めたのだろう?
鳥人類がいるからだ。自分の背中の羽毛も鳥人類の何かだと思ったからだ。
仲間がいるかもしれないと思ったからだ。
この少女は背中に翼が生えている。
仲間かもしれない・・・
その時、ニヤはフッと何かから解き放たれる解放感を味わった。
いつの間にか背中の熱さは薄らいでいた。
ニヤの背中で何かがぬるりと動いた。
ちょうど両方の肩甲骨の辺りだ。
それはヌルヌルとしていて、おおきな重い何かだった。
ニヤの背中はそれに包まれて、温かくなった。
ニヤにはもう全て分かっていた。
ニヤの背中には、真っ黒な翼が生えていた。
そして、ニヤは目を覚ました。
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