第4話 出会い
王宮を出たニヤは、行く先に迷っていた。
このまま王国に留まっていては、いつか見つかってしまう。
父アルモストの有能さを思い、なるべく早く王国を出ようと決めた。
やはり生えてきたのは羽毛だし、生えてきた場所は鳥人類のアザと似ている肩甲骨辺り。鳥人類たちの楽園、エデンに行って聞き込みをしてみよう。行き先はエデンに決めた。
地図で見る限り、エデンへ行くには王国の南にある大きく深い森を通る必要があった。
準備する時間がほとんど無かったため、最低限の身の回りの物しか持っていないが、仕方がない。入り組んだ森の道を歩いて行く。
ずいぶん歩いたが、誰かが追ってくる様子も無く、どんどん森の深部に入り道が険しくなっていく。今何時頃だろう?森が深く空が見えない。
道が険しく歩きにくいと、そちらに意識が行き今の自分の境遇を考える余裕が無いので楽だった。
今まで、王宮をほとんど出たことがない。
心細い。こんなことで大丈夫なんだろうか。
当てもなく歩いていると、ポッカリと木のない場所に出た。
今まで木々の葉が重なって全く見えなかった空が見える。
明け方頃だろうか。少し先に小川の流れる音もする。
ここで少し休もう。
水を汲みに行って少し飲み、持ってきた食料を少しだけ食べた。
だいぶ気持ちが楽になった。
「ふぅ。」
今頃王宮は大変なことになっているだろうな。
他人事のようにそう思った。
王宮には、黒髪のニヤ王子はもういない。そして、もうここには、ニヤの黒い髪を呪われている物を見るようにジロジロ見る者も、アルモストのご機嫌とりで髪の毛を見えない物のように扱う嫌な貴族もいない。
ニヤは黒髪を特別扱いされるのにうんざりしていた。もううんざりだ。そう思って、真上にポッカリと開いた空を見上げた。
すると、ぱあぁぁーと空が光った。
何だろう?王宮の祝いの花火か?
いや、おかしい。王宮からはかなり歩いたはずだし、何より僕がこんなところにいるのに、こんな時間に祝いの花火など。
ニヤは立ち上がって目を凝らして空を見つめた。
ひゅうぅぅぅー!!
ちょうどニヤが見ていた空の辺りから、ニヤに向かって何か光るものが落ちてきた。
「なんだ?!」
ニヤは必死にそれを胸で受け止めた。
そして腕の中にあるその光る物体をよく見た。
それは、タマゴだった。
「タマゴだ!こんなところに生まれては、育ててくれる者もいないだろうに!」
ニヤは思わず天を仰いだ。
タマゴが空から降ってくるなんて話聞いたことが無い。タマゴをよく見るため、ニヤはその場に座り、タマゴを膝に乗せた。
タマゴはまだ光っている。
ニヤが見ているとタマゴは、パシッパシッパシッと音をたてながら殻が割れてきた。
「生まれるのか?」
ニヤは固唾を飲んで見守っていると、タマゴから赤ん坊が生まれてきた。
灰色の髪の毛だ。ニヤがタマゴの殻を取り除いてやり、荷物から服を出しかけてやると、赤ん坊は、高い声で
「待ち侘びたぞ、ニヤ。」
と言った。
喋った!今生まれた赤ん坊が喋った!とニヤが驚いていると、
「わしは鳥人類の長、ハクナじゃよ。」
「ハクナ?あの毒殺された?」
「そうじゃよ、もうその話が噂になっておるのか?」
ハクナは前世の記憶があるというが、こんな赤ん坊の時から話せるとは。
すると、見慣れない服装の男が森の中から現れた。敵か?!と身構えると、
「ハクナ様!」
「おお、リキ、久しいのう。」
「ハクナ様、ご無事で何よりです!」
ニヤが怪訝そうに見ていると、
「ニヤ、大丈夫じゃ、わしの腹心のリキと言うものじゃ。」
「ニヤ殿、運命の子ですね・・・」
とリキが何か言いかけると、突然空が真っ暗になり、上から
「ハクナ様ー!」
「ご無事ですかー?」
と子供の声が聞こえた。
そして、大きな鳥がスーーッと地面に降り立ち、その背中から多分双子だろう、5歳くらいのそっくりな金髪の男の子が2人降りてきた。
「おお、ミオ、リオ、無事じゃったか。」
「オイラたちは大丈夫ですよー」
「ハクナ様、この人誰ー?」
「うむ、運命の子じゃ。名をニヤという。」
「運命の子?でも、運命の子にはモナ様が・・・」
「ここで話していても始まらん。一旦宮殿へ帰ろう。ニヤも来るじゃろう?」
訳がわからないままニヤが頷くと、双子は、
「じゃあ、みんな、オイラたちのビークに乗ってくれー!」
「オイラたちの宮殿へ帰るぞー!」
とそれぞれ大きな鳥の背中を指差す。
ニヤはこんな大きな動物は初めてだったが、ビークはおとなしく、双子に慣れていた。
「みんな乗ったな?」
「じゃあ、宮殿へしゅっぱーつ!」
ビークが2人の掛け声と共にふわりと浮き上がった。
バサッバサッバサッ!!
5人はエデンに向かって飛び立った。
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