第4話
そうして全てを話し終えると、シモンは力なく笑った。
「天罰ですよ。あんな、人のことをクズ呼ばわりするようなやつ、死んで当然だ」
私はその発言についてコメントを差し控えた。
死んだエインストのことを助けることは誰にもできない。
しかし、今シモンを助けられるのは私しかいなかった。
「シモンさん。私が思うに、今回の事件には二通りの解釈があります。ひとつは、あなたが隷獣のガナムに目で命令を伝え、エインストを殺害したというもの。この場合、あなたは死罪になる可能性が高いが、ガナムは無実なのでギルドが保護することになります」
ピクリと、シモンの目蓋が動く。
しかし私はそれには構わず、言葉を続ける。
「もうひとつは、ガナムが暴走しエインストに襲い掛かってしまった事故というもの。不運なことにあなたは直前にエインストから暴力を受けており、それを制止することができなかった」
シモンは俯いたまま考え込んでいた。
彼もバカでなければ私の言ったことが理解できただろう。
すなわち、シモンかガナムか、助けられるのはどちらか一方だ、ということを。
「あいつが悪いんだ。先に突き飛ばしたのも、蹴ったのもあいつだ。僕もガナムも自分の身を守るために戦っただけなのに……」
「シモンさん、残念ですがエインストはすでに立ち去ろうとしていたんです、気持ちは分かりますが正当防衛とは言えません」
「僕の……」
耐えかねたようにシモンは泣きじゃくった。
ぼろぼろと涙を流しながら、彼は言葉を続ける。
「僕の何がいけなかったんだ? どうすればよかったっていうんだ? なあ、教えてくれよ」
「あなたの痛みは分かります。しかし、このままだと全てを失ってしまう」
「……僕は死ぬのか?」
「それを決めることが、今ならできます。どちらの解釈が正しいのか、証拠なんて存在しない。あなたの証言が全てなんです」
彼は再び泣いた。
泣き続け、やがて涙も枯れたころ、濡れた顔を自ら拭いシモンは口を開いた。
***************
それから7年が経ち、シモンは冒険者をやめて仕事と家庭を手に入れた。
私はたまに彼の家に招かれ、彼の家族と食事をともにするという関係を続けている。
貧しいながらも幸せな生活に満足していると彼は言い、見せつけるように子ども達を抱き寄せると、頬にキスをして笑った。
その家でガラムの話題が出たことは一度もない。
禁句 しらは。 @badehori
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