第3話 黒い瞳の奥



 深く黒い瞳を持つ白髪の女性が流暢な日本語で語り出した。


「皆様もご存じの通り、私の国では数年前に戦争が始まり、私はこの国に逃れてきました」


 その声に一人の男性が、

「うーん・・・。」

 と唸り声を漏らした。


老女は、その男の方に向き直り目礼をすると、再び話し出した。


「夫は既に亡くなっており、三人の子供達は母国に残っております。一番上の長女は彼女の夫であり軍医である医師とともに看護師として戦地に赴いております。二番目の次女は、あろうことか防衛軍に所属し、祖国のために戦っております。そして三番目の長男は、今は外交官として、この憎むべき戦争を止めようとあらゆる国に呼びかけております」


 ここで彼女は頭を少し下げて、一息つくと、決心したかのように再び話しだした。

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