第5話 「伊豆のセブ島」海外や沖縄にも負けない場所!?

 夏になり、気温もかなり高くなって汗ばむ季節。

「早紀、海外や沖縄に負けないくらい綺麗なビーチに行ってみないか?」

「えーそんなのあるの? どこ?」

「伊豆の『ヒリゾ浜』って言う所だよ」


 ヒリゾ浜は本州でナンバーワンの透明度を誇る海岸で、別名「伊豆のセブ島」と呼ばれている。その独特の地理的環境から、ありのままの自然が残されている。


 普段は立入禁止で、7月から9月の間だけ渡し船で渡れるようになっている。


「船は私苦手だな」

 早紀は船酔いしやすい体質である。

「大丈夫だよ。船といっても5分くらいだから」

「それなら平気かも」


「いろんなルートがあるけど、東名高速使わずに海沿いのルートで行こう。その方が景色も楽しめるから」

「そうだね」


「厚木から小田原厚木道路で小田原まで行って、それから真鶴新道に乗り、更に熱海ビーチライン・国道135号線で東伊豆から下田、国道136号線のルートにしよう」

「……って言われても良く分かんない。私、道知らないんだ」

「海が良く見えるルートだから楽しみにしててね」


 前回のアクアラインドライブで、リーフが早紀の身体にやさしい事を確かめた翔は、リーフの購入に踏み切った。


 この車を走らせ、夏の小さな旅がスタートする……


 伊豆になぜこのようなキレイな場所が出来たのだろうか。ある意味で奇跡といってもいい。半島の先端で切り立った崖に覆われている事、国立公園だから開発がされていない事、川の水が流れ込んでこない事、黒潮の通り道となっている事等、これらが相まって他にはない環境を作り出した。



「ねえ……どうかな? この水着…」と、早紀が翔に尋ねた。


 早紀はワンピースの水着を着ていた。競泳選手のようだ。

「早紀の水着姿初めて見た。あまりエロくないね」


「ひっど~い! 本当はセクシーなビキニを着て翔を悩殺したかったけど、私痩せてるからあまり似合わないんだ」


「ビキニもいいけどさ、露出が露骨過ぎてかえってそそらない。こっちの方が素敵だよ」

「本当?」


 おせじの下手な翔は直球でほめて、自分の発した言葉に照れている。

「翔、顔が真っ赤だよ!」

「しょうがないだろ」

 翔はそう言って、早紀の手を繋いだまま海に向かって飛び込んだ。


「やはり海っていいね。夏は海に限る」

「今日は来て良かったね」


 早紀はいつになくはしゃいでいる。

 翔はそれを近くで見つめていた。


 ここの海は、数メートル下の底の小石までクッキリ見える程の透明度だ。

「こんな海岸見た事ない。すごいんだね」

「だろ。わざわざ海外や沖縄にいかなくてもいいでしょ」


「まるで空に浮いているみたい」

「本当だね」

「気持ちいい」

 早紀の表情に見とれる翔。


「ずっとここにいたい」

「海もキレイだけど、早紀、君はもっとキレイだ」

「もう~恥ずかしいよー」



 水がキレイなだけではない。ここはシュノーケリングに最適な場所なのだ。サンゴが群生し、色々な回遊魚が泳いでいる。


 抜群の透明度を誇るこの海の中を知らないなんてもったいない。


 シュノーケリングなら、ダイビングのように大掛かりな器材やライセンスもいらない。気軽に海の中を覗く事が出来る。水中メガネをつけて、ちょっと顔を海につけてみるだけで、そこにはまったくの異世界が広がっているのだ。


「サンゴがすごくキレイ」

「イソギンチャクもいる。もちろんクマノミもね」

「私達みたい」

「そうだね。ウミウシとかエビが見られる時もあるよ」


「でも有害な生きものもいるから注意してね。ゴンズイとかオコゼはひれの毒針に刺されたら大変だし、ヒョウモンダコに噛まれたら死ぬ事もあるんだ」

「知ってるよ。翔忘れてるでしょ。私海の生きものには詳しいんだよ」

「そうだったね。クマノミの話ちゃんと覚えてるよ」


「ヒョウモンダコってすごくかわいいのに、猛毒があるんだよね」

「そうそう。手のひらサイズの大きさ」


 中を覗くと魚の群れが通り過ぎて行く。

「うわーすごい大群だ。あれなんだろうね」

「スズメダイかな」


「なかなか見られないけど、エイとかウミガメも時々現れるらしいよ」

「ウミガメは翔の方が詳しいよね。前に産卵の話してたもんね」

「そんな事覚えてるんだ」



 翔と早紀は、その後予約したホテルへとチェックインした。

 部屋の中はとても広くて、部屋からの景色も最高。これなら夜景も観られる。

「うわっ、すごくキレイ……!」


「いい景色だね」

「うん!」


(ここに来て本当に良かった。時間が経つのもあっという間だ)

「早紀」

 早紀は、名前を呼ばれて振り返る。


 翔から軽くキス。

「愛してるよ、早紀」

「私も」


「早紀、夕飯食べる前に風呂に入ろっか?」

「そうだね」


 翔と早紀はまず風呂に入った。二人でのんびりと外の露天風呂に入った。


「早紀、気持ちいいね」

「うん。すごく気持ちいい」


 こうして二人で外の露天風呂に入るなんて、思ってもなかった。だけどとても気持ちがいい。

 そしてお互いに身体を密着させ、その温もりを感じる。


「あっ、ちょっと翔、やめ……」

(翔に抱きしめられるととても幸せ。でもすごく恥ずかしい)

「早紀の肌はきめ細かくてすべすべ。さわってると気持ちいい」

「そう?」


「ねぇ、ここで見せっこしよっか」

「えっ」

「いつもと違う感じがいいと思わない?」


「もう~やだ!」

「またまた」

 いつものように、二人だけの方法で愛を確かめ合う二人。


 縁がないと思っていた新婚旅行。でも、翔のイキな計らいでこうして旅行出来た事が本当に嬉しい。

 翔と早紀は、新婚旅行なんてきっと無理だと思っていたから。

「翔、本当にありがとう」

「どういたしまして」

 翔は早紀の手を握ったまま、じっと見つめる。


「翔、新婚旅行に連れて来てくれてすごく嬉しいよ」

「こちらこそ。もちろん僕だって来たかったから」


 早紀は思わず泣きそうになる。

「翔、私ね……」

「何?」


「私本当に幸せだよ。翔とこうして夫婦になれた事。新婚旅行に来れた事。私こんなに幸せになっていいのかな」

「いいにきまってるじゃん。僕も幸せだ」

「翔、愛してるよ。これからもずっとずっと一緒にいようね」


 二人は、共に喜びも哀しみもすべて分かち合っていく事を決意していた。

「早紀……」

 翔は、早紀の手を握って目をジッと見つめながら言った。


「僕と結婚してくれて本当にありがとう」

「ああ……これからもずっと一緒にいたい」

 早紀の目から自然と涙がこぼれた。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 もし、翔と早紀夫婦が「うらやましいぞチクショー」なんて感じられた方は、ぜひ★評価や♡評価とフォローをお願いします。



 次から第5章に入ります。第1話は、翔と早紀が子作りにチャレンジします。しかしこの2人はセックスレス(?)カップルです。いったいどうするのでしょうか? お楽しみに!

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