第2話 不治の病・イクイク病の恐怖 ※ウツ展開ですが、ちゃんと救いがあります

 早紀にとっては何もしなくても絶頂に達する事が生活の一部と化していた。本当にどこでも絶頂に達するのだ。健康な人から見ればうらやましい話かもしれないが、とても恥ずかしい事である。


 だんだんと人前で絶頂を感じた事を隠すのは上手くなった。まさか健康な時に、人前でオナニーする事に慣れていた事がこんな形で役に立つとは、早紀自身も考えてもみなかった事である。


 しかし、さすがの早紀も上手く隠せない事態が起こった。大好きな英人と話している時には、普段よりも激しく達してしまうのだ。


 英人と話をしている時に、突然、早紀は快感を感じ始めた。このままではまずいと感じた早紀は、彼から離れようとした。しかし、英人はなかなか早紀から離れようとしなかった。英人も早紀の事が好きだったからだ。


 結局、早紀は英人の目の前でイッてしまった。今までの人生で一番恥ずかしい事だった。


 大好きな英人にとてもエッチなため息を聞かれ、恍惚の表情を見られてしまった。


 それ以来、早紀はあまりの恥ずかしさに英人と上手く話せなくなり、交換日記もだんだん頻度が下がった。


 こうして早紀の初恋は終りを告げたのだ。


 PSASイクイク病にかかってからというもの、早紀はもう快感を楽しむ事は出来なくなっていたが、更に悲しい事に恋を楽しむ事も出来なくなりつつあった。


 健康な人ならば、生きる上で最も楽しい瞬間であろう絶頂感が原因で、生きるのが嫌になるとはなんという皮肉であろうか。


 その後、中学を卒業し高校生へ。高校時代は女子校だった早紀は、男の人と知り合う事もわずかで、恋に発展する事もなかった。


 この頃は比較的病気の症状は軽くなり、小康状態となった。


 このまま治癒するのかと一時は考えていた。


 高校卒業後、早紀は地元のスーパーに就職した。


 しかし、社会人になってからは緊張を強いられたからかどうか、再びPSASの症状がぶり返してきた。かなり精神的な事が症状に影響を与えるようだ。今度は職場で中学時代の授業中や登下校時と同じ問題に遭遇した。


 再び日常的に絶頂を感じるようになった。


 また、男女交際は困難を極めた。


 オーガズムは女性の表情を魅力的にする。そのため早紀は職場でかなり男性にモテた。自分が気に入った男性から食事に誘って来るという事も良くあった。その日のうちにベッドインする事もあった。


 当初は男の方も早紀の感じやすさが気に入って、夜の生活も充実し、順調に関係を深めていく。


 しかし、徐々に男は負担に耐えられなくなる。なにせ早紀は何度達しても満足できず、相手の男が体力の限界に達した後も、「もっと」と求めてくるからである。


 ついに耐えられなくなり、別れを告げられる。

「ゴメン早紀。もう君が求めてきても応えられない。別れよう」


 早紀は身体がうずいて仕方がないという状態を緩和させるにはマスターベーションをする他なく、その度に後ろめたい気持ちになっていた。


 性的興奮を取り除く事が出来たのは、何度も自慰行為をする事だけだったが、数分後には、再び抑えがたい欲望に襲われるという事を繰り返した。


 職場でもこの状況に耐えながら仕事をする事に疲れ、早紀はついにうつ病まで発症してしまった。


 こうなるともう仕事を続ける事は出来ない。早紀はスーパーを退職し、引きこもりのような生活に入った。


 部屋で親に悟られないように自慰に耽る事によってのみ、PSASの症状を緩和する事が出来るのだ。


 そして昨年、早紀はインターネットでPSASの事を詳しく知った。その権威である鷺沼さぎぬま医師に助けを求め、PSASであると診断された。

「今のところ治療方法はありません。症状を緩和させるのみです」


 やはりネットで調べた通り、PSASは現代医学では完治する事が不可能な、不治の病だったのである。

(こんな毎日はもう嫌。いっそのこと死のうか)


 早紀は自殺を考える程思いつめていた。


 そのような中で、早紀は偶然インターネットで翔のサイトを知る事になった。翔と知り合う事で一度は自殺まで考えた自分の人生に、一筋の光を見出す事になる。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 もし、早紀の病気が不憫だと思いましたら、ぜひ★評価や♡評価とフォローをお願いします。



 次から第4章に入ります。再び翔と早紀のカップルの話に戻ります。第1話ではまたもや2人に思いもよらないピンチが。いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!

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