第3話 突然の別れ ※ウツ展開ですが、後で1000倍返しあります

 初体験後、さすがにもう美紅は痛がる事はなくなったが、どうもあまりセックスで気持ち良くなる事がないみたいだ。


「私、中って全然感じないみたい」

「そしたら口でしてあげよっか」

「お願い」


 翔はその舌で美紅の最も敏感な突起を……

 いくら翔ががんばっても、美紅は表情も息遣いもいま一つであった。

「う~ん。なんかツボがはずれちゃってるっていうか……」


「それって気持ちよくないって事?」

「そういう事になるかな」

「ゴメン、俺下手なのかな?」


「そんな事ないよ。人の感覚なんて分からなくて当然だから。ちょっといじり方にコツがあるんだよね。自分でした方が気持ちいい。やっぱり一人エッチの見せっこしようよ」

「美紅がそう言うなら」


 美紅とセックスしたものの、お互いに見せっこの方がいいという結論に達する事になった。



 翔は少し心配になって、歳の離れた姉の杏奈に相談してみた。

「姉ちゃん、僕の友だちの話なんだけど、彼女とセックスしてなくて、ひとりエッチの見せっこばっかりしてるんだって。どう思う?」


 翔もさすがに自分の事だとは言えなかった。

「いいんじゃない。妊娠しないし」

「そうかな」


「でもあまりひとりエッチばかりしてると、セックス出来なくなるから気を付けるように言ってあげな」

「え~っ! 本当に?」

「そうだよ」



 更に悪友の三木たくみと電話で話す。

「匠さー、女の子とオナニーの見せっこってした事ある?」

「ああ、あるよ。前の彼女が大好きで良く一緒にしてた。でも俺はあまり好きじゃない。断然セックスの方がいいな」


「そうなんだ。僕はセックスより気に入ってしまって。幼馴染の娘、美紅って言うんだけど、見せっこが大好きでさ、僕も好きになった」

「翔らしいな。お前女のアソコ見るの大好きみたいだからな」

「そうかもね」


「でも気を付けた方がいいぞ。あまりオナニーばっかりしてるとセックス出来なくなるから」

「えーそうなのか?」


 杏奈の言う事と匠の言う事が一致していたのは偶然ではなかった。翔は本当にセックス出来ない身体になってしまったからだ。



 翔は埼玉県さいたま市(出生時は大宮市)で生まれ育った。


 美紅の家は翔の家の3軒隣で、やや広めの県道に面していた。父親は自営業で、大宮駅から少し離れた所にある小さな工場を経営していた。


 翔と美紅が出会ったきっかけは、いつも美紅の家の隣にあった駄菓子屋で、2人がお菓子を買ったり、「じじ焼き」と呼ばれていた「もんじゃ焼き」を更に薄くしたような食べ物を店内で食べていたからである。2人はその駄菓子屋で仲良くなったのだ。



 ある日、かねてから経営不振だったらしい美紅の父親の経営する会社が倒産し、美紅の一家は夜逃げする事になってしまった。突然の別れだった。


 翔が、美紅の家に行って玄関のチャイムを鳴らしても誰も出ない。中を覗いて見ると、中に誰もいる様子がない。


 いつもであれば、美紅が出かけていても大抵は母親が家にいて、翔を出迎えてくれた。しかしこの日はその母親すらいなかった。

 その後もやはり美紅の家には誰もいない日が続いていた。


 そんな状況の中で、美紅の家が取り壊されてしまったのだ。美紅の家は木造2階建てのいわゆる日本家屋だった。しばらくは更地であったが、程なくして5階建ての鉄筋コンクリートのビルに建て替えられていた。


 このビルに入居して来た人達を見て、翔とその家族、更に周囲の人達の暮らしが一変した。

 なぜかというと、その人達は顔に傷があったり、パンチパーマをかけていたり、小指がなかったり、土佐犬を連れていたりしたからである。


 つまり、暴力団が入居して来たのだ。

 翔はおどろいて父親と母親に事情を聞いた。

「美紅ちゃんの家一体どうなったの?」


「美紅ちゃんのお父さんが経営していた工場が倒産したの。それで夜逃げしたんだって」

「そうだったのか」


 美紅は翔に何も言わずに突然いなくなったのだ。この経験は翔にとってトラウマとなってしまった。


 決して美紅が悪い訳ではないが、結果的に翔はセックス出来ない身体となり、オナニーの見せっこでしか達する事が出来なくなってしまった。


 

 高校時代は男子校だった翔は、女の人と知り合う事もほとんどなかった。更に、愛する人が突然何の前触れもなく行方不明となり、心に深い傷を負っていた。だから恋に発展する事もなかったのだ。


 女っ気のない高校時代に人一倍勉学に励んだ翔は、大学には現役で第一志望の東京の大学に合格した。女性と知り合う機会も多く、それなりに恋もした。


 何度かベッドインのチャンスもあったが、既にセックス出来なくなっていた翔は、特定の女性と深い関係を築く事が出来なかった。


 また、やはりどうしても美紅の事が忘れられず、積極的に好きな女性にアプローチする事も難しかった。


 人生序盤の中学時代に幸福の絶頂に達しながら、その後暗黒の青春時代をおくる事になるとは、翔自身が一番予期していなかった結果だった。


 時はあっという間に流れ、そんな状況で翔は大学を卒業する事となった。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 もし、翔の波乱万丈な人生をもっと知りたいと思いましたら、ぜひ★評価や♡評価とフォローをお願いします。



 次から第2章に入ります。一気に時は流れて第1話では翔が社会人になります。翔は持ち前のポジティブシンキングで、すごい勢いで青春を取り戻していきます。いったいどのようにして? お楽しみに!

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