第2話 願望は加速する

 男のくせに出産したいというもの好きな願望を持つ事と前後して、幼馴染おさななじみ角田美紅つのだみくとのお医者さんごっこで、女性の性感が男よりもずっと強く、続けて何度でも気持ち良くなれる事を知った。


 美紅はすごいオマセさんだった。物心ついた頃からひとりエッチをしていたのだ。

 翔もまねをしてひとりエッチをしてみた。でも、男は一度達するとしばらく感じなくなる。いわゆる「賢者タイム」だ。


「美紅ちゃん、あまり気持ちよくない。ここも大きくならないし」

「そうなの? 私はすぐ何度でも出来るけど。男の子は違うんだ」


 この、女の子が男のように性欲が途切れる事がないのを知り、いいなと思った。

 翔と美紅は、こうしてお互いのオナニーの見せっこをするようになった。


 翔と美紅は中学校も同じ学校に通い、毎日のようにひとりエッチの見せっこをしていた。


「ねぇ美紅ちゃん、いつも君とこういう事するのなぜだと思う?」

「気持ちいいからでしょ」

「それだけじゃないよ。だって美紅ちゃん以外の他の女の子としたいと思わないからさ」

「私も」


「好きなんだ。だから僕の彼女になってよ」

「いいよ。私も翔の事が好き」


 こうして2人は、中学1年生の時に恋人同士になった。



 でもセックスはしないで、やはりオナニーの見せっこばかりしていた。


 とても気持ちよくて楽しい反面、自分よりもはるかに気持ちよさそうな美紅の表情や声、それに一度イってもすぐに次が出来る事、更に何度イっても際限なく繰り返せる事をとても羨ましく感じていた。いつも翔が先にギブアップしてしまうのだ。


「ゴメン美紅。もう今日はこれ以上出来ないよ」

 恋人同士になってから、翔は美紅を呼び捨てで呼ぶようになっていた。


「えーもうダメなの。私まだまだ全然満足出来ない。あと3回はしたいな~」

「無理」

「じゃあ翔、私が一人でしてるとこ見てて」


「いいよ」

 既に数回達しているというのに、なんてタフな娘なんだろう。


 翔は何もする事が出来ず、ただ美紅の艶姿あですがた凝視ぎょうしするしかなかった。


 出産する事を魅力に感じていた事に加えて、底の見えない女の性感が羨ましくて仕方なかったのである。


 決して男が好きという訳ではなく、女である美紅を深く愛していた。翔は自分の性欲が枯渇した状態であるにもかかわらず、ただ目の前で美紅が快楽を得ている姿を見ているだけで幸せを感じていた。


 そんな美紅が愛しくてたまらなかった。


 それだけに、余計女に生まれたかった。そのような願望が日増しに強くなったのだ。


 翔はある日とんでもない事に気づいた。自分と美紅は、恋人同士であるにもかかわらず、セックスは一度もした事がなかった。つまり翔は童貞で、美紅は処女だ。しかもなんとキスもまだ。こんなカップル見た事ない。


「ねぇ美紅、恋人同士がする事してみない?」

「とっくにしてんじゃん」

「いつものひとりエッチの見せっこじゃなくて、チューしたりセックスしたり」


「そだねー」

「何か軽いノリだなあ。僕は美紅、君の事が大好きだからしたいんだけど君はどうなのさ」


「もちろん翔の事大好きだよ」

「じゃあ決まりだね」

 翔は美紅をじっと見つめ、顔を近づける。美紅は目を閉じて唇を突き出し応える。


 美紅の唇はとても柔らかかった。はじめてのキス。翔はとろけそうな甘さを感じた。


 何秒経っただろうか。あまりの胸の苦しさにずっとこのままでいたいと思ったが、さすがに息が続かなくなって一度離す。


 美紅は目をあけてこちらを見つめている。翔は目で「もう一回」とおねだりする。


 2人は再び唇を重ね、ごく自然に舌を絡ませていた。いつもの見せっこのような強烈な快感こそないものの、溶けてしまうような断続的な切なさに襲われ、きつく抱きしめ合う2人。


 お互いに顔は赤く染まっている。

「愛してるよ」

「私も……」


 翔は美紅の服を脱がせにかかった。シャツの袖をつかんでまくり上げる。真っ白なブラジャーに覆われた胸があらわに。


 美紅は思わず胸を手で覆う。恥ずかしいのだ。あれだけエッチな事をした間柄なのに、翔はまだ美紅の裸を見た事がなかった。


 いつも服を着たままひとりエッチの見せっこばかりしていたからだ。

 いつものエッチな美紅ではなかった。その表情はなにか怖がっているように見える。


「翔、私初めてなの。やさしくしてね」


 翔は知識としては知っていた。処女は初体験の時にすごく痛い思いをするという事を。しかし美紅の性に奔放なふるまいから経験豊富だろうというイメージを持っていたのだ。


 たしかに快感を得る事に関して言えば、もうとっくに非処女並みの経験があったに違いなかった。なにせ物心ついた頃から絶頂感をずっと味わってきたのだから。でも、男の物を受け入れた事はなかったのだ。当然怖いだろう。


 ブラをはずそうとしたその時だ。

「明かりを消して。お願い」


 やはり裸を見られるのは恥ずかしいのか。いつもの美紅との違いにとまどう翔。でもそんな美紅をとても愛おしく感じていた。


 翔は背中に手をまわし、ブラのホックをはずし、剝ぎ取った。そのすぐ後に腕を胸の前で交差させ、隠す美紅。こんなに恥ずかしがり屋だったなんて。翔はやさしく美紅の手をとってキスしながら「見せて」とささやき、手をどかせた。


 そして、ついに翔と美紅は一つになった。

 翔は美紅を強く抱きしめた。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 次の第3話は、幸せの絶頂にいた2人に襲い掛かる残酷な運命! いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!

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