第2話 地獄の反省文
訓練が終わって昼食の時間…
「ねぇエッジ、これで何回目よ!前回の反省文30枚でも相当しんどかったのに50枚って…」
赤毛セミロングに、クルクルカールヘアーの少女メリルは、呆れた表情で言った。
「パンケーキパンケーキパンケーキ…」
反省文50枚よりもパンケーキの事で頭いっぱいのエッジはずっと口ずさんでいた。
「もうこれは徹夜ね。」
「エッジはパンケーキの事しか頭にないみたいだね。」
金髪碧眼の美少年フレアは、心配そうな表情を浮かべて言った。
「だってしょうがないじゃないか‼︎俺のパンケーキがぁぁ‼︎」
「んもう‼︎だったらシャキッとしなさいよ‼︎あんたが教官に怒られるような事ばかりするから大好きなパンケーキもお預けされるのよ‼︎この間も今回も本当に‼︎」あまりにもうだうだ言うエッジにメリルはついに喝を入れた。
「…それはわかってますよぅ。俺だってちゃんと反省してるんだよぅ…」
「だったらその反省の気持ちを込めて文章にしたらいいじゃない‼︎」
「えーでもそれで50枚なんて…俺無理だよう…」
「ねぇエッジ。この間も徹夜で反省分終わらせて次の日大変だったじゃないか。僕達は飛行戦もしたり戦車にも乗ったり場合には捨て身で敵に銃で立ち向かう時だってあるんだ。かなり体力だって使うんだよ。だからもう反省文書くような無茶な事はもうしないで欲しいな…。」
「フレア…」
「僕達も手伝うから。エッジにこれ以上無理しないで欲しいんだ。だから一気に終わらせよう。」
「うん…!」
フレアの優しい言葉に、エッジの中の弱気な気持ちが段々となくなってきた。
「あんたがいないとわたし達戦力的に劣っちゃうもの!だからもう終わらせましょう‼︎」
「メリル…」
メリルも喝入れから一転、エッジに気合が入る言葉をかけてやる気を出させた。
ここローデル教会は、外見は普通の教会と変わらない。しかしアーデル政府から軍事施設設置計画が出され、地下や地上にありとあらゆる所に訓練所だったり会議室だったり、食堂や寮が作られた。
俺達は孤児扱いするされつつ、軍人訓練生として育成されている。
他にも貴族の屋敷だったり劇場などの施設に軍事施設が建てられている。
孤児の子ども達が軍人になる為に育てられる…。賛否両論あったが、政府の強行でやむ終えず従うしかなかった。無理が通れば道理も引っ込む。まさにそのようだ。
俺はローデル教会に来る前の記憶がなく、自分がどこで産まれたのか、家族は何処なのか分からない。世間の流れや分からず、浮世離れしていた俺をメリルやフレアは出会った時からずっとそばにいてくれて、サポートしてくれたり、色々と教えてくれた。
恥ずかしい話お金の使い方や公共施設の使い方まで…。そして戦争がなぜ起きたのか、創世記マスティカル神話とか歴史や文化についても詳しく教えてくれた。
しっかり者だけど心配性のメリル、優しくて兄のようなフレア。
可愛い保母さんのアリサ先生、鬼教官だけど面倒見のいい神威教官、沢山の人々の出会いが今の俺を支えてくれている。
俺はここのみんながかけがえのない存在で、大好きだ。戦争という残酷な運命からみんなを守りたい…。いつしかそう思うようになってきた。
昼食後は自由時間となり、外出許可も出る。ショッピングをしたり、喫茶店に行ってお茶したりと唯一ゆったり出来、この時間は人権が尊重されているような感覚にもなる。
とはいえ、いつ敵や魔物が襲ってくるか分からない。用心が必要である事は変わりないのだ。
しかし今日のエッジ達は…
「最近遅刻したりギリギリになるのは自分の気持ちの弱さが招いた事であり…すまないと思っている…こんな感じ?」
「最後の[すまないと思っている]がちょっと上目線じゃない?ここは[申し訳なく感じている]とかそのような文にした方がいいと思うわよ。」
「メリルの言う通りだね。誠意を込めて文章にしたほうが教官もきっと納得してくれるよ。」
「そっか…んーやっぱ文って難しいよー」
「大丈夫。あと20枚で終わるよ!」
「まだ20枚かぁ…。しんどいなぁー」
「前回に比べたら早く進んでるほうよ!まぁこれに懲りてもうしないのが1番だけどね。」
「はい…そうですね…」
自由時間も反省文に費やされていた。メリルやフレアのおかげではかどってはいた。
その時だった…。
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