第一章 記憶喪失の少年エッジ
第1話 夢のパンケーキ
「わーいパンケーキだぁ‼︎おっきーい‼︎よーし…いっただきまーす♪」
少年は目の前の大きなパンケーキをかぶりつこうと大きな口を開けて…
ジリジリジリ…
激しい目覚まし時計が鳴り響いた。
ポチッ…少年は寝ぼけながら目覚まし時計の音を止める。
「…あれ?おれのパンケーキはぁ…?」
さっきまで目の前に大きなパンケーキが確かにあった。しかし目覚まし時計が鳴り響いた後、そこに広がる景色は朝日が窓から少し入った寝室だった。
「あぁ夢か………ってもうこんな時間⁉︎やばい‼︎やばいよー‼︎どうしよー‼︎」
夢に気づき、時計を見ると8時15分。朝食を済ませ、訓練所で朝礼をするのに間に合わない時間だった。
焦りと動揺で少年は茶髪の癖毛をさらに際立たせたまま疾風の如く着替えて訓練所に向かった。
訓練所までは右棟の少年寮から、地下の訓練所までおよそ20分はかかる。しかも15分前集合がこのローデル教会訓練所の規則だから、当然間に合うはずもない。
走りながら脳内で言い訳の仕方を考えて向かった。
「すみませーん‼︎遅くなりましたー‼︎」
走ってギリギリ訓練所に間に合ったが、周りの視線はそれは痛いもので、またかと言う声も聞こえた。
「エッジ…お前またギリギリだぞ…」
黒髪の長髪長身教官神威は、低音な声でいかにも怒っているような口調でゆったり話した。
「3日前の作戦会議の時は完全遅刻、昨日の朝礼もギリギリ、お前ここの規則は何か分かるだろうなぁ…」
ますます神威の声は低くなり、愛刀の幸村を肩に添えてパンパン音を立てて威圧をかけた。
「朝礼、昼礼、作戦会議全てにおいて15分前集合…です。」
「そうだよなぁ…。分かっているのに何故守れない」
顔を近づけて話しかける。その表情は鬼のように怒涛寸前だった。
皆んなからは「鬼教官」と言われる神威。特にルール違反には厳しいのだ。
「す、すみません…。いっ以後…気をつけます…」
エッジは冷や汗を流しながら裏声で怯えながら謝罪をした。
「…反省文50枚書いたら許してやる。明日の朝までに提出な。出来なかったら…パンケーキはしばらく食べられないと思え。」
「え⁉︎えぇぇー‼︎そんなぁ…」
落胆するエッジに神威は更に威圧をかけ、愛刀幸村をエッジの肩にバンッと勢いよく置いた。
「ご諾を言う前に反省しろ!そのだらしなさが敵に仇となる事もあるんだからな…」
「はいぃ…すみません…。」
俯くエッジ。
「それと、しばらく食べられないパンケーキは俺が貰う。」
「えぇぇぇぇぇー‼︎」
(うっこの鬼教官ー‼︎)心の中で叫んだ。
その後の訓練は神威に対する恨みと、パンケーキが無くなる恐怖でいつも以上に張り切って挑んだが、訓練後は地獄の反省文が待っていた。
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