【4】従兄の家で

 従兄の家は子どもが3人。、上から女男男、11歳8歳6歳。


 美奈は上の女の子、咲に懐かれて、勉強を見てやったり一緒にお風呂に入ったりしていた。


「ねえ、お姉ちゃんは哲也おじさんの恋人なの?」

 咲がお風呂上がりに美奈に尋ねたのを聞いていた。

「うーん、どうかな」

「哲也おじさんカッコイイよね?」

 そういうお年頃なのだろう。数ヶ月前にあったとこよりもぐっと背が伸びて、だけど顔立ちはまだ幼くて、そのアンバランスさが成長期を物語っている。


「じゃあさ、恋人じゃなかったとして、美奈ちゃんは哲也おじさんのこと好きなの?」

「咲ちゃん、もう勘弁して……」

「ということは……」

「咲ちゃん」

「ごめんなさい」

 そこまでの会話を、こっそりと盗み聞きして、苦笑いしながらそこを離れた。



 夜中、水を飲みに台所へおりたら、縁側のカーテンを開けて、美奈が座り込んで空を眺めていた。

「美奈」

「まだ寝てなかったの?」

「美奈もだろ?」

 返すと美奈はふふっと笑った。

「何見てたの?」

「星。こんな窓越しでもちゃんと見える」

「田舎だからな」

「家からなら、どうやってこれる?車以外だったら」

「電車の駅降りて、バスだな」

「そっか」

「平日はさすがに無理だな。…寂しいな」

 美奈が俺の腕に寄りかかった。

「ねえ、私がこういう風にしてもダメだって言わないよね?昨日だって…」

 未遂のキスのことを言っている。

「まあ…な、嫌じゃないし」

「私の事、好き?」

 見上げてくる美奈を見下ろす。月明かりにほんのり照らされた頬が白い。

「…そうだな。」

「どっち?」

「うーん、今言わないとダメ?」

「今はなんでダメなの?」

「…夜、男の人にそういうこと言っちゃダメです」

「え?」

「そんな潤んだ目をして、可愛い顔して、そんなふうに言われたら、もし好意を持ってなくても、好きだと言って悪さする輩だっているんだよ?だから、俺は信用して欲しいから今は言わない」

 腕の中にいる美奈は細っこくて頼りない。




「もう寝よう?」

「もう一回だけギュッてして?」

 美奈の目じりが濡れている。俺のシャツの裾を握る手が小さくて、白くて、切なくなった。


 何も言わずに肩を抱き寄せた。

 確かにそこにある命。手を当てた背中からもドキドキという心音が感じられる。


「朝、起きたらさ、そこの海散歩しよ?」

 美奈がポツリと言った。

「いいよ」

 返事して髪を撫でた。

 美奈が少し大きめに息を吸って、吐き出した。腕の中で上下する美奈の肩が細くて、闇に溶けそうだった。

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