第3話 フリープログラム決勝

 僕は8位スタートとなりました。しかし、気持ちの立て直しには成功していました。大福やさんのお陰かもしれません。スタート時に十字を切り、その後手を合わせました。

 結果は五輪史上初の4回転を2回決め、オリンピックレコードを塗り替えました。この時順位は8位から3位まで上がりました。メダル圏内に入りましたが僕の心は一点しか指していませんでした。金メダルしか眼中になかったのです。生意気ですいません。


 2位の選手は日本人の後輩で応援していました。しかしジャンプ後の着地に失敗して減点されてしまいました。この時点で僕の順位は2位となりました。


 最後の選手が登場しました。アメリカ人です。彼は無難な構成で逃げ切りを図ると思っていました。しかし、予想に反して攻めてきました。選手とコ-チ陣の凄い決断だと思いました。さすがに負けを覚悟しました。点数は申し分ない圧倒的1位でした。

 アメリカ人1位、僕は2位、後輩が3位で大会は終わりました。僕はこの結果を受け入れることができました。倒れても立ち上がる勇気を持ったからだと思います。僕は何万回も4回転に挑戦し何万回も倒れ、そして最後に立つことができたのです。


 この後のことは皆さん、ご承知の通りです。1位のアメリカ人がドーピング検査で陽性反応が出て失格となりました。それに伴い順位の繰り上げで僕が1位となりました。

 五輪三連覇を成し遂げました。



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 僕は選手村を引き上げる前にもう一度、あの大福やに行きたいと思い、店に向かいました。しかし、どうしても見つかりません。

「あ! 大きな木と大きな木の間だった!」

捜すと土に埋もれんばかりの小さな石像がありました。

「これ?かな?」


「あんた、なんばしよるとね?」

地元のご年配の方が声を掛けてくれました。

「あ、ここに大福やがあったんですが……ないんです!」


「……そうでしたか。それはそれは。その店は百年に1回、1日だけ店をあけるかあけないかだと言われています……」


「えええ??? 女将さん?がいらっしゃたのですが?」


「はい、その方が勝利の女神とのいいつたえがあります。」


「……女神って、おばあさんなの?………」



 回想録はここで終わっていました。


 彼はフィギュアスケート引退後、映画俳優となり、成功しました。今度の映画で4年前の自分を演じるとのことで今回の不思議な回想録を初めてお話しになられたとのことでした。



「ふ~ん。違うね!持ってるものが!」

今度の日には大福食べて行こうかな。そしていつかは勝利の女神を見つけて同伴させてやる。


「今度の新台入替が勝負だ。大福で勝つ!」


 この懲りない男、パチンコ店に勝利の女神を連れていく気まんまんだった。しかし女神が現れるはずもなく、しかも彼が食べたのはあんまんだった。


「ころんでも立ち上がるんだ!何度でも」

このバカな男を止められるものは何もなかった。あるいみ無敵だったのかも知れない。



                おわり



                




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お題 「ころぶ」「大福」「散歩」 嶋 徹 @t02190219

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