第24話 勧誘 紅崎編②
「懐かしいよなぁ……こうやって、昔はよく学校の帰りとかに話していたよな。本当に懐かしいよ。……なぁ、天河?」
「……そうだな。確かに、懐かしいよ。こうやって、お前と出会って話をするのはな……」
2人は、しばらく睨み合うとそれから少しして天河が立ち上がって、そこから2人は、同じ高さで再度睨み合う。
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「……んで、何の用でここまで来たんだ? 用件だけは聞いてやるよ」
紅崎が、ヘラヘラした顔でその長くて赤い前髪をかき分けながら隣にいる彼女の肩に手を置いて尋ねてくる。――その姿を何も言う事なく、天河は答える。
「……今度、久しぶりにサイゼであの頃のメンバーで集まってご飯を食べるんだが、お前も来てくれないか?」
彼が、そう言うとその周りから甲高くて人を嘲笑っているような笑い声が聞こえてくる。
彼らは、次々に天河へ嘲笑の言葉を投げかけてくる……。
「……はっ! リーダーをご飯に誘うとか……オメェ、バカかよ?」
「……んな事して良いのは、同い年でも向日葵さんだけなんだよ? 湧いてんじゃねぇか? チビィ~!」
彼らは、口々に天河を笑う。――笑い続ける。何度も、何度も……。
――そして、そのうちに流石の天河も心が折れそうになったのか……下を向きだす。とても暗い顔で……まるで、自分の芸を笑われ世界に絶望した道化師のように。彼は、下を向いた。
だが、そんな彼の姿を見ても尚、一瞬たりとも笑わない男が1人だけいた。――その男は、ただ真剣な顔で天河を見つめており、少しするとその男は迫力のある声で告げた。
「……うっせーぞ。今、話をしているのは俺とコイツだ。オメェらは、ちょっと席外してろ」
「……え?」
不良達は、少し驚いた顔でその男の事を見つめていた。――彼は、不良達の真ん中で1人、彼女の肩から手を離して天河の近くまで歩いてくる。――そして、周りでまだ立ち尽くしている不良達にもう一度強い声で告げた。
「だから! とっと、席外せって言ってんだ! 聞こえねぇのか?」
「……わっわかりましたよ」
「……さーせん」
彼らは、気まずそうな顔でとぼとぼとその場から離れて行く。
「すまねぇ向日葵。……お前も少しの間だけ席を外してもらえねぇか?」
そして、後ろにいた自分の彼女へ紅崎は申し訳なさそうに告げる。――彼女は、小さくコクリと頷くとその場からそそくさと離れて行く。その後ろ姿をジーっと見つめていた紅崎は、彼女の姿が見えなくなった所で天河の方を向きなおした。
彼は、低い声で尋ねる。
「……その集まりは、本当に全員来るのか? 狩生とか霞草、白詰なんかは?」
天河は、一瞬下を向いてどう答えるかを考えていたが、それから覚悟した顔で言うのだった。
「……白詰は、大丈夫だ。ただ、狩生と霞草は……正直、現段階じゃ分からない。だから、保証はできない」
その姿を見て、紅崎はジッと天河の目を見て考えていた。――考えに考えて彼は、ゆっくりと口を開く……。
「……そうか」
そして、紅崎は何も言わず自分のバイクを押してその場からいなくなろうとしていた。
彼が、コンビニの敷地から出て行こうとする直前、彼はもう一言だけ告げてヘルメットをかぶる事なくバイクのエンジンをかけた。
「……考えといてやるよ」
そして、大きなマシンの音を上げながら彼はいなくなってしまうのだった……。
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