招集編

第21話 新たな日常と作戦会議

     ~その日の放課後~




 今日も光星高校バスケ部の面々は、練習の為に集まっていた。彼らは、その日練習が始まる前の数分の間、ボールを出して軽い試合のようなものをやっており、体には多すぎず少なすぎない丁度良い位の汗が流れており、彼らの体がベストな具合に温まっている事が伝わってくる。




 そんな、ちょっとした練習前の軽い運動中に部員達は驚くのだった――。







 1年と2年で別れての2対2。彼らは、試合の合間に少しだけ話をしていた。


「おい! 鈴原! 俺達、2年なんだからもうちょい頑張らないとまずいよな……」



「白波~、意外と今年の1年は手強いね~」



 反対側のコートでは、1年の2人が……。




「霞浦……案外、俺達先輩達に勝てそうじゃねぇか?」



「あぁ、このまま順調に行けば勝てそうだぜ! 白波」




 2年生の2人は、当然だがまさか自分達が1年生に負けそうになるとは思っていなかった。それ故に、霞浦と八海の2人だけは既に息切れしていた。




 



 ――すると……。







「……おいおい。おめぇら、それでも上級生か?」




 体育館の外から1人の男の声が聞こえてくる。その男は、バスケットボールを拾うと、そのままドリブルをしながら近づいて来る。





「先輩!……」



 そのヘアバンドを見て、2年生チームにいた白波は、さっきまでの困った顔から一変、白詰の姿を見てすぐに立ち直った。


 白詰は、弾ませていたボールをキャッチして、2年生達に声をかける。



「ったく、だらしねぇ後輩達だぜ。……おい! 白波、代われ! 俺が代わりに試合してやる」




「え? でも、先輩……」



 白波が言いかけた所で白詰が話し出す。


「任せとけ。俺が来りゃあ、もう平気だぜ」






 こうして、1年対2年(白詰)の試合が再開された。





 現在の点差は、2年チーム32点VS1年チーム46点。14点もの点差をつけられていた。そして、本格的に練習が始まるまで後3分。……時間もあまりないのだった。




「ボールは、鈴原。お前が運べ」



「え? でも俺、PGポイントガードとかやった事ないですよ!」



「安心しろ。とりあえず、ボールは全部俺に回しとけ」


 そう言うと、白詰は一直線に走り去っていった。――その後ろ姿を見ていた鈴原は、困った顔をしながらもとりあえず、コートの半分まで来た所で、ボールを白詰へパスする。




 鈴原は、白詰がどんな選手なのか知らなかった。というより、ここにいる下級生達は皆、白詰を含めていなくなった4人の選手達の事を知らない。だから、鈴原も白波も白詰の事を心配そうに見ていたし、1年生2人も少し油断していた。……自分達の方が普段練習している。だから、平気だと。




 しかし……。





「おい。1年、DFディフェンスあめぇぞ。……守る時は、必ず腰を落とすって習わなかったか?」




 その刹那、白詰の超高速のドリブルが炸裂し、前にいたはずの1年2人は、気づかないうちに追い抜かれてしまう。



「え?」



 振り返ると、既に彼はダンクシュートを放っており、1年生達はその光景にキョトンとしていた。


 白詰は、言った。



「……うしっ! まぁ、初日はこんなもんか。さぁ、お前ら! 練習までの残りの時間、どんどん来いや!」







 ――こうして、白詰の活躍によって上級生チームはなんとか逆転する事ができ、そのまま練習へと進んで行くのだった。












       *



 ――その日の夜。



 天河、花車、白詰の3人は家に帰ってからそれぞれライン通話を開くのだった。




「想太。……戻って来てくれてありがとう」


 花車の嬉しそうな声が、画面越しに聞こえてくる。




「……あぁ、すまなかったな。その……色々と……」








  少しの間の沈黙が、彼らに訪れる。――少しして、天河が言った。



「さて、まぁ……喜ぶのは後にして、とりあえず今日の本題に入りたいんだが……想太、今朝言ってたやつを花車コイツにも説明してやってくれないか?」



「分かった……」


 白詰は今朝、天河に説明した「サイゼパーティー」の事について説明するのだった。











 花車は、言った。


「なるほど。うん……良いんじゃないか?」



「だろ! 名案だろ? やっぱサイゼは、最高だぜ……!」



「けど、それは……何人集められるかだな……」


 花車の疑問と不安の籠った声が、画面越しから響いてくる。――それに対して天河が、言った。


「……確かに、そうだな。心配なのはそこだ……。残ったメンバーは3人。しかし、3人に同時に当たるのはかなり大変だ。かといってまた一人一人当たるのも、面倒だしな……」


 すると今度は、白詰が喋り出す。



「だったらよ、今ここにいるのも丁度3人なわけだし、1人1人で別れて相談しに行きゃあ良いんじゃねぇか? 期限とか設けてさ」



 花車が言う。


「期限っていうと……だいたいどんくらいまで行けそうかな……?」



 すると、画面越しから筋トレを終えて息を荒くしている天河の声が聞こえてくる。


「……うむ。だいたい、長くて3日が限度といった所だな。それ以上は、時間をかけたくない……」






 何かを飲み終えた花車が喋り出す。


「よしっ! じゃあ、3日で決定だ。……次に、誰が誰の所へ行くかだな。――霞草には、前々から俺が当たってるし、引き続き俺がやるって事で良いか?」



 2人が、声を揃えて返事をする。


「「了解」」



「想太と被ったな」


「被りやがったぞ」


 そんな雑談の後、2人は話合う。



「それじゃあ、俺達は……紅崎あかざき狩生かりう。不登校組のどちらかというわけか……」



 すると、天河が真剣な声で白詰達に告げた。


「紅崎には、俺が当たる……」




「平気か?」


 白詰の心配した声が聞こえてくる。――天河は続けた。



「あぁ、アイツとは久しぶりに話したい事が色々あるしな……」





 すると、少しして画面の向こうからボールを強く掴んだ音が聞えて来た後、白詰が言った。




「分かった。じゃあ、それで行こう。……それじゃあ、明日から始めようぜ!」






 こうして、3人によるサイゼパーティー作戦の大まかな段取りが決められていったのだった……。

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