第20話 新たな誓いを胸に……。

 ――早朝。普段通り、天河は近くをランニングしていた。彼が、コンビニの辺りを横切ると、ちょうど店の近くから声をかけられる。




「よぉ! おはよう。さっ、走ろうぜ」


 天河が、そっちを振り向くとそこには運動着を着て、少しだけ汗を流していた想太の姿が、あった。





 彼は、軽く手を振るとすぐに天河の隣までやって来て、並んで走り出した。








「……突然、どうしたんだ?」




 天河が、彼の方をチラッとだけ見て聞くと想太は、前だけを向きながら言うのだった。




「……何でも良いだろ。んな事よりも、俺達は強くならなきゃいけねぇ。……だろ?」



 想太は、そう言うと足のスピードを上げた。






 ――2人は、その日かけっこをするようなスピードで朝の町を駆け抜けていった。












 帰り道、再び彼らはコンビニの前でジュースを買い飲みしながら話し合う。





「それでよぉ、葵。これからどうすんだ? まだ後3人残ってるだろ?」



「そうだな……正直、まだ全然何も決まってない。だが、インターハイは刻一刻と近づいて来ている……。1回戦、扇野原との戦いで勝つには……なんとしても5人を揃える事が最低条件。……やはり、1人1人に当たってみるしか……」



「けどよぉ、1人1人っていうけど、それだと仲間集めだけでかなり時間かかっちまうだろ? いやさぁ、霞草みたいに学校にちゃんと来てるなら良いよ。けど……後の2人は、そうはいかねぇだろ?」




 すると、天河はレモンティーの紙パックをたたんで低い声で言うのだった。





「”紅崎”《あかざき》と狩生かりうか……」



 彼は、ボーっと朝の美しい青い空を見上げるだけだった。






 天河が、何も言わなくなるとそれを見ていた白詰は「おーい」と言って手を振る。しばらくして、すまないと言って天河の意識が戻って来ると、白詰は続けた。





「……でだ。1人1人時間割いてやるよりもよぉ、もう少しコンパクトにできないかと悩んだ俺は、を思い付いたんだよ!」



「名案だと?」





「あぁ、1人1人やってる暇がないなら、じゃあ全員1か所に集めてそこで一度話しゃあ良いんじゃないかと思ったんだよ。……題して、だ」






「サイゼパーティーだと?」




「そう。サイゼパーティー。……サイゼは良いぞ~。飯はうめぇ。……ドリンクは飲み放題。……おまけに安い! それに店の雰囲気もわりかし好きだ! サイゼで集まると言えば、どんな学生だって食いつくぜ? 間違いねぇ。……打ち上げの達人と呼ばれているこの俺が言うんだ。……奴らは、サイゼの色香に惑わされて虫のように群がって来るぜ?」





「虫のようには来てほしくないな……」



 天河は、少し困った顔を浮かべつつも、コクリと返事をして言うのだった。




「まぁ、分かったよ。そんなに言うんだったら、その案を今日の夜の花車との通話の時に出そう」







 すると、白詰はにっこり笑顔を浮かべた。



「おう!」






















        ~その日の夜~




 部活を終えた白詰は、とある場所に向かっていた。



「やべぇ! 急がねぇと、待ち合わせ時間を過ぎる!」



 信号が青に切り替わると同時に彼は、ロケットスタートで横断歩道を渡り切る。――そして、角を曲がって正面、大きい公園が見えてくる。







「うしっ! ついた! ギリギリ間に合ったぞ!」


 白詰が、息を切らしながらそう言うと、後ろから怒鳴り声がするのだった。



「遅い! 1分遅刻だ!」



 彼が、振り返るとそこには、運動着とボールを持ったの姿があった。




「わりぃ! ちょっと部活が長引いちまってな」



 彼が、そう言うと航はボールを弾ませながら言うのだった。




「だったら準備運動は必要なさそうだね? それに、その息を切らしてる感じから、体も温まってるみたいだし……すぐに始めようか」





「おう!」





 2人は、そう言うと公園の奥へと歩いて行く。――少しすると、彼らの前にはバスケットゴールが3つ並んだストリートコートが見えだした。










        *


 ――あの夜の後、白詰は航と別れる直前に言ったのだ。




「……おい! テメェ、それともう1つ言いたい事がある」




「何? 言いたい事って……」






「…………その、また……一緒に練習しないか? 今度は、おっ、俺が教わる側で……」








「フフフ……」





「何がおかしいんだ?」




「いや、別に……何でもないさ。……ハハハ、良いよ。練習見てやるよ。……その代わり、途中でやっぱ辞めたは無しだぞ?」




「わっ、わーってらい!」








       *



 ――2人は、バスケットボールを持ってコートの真ん中に立つとそのまま真剣に向き合ってから走り出した。










「じゃあ、始めるか!」

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