第9話 決意
「俺は、ずっと1人だったんだ! 助けてくれる人なんて誰もいなかったし、どれだけ頑張っても誰も評価なんてしてくれなかった! 待っていても仲間は戻ってこない。それどころか、時が前に進むたびに俺だけが1人、あの頃へ取り残されたような……時の流れに逆らっているような、人がどんどん離れていった。もう、あの頃のようにはできないんだ……何度も絶望したさ。それでも……それでも、俺は……顔だけは前を向いていようと思ったんだ! 例え、誰1人戻って来れなかったとしても自分だけは、いつまでも前を向いていようと……だから、俺は……1人で頑張るしかないんだ。俺しか、残ってないんだからなぁ!」
天河は後半、涙を目に浮かべて息を切らしながら必死そうに花車に自分の気持ちをぶつけまくった。
――弱いキャプテン……か。
花車は、震える彼の姿を見てなんだか申し訳なさが込み上げてきて、気づくと天河から目線を逸らしていた。
・
・
・
・
――2人の間の空間は、天河のぜーはーぜーはーという息切れだけが
聞こえてくる沈黙に染まった。
お互いに顔を見たりはしない。ただ、気まずさのようなものも覚えながら、2人は沈黙のひと時を過ごし続けた。
――そして、しばらくしてようやく息切れしなくなった天河が喋り出して、この沈黙は終わる。
「……もう、無理なんだよ。どうせ、アイツらを今から呼び戻そうとしたって誰も来やしない。こんな底辺部活に、今更来ようなんて思いやしないさ……」
――花車の思考が止まる。副部長の彼にも天河の言いたい事、思っている事は痛い程よく分かっていた。分かっていたからこそ、天河の言っている事を否定したかった。否、そうせざるを得なかった。
何故なら、天河にとってどうしようもない底辺部活という印象がついていたとしても彼にとっては、それでも自分を変えるきっかけを作ってくれた1つの大切な場所でもあったからだ。
それを実感した時、花車は気づくと口を大きく開いて、天河の事を真っ直ぐ見ていた。
「……やる前から諦めないでくれよ。
「花車……」
その時、花車は心で感じ取った。天河の中に、何か物凄い闘志が戻って来つつあるという事を……。
――彼は、続けた。
「……一緒に、
・
・
・
・
・
・
「……あぁ」
天河は、花車の手をぎゅっと握った。2人は、夜のバスケットコートの中でお互い強く握手をして決意した。
――絶対に、もう一度……あの5人でバスケットをするんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます