第4話 トーナメント
――シューズがフロアに擦れる音が、鳴っている。……その後に続いて、ネットをくぐるボールの音がした。
だけどそれは、自分達が撃ったボールじゃない。自分達とは、別のユニフォームを着た選手たちが、次々とシュートを決めていくのだ。
――ヤベェ!
そう思って、ゴールを守ろうと
――彼が、必死に自分達のゴールを守っていると、ふとすぐ隣に他の仲間の4人がただ立っている事に気づいた。
「おい! どうしたんだよお前ら。
天河が彼らにそう言うと、そのうちの1人が天河の方を向いて言うのだった。
「悪い。俺、もうバスケできないや……」
「え……?」
――続けて他の3人も次々と振り返って言うのだった。
「……わりぃが、ここまでだわ。もうやってらんねぇよ」
「すまんが、こんな事に時間を浪費してる暇はないんだ」
「……ちょっと気分が乗らねぇ。わりぃな。また明日な……」
「おい! 皆! どこ行っちまうんだよ! ……おい! 皆ァ!」
そして、それと同時に試合終了のブザーが鳴る。……天河が、タイマーの方を振り返ると、そこには見覚えのある数字が並んでいた。
35対130
点差は、トリプルスコア――だいたい3倍位開いていた。
――そして気づくと天河たった一人だけが、コートの端の自分達のベンチがあった所で、泣き叫んでいた。
――その声は、体育館中に響き渡り、そして……。
「……コラ起きろ。天河」
彼の頭の上に丸めた教科書がぶつかり、それと共に天河の体がビクッと電気ショックを受けた時の処刑人のように動き出した。
「……んいてて……」
目覚めた天河が、自分の頭を優しく撫でながら目を擦る。
「あっ……」
その時になって、天河はようやく気付くのだった。――ここが学校で、既に6時間目まで経っているという事を……。
「……制服」
彼は、寝ぐせでボサボサになった髪の毛をポリポリかきながら、徐々に徐々に自分の意識を起こしていった。
そんな時、彼の後ろから聞き覚えのある女性の声がした。
「……今は授業中だぞ。天河。夢は、家のベッドで見ろ」
「ういーす……」
天河は目を擦りながらも、その後の残り10分程度の授業を受けるのだった。
*
最後の授業終了のチャイムが鳴り、生徒達がそれまで抑えていたものを全て吐き出すかのように一斉に喋り出す。
「……天河、ちょっと来い!」
そんな騒がしい教室の雰囲気の中で、前にいる先生がまたしても彼に声をかける。――天河が振り向くと、その女教師は来い来いと手招きをしてくる。
……天河は、先生から「渡したいものがある」と言われて、そのまま職員室へ向かった。
彼が、その部屋の中に入ると女教師はちょっと待ってろと言って、いろんな所の引き出しを開けて何かを探し出した。
「……トーナメント表が来たんですか?
「あっ、あぁ。……まぁ、そうだな」
天河がそう聞くと、彼女はバッグの中に手を突っ込みながらあちこちに紙を散らかしまくって言うのだった。
――しばらくして、ようやく小田牧は1つのファイルを見つける。
「……これを他の部員達に渡して置いてくれ」
透明なファイルの中に、青い紙が数枚入っている。
天河は「ありがとうございます」と一言言った後、その紙をチラッとだけ見る。
「え……?」
――しばらくして、彼は気づいた。
「先生、これって……」
彼は、そのトーナメント表の端に書かれた自分達の学校とその隣に書かれた学校の名前を見て驚いた。
「……」
小田牧は、しばらく黙った後にゆっくりとその口を開いた。
「……インターハイ初戦の対戦相手は、全国大会常連校――東京都No.1の
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