果汁の入った水筒 3

 どうやら俺は部屋に閉じ込められて外にゴブリンがいるらしい。身じろぎすらできないがゴブリンのギャギャという不愉快な声が壁越しに聞こえる。

 

 どれくらいそうしたのだろう?永いような早いような不思議な感覚だ。そして暗闇は突如として終わりを迎えた。ゴブリンが戦闘をいや虐殺されてるからだ。50匹はいたゴブリンがものの数十秒で全滅だ。俺達スターガーディアンでも早すぎる。

 

 上の方から光が差し込む。どうやら宝箱の中にいたらしい。目が見えないのではなく真っ暗で何見えなかったようだ。

 

「アークの装備があった!!」

 

 ユーリが開けてくれたらしい。装備も無事というか俺、軽鎧の中に置かれてるよな?

 

「水筒?なんでこんなところに?アークの持ち物じゃないね」

 

 喋れないし動けないけど水筒俺だな。マジかよ~。

 

 ユーリは装備を丁寧に回収して俺のアイテムポーチに仕舞う。そして水筒の俺だけになった。

 

「くんくん、くんくん、デヘヘこの水筒アークの匂いがする。絶対にアークだ」

 

 ちょ待てよ。仲間に見つけられて嬉しいが判別方法おかしくね?なんだよ俺の匂いのする水筒って!!

 

「これは絶対にアークを元に戻さないと!待っててアークすぐに戻すからね」

 

 こういう変化系のトラップは解除する確実な方法がある。ダンジョン攻略して迷宮核を破壊すればいい。たまに変化してて他のハンターが攻略して姿が元に戻る奴もいるほどだ。

 

 ちやほやされてたロリっ子がいきなりおっさんに戻って大変な事になった話しが有名だな。

 

 ユーリが俺を優しく振るとチャポンチャポンと何か入ってる。

 

「アークの中身?なんかめっちゃ気になるよー」

 

 俺の中?マジで!どうなってる?俺も気になる!めっちゃ気になる!!

 

 キュキュキュとユーリが俺の蓋を開ける。うおぉぉ!?なんか俺分裂してる!?これ大丈夫か!?

 

「すんすん、あれ?中はアークじゃないのか」

 

 ユーリなんで匂いで俺か別物か見分けてるの?そんなに臭い?

 

「ゴク、甘い!!苺果汁と練乳を混ぜた苺練乳が入ってる!!甘いけどほのかな苺の酸味がアクセントになってアークみたいな味だぁ」

 

 苺練乳な飲み物って激甘だよな?それよりも俺みたいってなに?俺の評価どうなってるの?不安なんだけど!?ちょっとユーリ教えて!?蓋閉めてくれてありがとう。落ち着くわー。

 

「おっ次開いたかぁ、アークに酷い事しやがってブッ殺す!おっとアークはここね♪」

 

 スケルトンがワラワラとって、ユーリは俺をためらう事なく、ノースリーブと下着の更に内側1番ユーリに近いところに俺を収納する。

 

 ユーリが突撃してスケルトンの頭蓋骨を複数体纏めて回し蹴りで粉々にする。余波で上半身も粉々になり、命中してないスケルトンまで数体の頭蓋骨が破壊され消滅する。

 

 なんで俺谷間に固定されてるの!?それよりもユーリ強すぎない!?ちょっと怖いんですけど!?右ストレートで当たってないスケルトンの頭蓋骨まで一直線に砕けた!?そんなの見たことないですけど?

 

「アークの苦しみを思い知れ!!」

 

 蹂躙劇、虐殺は数十秒で終わりとなる。

 

 えっマジ?なんで?俺と次元が違う強さだよね?そんなの知らないよ?

 

「ふぅ~楽勝っとアークに傷とかないよね?うん大丈夫、中身は、一口はバルバの分、残りを三等分したのは飲んでいいね。アークいただきます♪」

 

 なんかユーリに襲われてる気がする!!あっやめて蓋開けると変な感じがうぇぇ!?俺が二人になってるから!!

 

「ゴクゴク、プハー美味しーアークの味たまらん」

 

 中身は俺じゃないからな!!

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 その頃バルバ達はアークの悲劇にまだ気が付いていない。

 

「ユーリいいなー私でもアークと組めば上手くやるのに、インフェルノバースト!」

 

 アンジェにより次区画が開いた瞬間凄まじい爆発が起こり魔物は種類を確認する間もなく消滅する。戦闘時間ほぼゼロだ。

 

「バルバ、盾くらい構えなさい」

 

 モニカが指摘する。

 

「意味あるか?」

 

 バルバの発言だ。アークが入れば驚愕するだろう。

 

「はぁこれだから、女心分かってませんねぇ」

 

 前に出たら危ねーじゃんみたいな顔になるバルバ。言うと更に論破されるから黙ったようだ。

 

「分かってますよね?」

 

 モニカは水鉄砲をアイテムポーチから取り出して言う。

 

 中身は蛍光ライトイエローの謎の液体だ。前回の魔物はこの水鉄砲から発射された謎の液体に触れたら消滅した。

 

 バルバはそれ人間に向けないで危ないという顔になる。もちろん返事は決まってる。

 

「分かってる。バレないように何も喋らない」

 

「悟られても許しませんよ」

 

 アンジェが最近表情で意思疎通するバルバに更に釘を刺す。ピースした指先には蒼炎とプラズマが小さいながら発生している。

 

 それも危ない洒落にならないから!!そんな顔になるちょっと二人から離れてるのは当然だ。

 

「分かってるから、ヘマしないから」

 

「ええ、信じてますよ」

 

「アークさんの気持ち分かれば教えて下さいよ」

 

「・・・」

 

 バルバは完全な無表情ポーカーフェイスで乗り切った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る