果汁の入った水筒 2

 野営する事10日、俺達スターガーディアンは迷宮『仲間の絆』にたどり着いた。

 

 スタンダートな洞窟スタイルで魔物はゴブリン、リザードマン、オーク、狼男、スケルトンなどの人形の魔物だ。

 

 この迷宮は入口で二手に分かれる。交互にタイミング良く切替えないと進めないスイッチ式トラップがある。そして進むと戻れなくなる。正解は片方のみだ。

 

 ここまでは過去のハンターも成功している。魔物は強くないから当然だ。戻るのも交互にタイミング良く切り替えれば出られる。

 

 問題は合流は入り口の分かれるところでしか出来ない事だ。しかしラスボス部屋の鍵は全員で到着だ。

 

 明らかに矛盾している。

 

「どうやって合流する?いっそ無理やりぶち抜くか?」

 

 迷宮が魔物を生み出す仕組みとかなぜ攻略できるのかとそんなことは学者が考えることだ。ハンターは迷宮からハントするそれが仕事だ。

 

「ふーむ、迷宮をぶち抜くのは危険ですよ凶悪な魔物を生み出すリスクがありますから、合流方法は情報に無かったですからここで考えるしかないでしょうか」

 

 モニカも攻略方法そのものは分からないらしい。

 

「ならまずは普通に攻略しながら探しましょう」

 

 ユーリの提案は理に適っている。考えるよりもまず調べるべきだ。

 

 ならなるべく戦力は均等にするべきか。

 

「そうだな。まず俺とバルバは別れよう。それぞれ前衛として仲間を守ろう。俺は防御力が低いから回避の上手いユーリと行こう。バルバは逆に火力不足だからメイン火力のアンジェ、攻撃が後ろに行きにくいのはバルバ側だからモニカもバルバとの方が安全だろう。少しユーリに負担かけるがいいか?」

 

「「「異議なし」」」「・・・」

 

 バルバは盾を構えてやる気らしい。

 

 二股の分かれ道は左が行き止まり、右が正解だ。

 

「そうだな、まず俺達が左、バルバ達が右に行こう。なにも分からなければ戻って左右入れ替わってみよう」

 

「なるほど、名案です。それで行きましょうさすがリーダー」

 

 モニカがヨイショしてくれるがお飾りのリーダーだから不満だったら君達遠慮なく変えるだろ?

 

 仲間の絆のトラップはまず左の通路のスイッチを押す。すると、右の通路が一区画進める。俺達は待機だ。

 

 右の通路でスイッチを押すと左の通路のが一区画進める。同じように、左の通路の奥のスイッチを押すと右の通路の一区画進めて、合流ポイントが閉まる。これで完全に分断される。これを交互に繰り返して進むだけだ。

 

 ただし進むと魔物がいる。スイッチを押すぶんには問題ないが相手が全滅させてないと誰か一人がどこかに飛ばされモンスターハウスに招待される。

 

 確実に魔物を全滅させられる時間をおいて進める区画のスイッチを押さねばならないので、仲間の絆が試される。分断されてもモンスターハウスに送られても助ける絆そんなネーミングだ。

 

「そろそろ大丈夫かな?」

 

「ここの魔物は弱いですからね。厄介なのはラスボス部屋の開け方だけですよ」

 

 ユーリの言うとおり置くまで進めるハンターは多い。ラスボス部屋に入れないだけなんだ。

 

「よしそろそろ押すか」

 

 向こうの区画が開いて戦闘してるだろう。確実な方法は全滅させてからスイッチを押すだけなのだが、戦闘中にたまたまスイッチが押されると両方が戦闘になる。様子が分からないからそのズレが奥で仲間の分断になるわけだ。なら途中で待つのも戦略だ。これで分断リスクはほぼゼロだ。

 

 しばらくして後ろが閉まり前が開く。スケルトンがワラワラといる。俺は薙刀でスケルトンの急所頭蓋骨を真っ二つにして中の魔石を破壊する。これでスケルトンは消滅する。動きの遅いスケルトンを次々に消滅させる。ユーリは俺の後方でスケルトン牽制して支援してくれている。

 

 アーティファクトが無ければハンターの収入は少ない。 

 

 この仲間の絆はアーティファクトが出にくいからハンター協会僅かばかりの間引き報酬が出るだけだ。新人越えたくらいなら安いが小遣い稼ぎには十分な仕事、もしかしたらアーティファクトがあるかも、そんな難易度だから俺たちが負ける事は無いだろう。

 

 なんの問題なく殲滅と休憩を挟み進んで最奥の手前まで来た。

 

 ここに来ての小人それも親指サイズだ。明らかに雑魚で魔法なら即終了だろう。

 

「めんどくせー!ひたすらめんどくせー!」

 

「気色悪い!!死ね!死ね!」

 

 魔法が使えない俺達は地道にやるしかない人でも2人となれば時間との戦いだ。数だけは多いからめんどすぎる。ゴキブリかよ。

 

「死体が残らないのが救いですね」

 

「ああ、魔物は消滅するからな。こんな奴らの死体だらけとか最悪過ぎるぞ」

 

「見た目もですけど埋まった息があるやつ探すのは手間どころじゃないですよ」

 

「そりゃそうだな」

 

 それでも難なく殲滅して、直に次が開くギリギリセーフかと思いきや、俺の足元に魔法陣が現れる。

 

「あーまだいた。しまった!アークが飛ばされちゃ」

 

 そんなユーリの声を聞いて俺はモンスターハウスにご案内された。そして身体の感覚がおかしい。まるで手足も顔も無いようだ。なんだ?どうした?どうなってる?目も見えないが、音は聞けるよく分からない事になったのだった。

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