果汁の入った水筒
エイル
果汁の入った水筒 1
花形職業といえばハンターだ。
魔物をハントして人々を守り、アーティストファクトをハントして人々の生活を豊かにする。
もちろん腕っぷしの強さは絶対で、他にも知識や技能が求められる。強さだけでは早死する。
そんなハンターでも飛ぶ鳥を落とす勢いで強くなって、知名度をあげてるのが俺達のスターガーディアンだ。
空に煌めく星々の様に輝き、人々を守る番人になるという目標で半ば達成してる。残る目標はあと一つだ。
おっとメンバーを紹介しよう。
斥候で常にノースリーブ、へそ出し短パンのユーリ、ポニーテールの女の子だ。
タンクで無口な背中で語る男、バルバ。大盾と片手剣を愛用してる。
錬金術師で薬品と毒物のエキスパートのモニカはドレスアーマーがお気に入りだ。
魔法使いでパーティのメイン火力なアンジェ。特注のビキニローブと魔法使いハットにマントという変わった格好の女の子だ。
最後に俺、リーダーで薙刀使いのアークだ。装備は普通の軽鎧だ。剣?誰が好き好んで魔物と超接近戦なんかするかよ。怪我したら痛いだろ。毒を受けるかもしれないし回復薬もただじゃない。
いくら見たより多く入る魔法の袋、アイテムポーチを持ってるといえ数に限りもある。
しかも剣士と戦えば薙刀が圧倒的有利なんだ。なら薙刀使うだろ?
「ねぇ、アーク次の迷宮は『仲間の絆』にしない?」
ランチをメンバー全員でしていると、錬金術師のモニカが提案する。唯一無二の目線に困らない女の子の仲間だ。フリフリの鎧くらい見慣れた。
迷宮とは人類の敵で迷宮核があり魔物を生み出し迷宮を守らせる。
そして人を呼び込む餌としてアーティファクトを作る。迷宮は人を含めてあらゆる生き物を喰い深くなる。魔物は増えすぎると迷宮から溢れ出てスタンピードとなり災害を引き起こす。
ハンターとは迷宮を狩る者だ。もちろん迷宮核もトラップや魔物で迷宮を守る。攻略して迷宮核を破壊する迷宮殺しのはハンターにとって最高の名誉だ。深い迷宮ほど殺しにくいが若い迷宮でも死ねば魔物の驚異が減る。
それは人々にとっても動植物にとっても良いことだ。
「なんで『仲間の絆』なんだよ?あそこはトラップのせいで攻略こそされてないが間引きは十分だろ?」
「ラスボス部屋の突破方法が分かったらしいの。これでラスボスを倒せば迷宮殺し達成よ」
モニカは後方支援や情報収集が得意だ。戦場では毒物使う危険人物になるけどな。俺達の最後の目標は迷宮殺しだ。
「へぇ~、それで突破条件はなに?」
胸と腰くらいしか布面積がないユーリが質問する。なんで人前で半裸なの?逆に俺が困るんだが?
「ちょっとキツイけど、パーティメンバーがその場に揃ってる事よ」
「あそこは別れて進まないと奥に行けないし、合流出来ないはずで、しかもパーティを分断するトラップが多いでしょ?」
魔法の使いのアンジェが仲間の絆と命名された迷宮の常識を語る。
「そうなんだけど、まぐれで揃ったらしい。慢心創痍でボスからは撤退したって話ね。ハンター協会の公式情報よ」
公式情報は相応の金を払えば教えてもらえる確度の高い情報だ。何も新しい情報が無くても金は取られるが稼げるハンターには端金だ。
情報収集をケチってると死ぬ。
「マジか昨日は無かったよな?」
公式情報くらいはそれぞれが確認する。確度の低いやつやら噂やらはモニカが担当してるがそれだけに頼るわけじゃない。
「今朝の新情報よ。回復薬と魔力薬、ありとあらゆる毒物の準備は出来てる」
スターガーディアンは金持ちだからアイテムポーチは全員分用意してある。そして食糧や消耗品は自己管理だ。それははぐれても自分の物資を確保するためだ。
稼ぎはきっちり割り勘している。
「常にアイテムポーチは満タンだ」
「魔力薬は溜め込んでるわ」
「補充は直ぐしないとオチオチ眠れないでしょ?」
「・・・・・・・・」
俺、魔法使いでビキニローブのアンジェ、半裸のユーリ、バルバは声を出さない。だって無口な背中で語る男だから。
「「「「・・・頷くくらいしろよ!」」」」
バルバはなぜ伝わらないみたいな顔をする。逆になぜ伝わると思った?
「そうそう、そのくらいは反応しろよ」
バルバはしゃーねぇなと肩をすくめる。そうじゃねぇ俺は悪くない。
「バルバすぐ行けるの?」
ユーリが聞くと前歯をキラーンとさせてサムズアップする。俺と反応違い過ぎだろ?ん?目線が太モモなんだが?
ゴキッ、ガガッ、ヒュキュン
ユーリの制裁が発動する。
「ちょっと短パンからはみ出たパンツ見てるとかサイテー!ヘンタイ!」
なら短パンやめろよ!!死にたくないから言わないけど。
パーティ内の強さ?もちろん女の子が上で男は足手まといにならないので精一杯だ。もちろん立場も弱い。
俺は何せお飾りのリーダーだからな。バルバは頑丈なのが取り柄だし大丈夫だろ。
「準備も問題なし、先を越される前に俺達でやってやるか!」
「「「異議なし」」」「・・・」
「うし、それじゃ迷宮殺しに出発」
「「「えいえいおー!」」」「・・・」
こうして街での休暇から戦場へと飛び出したのだ。
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